ジャガー・ルクルト レベルソ

ジャガー・ルクルトといえば、誰もがすぐにレベルソを思い浮かべるのではないでしょうか。このスクエア腕時計は、スイスのル・サンティエに拠点を置くジャガー・ルクルトが、早くも1930年代初頭にポロプレーヤーのニーズに合わせて開発したモデルです。ポロ競技中に時計のガラスが割れることが多かったため、ジャガー・ルクルトはディスプレイを保護する目的で、このリバーシブルケースをデザインしました。時を経て、この時計はステータスシンボル、ならびにアイコンとして進化し、このジャガー・ルクルトの時計の愛用者には国王や俳優も含まれるようになりました。

当時はシンプルな設計で仕上げられた腕時計ですが、今ではトゥールビヨンやミニッツリピーターなどのコンプリケーションを搭載したモデルも用意されています。シリーズの内の注目モデルは、世界初の4つの文字盤を持つ腕時計、レベルソ ハイブリス・メカニカ キャリバー185 クアドリプティックです。この時計は、合計11のコンプリケーションを搭載し、ホワイトゴールド製で、その価格は135万ユーロ (約1億7500万円) となっています。

現行のコレクションはクラシック、ワン、トリビュートのラインに分かれており、特に「ワン」はレディース向けの豊富なセレクションを揃えています。素材は主にステンレススチールやレッドゴールド、ホワイトゴールドを使用しています。また、レベルソ トリビュート デュオフェス トゥールビヨンなどの一部のモデルには、プラチナが採用されています。

2021年、レベルソは誕生から90周年を迎えました。ジャガー・ルクルトは、この機会に2つの限定特別モデル、レベルソ トリビュート デュオ ファリアーノとレベルソ トリビュート ノナンティエムを発表しました。後者は、星空をあしらったムーンフェイズ表示を裏面に搭載しています。

最も安価なレベルソの時計は、ステンレススチール製で、クォーツムーブメントを搭載しています。そのようなモデルの1つであるレベルソ レディ Ref.140.025.8は、状態の良い中古品で25万円前後で入手できます。レベルソ クラシック Ref.250.8.86は、手巻きキャリバーを搭載しています。この時計もステンレススチール製で、未使用品は約45万円で購入できます。

貴金属が使用されていたり、コンプリケーションを搭載したりするモデルは、格段に高価になります。レベルソ トリビュート カレンダーのRef.Q3912420は、レッドゴールド製で、ムーンフェイズ表示が搭載されています。このモデルの価格は約295万円です。高価格帯では、トゥールビヨン やミニッツリピーターなどを搭載したモデルもあります。ジャイロトゥールビヨン2 Ref.Q2336420は、75本限定のプラチナ製で、価格は2500万円以上になります。

1930年代の初代モデルに最も近いのが、グランド レベルソ ウルトラスリム 1931です。2011年、ジャガー・ルクルトはレベルソ誕生80周年を記念して、このレトロウォッチを発表しました。レベルソはもともとポロ競技用のモデルでしたが、現在は完璧なドレスウォッチとして活躍しています。7mmという薄さを実現したのは、秒表示のない手巻き式の自社製キャリバー822のおかげです。スリムなインデックスと秒針のない文字盤は、特にすっきりとした印象を与えます。この2011年モデルには、ステンレススチール製と18Kレッドゴールド製があります。その特徴は、リバーシブルケースの両端にある3本の水平方向の溝です。この溝によって時計はとてもエレガントな印象を持ち、アールデコ的な雰囲気が強調されています。キャリバー822/2を搭載するグランド・レベルソ・ウルトラスリム1931では、6時位置にスモールセコンドがあります。

リファレンスナンバーQ2788570のようなステンレススチール製でスモールセコンドなしのモデルは、新品で約80万円から購入可能です。未使用のホワイトゴールドやレッドゴールドのスモールセコンド付き腕時計は、約185万円です。

レベルソは2021年に90周年を迎えました。ジャガー・ルクルトは、これを記念して2つの限定スペシャルエディションを発表しました。

レベルソ トリビュート デュオ ファリアーノのケースはレッドゴールド製で、サイズは47mm x 28.3mmです。このモデルでは、表と裏に1つずつタイムゾーンが表示されます。表面の文字盤はラッカー仕上げのワインレッドでスモールセコンドを搭載しているのに対し、裏面の文字盤には「クール ド パリ」ギョーシェ装飾が施されています。また、デイナイトインジケーターも搭載しています。

内部では42時間のパワーリザーブを持つマニュファクチュールキャリバー854A/2が時を刻んでいます。レザーとリネン素材を使用した赤いストラップも興味深い特徴です。アルゼンチンの乗馬ブーツメーカー「カーサ・ファリアーノ社」がこのモデル専用のストラップを製造しており、このエディションの名称にも加えられています。ジャガー・ルクルトはこの時計を190本のみ生産しており、国内定価は286万円です。本稿執筆時点では、Chrono24には掲載されていませんでした。この時計に興味がある方は、定期的にサイトをチェックすることをお勧めします。

レベルソ トリビュート ノナンティエム

レベルソ トリビュート ノナンティエムも、デュオフェイス ファリアーノと同じくレッドゴールド製です。しかし、デュオフェイス ファリアーノとは異なり、ノナンティエムは49.9mm × 29.9mmと数ミリ大きくなっています。マニュファクチュールキャリバー826は、時、分、スモールセコンドに加え、ムーンフェイズとラージデイトを表面に搭載しています。文字盤はシルバーですが、針とインデックスにはレッドゴールドを使用しています。裏面は、とても創造性豊かです。時間はジャンピングアワーで表示され、分はディスクの回転によって示されます。ディスクには、夜空を表す小さなゴールドの星があしらわれています。さらに、中央には黄金の太陽と黄金の月が輪を描き、昼と夜を表現しています。このレベルソは190本の限定生産で、公式価格は475万2000円です。こちらも、購入を検討されている方は、定期的にChrono24をチェックされることをお勧めします。

トリプティックとはフランス語で、3部構成の絵画のことです。ジャガー・ルクルトのグランド コンプリケーション トリプティックは、主に3つの機能を備えています。それは、通常時刻 (すなわち太陽時)、恒星時、永久カレンダーの表示です。恒星時とは、天空の星の動きを想定したもので、太陽時とは1日に約4分のずれがあります。

リバーシブルケースの正面には、従来の時刻表示に加えて、24時間表示、トゥールビヨン、カレンダーのパワーリザーブ表示があります。ホワイトゴールドのケース裏には、永久カレンダー、天球図、12星座のディスク、星座カレンダー、恒星時・ムーンフェイズ表示、日の出・日の入り表示などを搭載しています。この複雑なモデルには、約3930万円の価格が付けられます。

ジャガー・ルクルトは2021年の時計見本市「Watches & Wonders」で、3つの文字盤を持つグランド コンプリケーション トリプティックよりさらに複雑なレベルソを発表しました。レベルソ ハイブリス メカニカ キャリバー185 クアドループティックは合計4つの文字盤を搭載しており、合計11のコンプリケーションを備える時計です。

ジャガー・ルクルトは、最初の文字盤に時刻表示に加えて、トゥールビヨンと、アウトサイズデイト、月、曜日、うるう年、昼夜表示を含む永久カレンダーを搭載しています。そして、2つ目の文字盤には、デジタルアワー表示と分表示を搭載しています。また、間延びを防止するように工夫された特許取得のミニッツリピーターも搭載されています。

台座の内側にある3つ目の文字盤は、月の高度や地球からの距離など、北半球の月の満ち欠けを表示します。これらと月と年の表示のすべてを搭載するハイブリス メカニカ キャリバー185 クアドループティックは、天文現象を表示することさえ可能です。次のスーパームーンや日食がいつ来るか知りたいときは、この時計が教えてくれます。この「スーパー」レベルソには、南半球のムーンフェイズも搭載されており、これは時計の裏側に配置されています。

わずか10本の限定生産であるこのレベルソを購入したい場合、時間、忍耐力、そして十分な資金のすべてが必要となります。この超高級時計の価格は135万ユーロ (約1億7500万円) です。

従来のトゥールビヨンでは、1分間に360度回転するキャリッジの中に、テンワとヒゲゼンマイ、脱進機が配置されています。19世紀初頭、アブラハム・ルイ・ブレゲがこの機構を発明したのは、重力によって生じる懐中時計の歩度の狂いを補正するためでした。これは、ほとんどの紳士がウエストコートのポケットに時計を縦に入れるためでした。ジャガー・ルクルトのジャイロトゥールビヨンはさらに進化し、第一のキャリッジを第二のキャリッジが取り囲み、構造全体が空間的に、つまり三次元的に回転するようになったのです。また、この複雑な機構では動的な位置変化によって発生するズレを補正することで、さらに精度を高めています。このユニークな仕組みで、すでに第3世代目のジャイロトゥールビヨンが作成されています。

ジャイロトゥールビヨンを搭載したレベルソのモデルは、オートオルロジュリーの優れた例と言えるでしょう。ケース素材に使用されているのは、貴金属のゴールドとプラチナのみです。第2世代のジャイロトゥールビヨンを搭載する、ピンクゴールド製レベルソは、未使用品で約2490万円です。第1世代のジャイロトゥールビヨンを搭載するプラチナモデルも、同じ価格帯で提供されています。

ジャガー・ルクルトが1994年に発表したレベルソ デュオフェイスは、ビジネスマンや出張の多い人に特にお勧めのモデルです。フロントはローカルタイムを表示し、ケースを裏返すと別のタイムゾーンの時刻を確認できます。ケースはステンレススチール、イエローゴールド、ホワイトゴールド、レッドゴールドからなり、文字盤のインデックスにはアラビア数字が用いられています。

バーインデックスを備えたトリビュート デュオフェイスは、1930年代の初代モデルを彷彿とさせます。内部にはマニュファクチュールキャリバー854をはじめとする手巻き機械式ムーブメントが搭載されています。ステンレススチール製の未使用状態のデュオフェイス (Ref.270.8.54) は、約80万円で販売されています。ゴールドモデル Ref.270.1.54は、約100万円で取引されています。