スイスの時計メーカー、ロンジンは1832年創業の長い歴史を持つ。この伝統はクラシックなエレガンス、高い品質、精度を特徴とする同社のモデルに反映されており、その信頼性の高さと普遍性から、世界中の時計愛好家の間で絶大な人気を誇っている。ロンジンのもうひとつの特長は、あらゆるシーンに対応するコレクションの幅広さだ。そして、ETAキャリバーを採用しているため、プライスレンジは中価格帯である。ロンジンは実績と伝統に重きを置き、日常の使用に対応する耐久性に優れた時計を生み出してきた。この記事では、コレクションの幅の広さとその背景にあるストーリーについて語りながら、Chrono24がおすすめする6つのモデルを紹介したい。
スピリット Zulu Time
まず最初は筆者のおすすめ、ロンジン スピリット Zulu Timeだ。ただ、個人的に少々先入観があるのも認めざるを得ない。週に一度は筆者のパートナーが手首に着けているのを目にしており、この時計がいかに万能かを知り過ぎてしまっているからだ。レザーストラップではエレガントに、ストライプのNATOストラップならスポーティーになる。そしてグリーンのベゼルは常にファッショナブルだ。「Zulu」とはどういう意味か知りたい方もいるだろう。「ズールータイム」とは、協定世界時(UTC)とグリニッジ標準時(GMT)の軍事用語である。
ロンジンはZuluとそのGMT機能によって、複数のタイムゾーンを表示する100年以上の経験と技術を生かし、航空機器やパイロット用の時計の製造に携わってきた伝統を誇る。
ドルチェヴィータ
ドルチェヴィータ・コレクションがロンジンのラインアップに加わってまだ20年余りだが、アールデコ調のデザインはこの時計が1920年代にインスパイアされたものであることを如実に示している。
この時計は世界的に有名なカルティエ タンクを彷彿とさせ、ローマ数字は典型的なアールデコ様式である。しかし、タンクと比べてかなり安価で、女性に人気のクオーツ式エントリーモデルだ。この時計は大成功を収め、自動巻きモデルや、ユニセックスモデル、メンズモデルへとラインアップを広げて来た。というのも、デザインが素晴らしく、女性だけに限定するのは惜しいからだ。
リンドバーグ アワーアングル ウォッチ
ロンジンは航空界のパイオニア、リンドバーグによるパリからニューヨークへの飛行という偉業に携わり、彼とともにパイロットのナビゲーションをサポートする時計を開発した歴史を持つ時計ブランドである。この時計には文字盤が2つあり、内側の文字盤は時刻を表示し、外側の文字盤は時角(アワーアングル)を計算するために使用されたものだ。
この機能を使って、パイロットは太陽の位置から自分の現在地を計算することができた。直径47.5mmのこの時計は日常使いに適した時計というよりも、むしろ計測器に近い存在だが、世界と時計の歴史を思い起こさせる特別なコレクターズアイテムでもある。
スピリット フライバック
このモデルも航空飛行にインスパイアされたものだが、今回リストに取り上げた主な理由は、クロノグラフのフライバック機能の起源をさかのぼるとロンジンに行き着くからだ。ロンジンは、1936年に初めてフライバック機能を13ZBムーブメントに搭載した。パイロットにとっては非常に便利なものだった。フライバック クロノグラフの特別な点は、リセットの前に一旦計測を止めるボタン操作が必要ないことだ。ワンプッシュでリセットと再計測が開始できる。
操作性が向上しただけでなく、より正確な測定が可能になった。ロンジン スピリット フライバックは、航空史と時計製造技術の歴史の節目を飾るスタイリッシュなモデルである。そしてロンジンらしく、リーズナブルな値段で手に入る。
マスターコレクション
マスターコレクションは、ロンジンが時計の世界で培ってきた経験を結集した、日常使いに適したエレガントなシリーズであり、全モデルがオートマティックである。筆者にとっては、日付表示のあるベーシックモデルがロンジンの中でも特におすすめの1本だ。どんなシーンにも合う、驚くほど万能な時計であり、ディテールへのこだわりも詰まっている。文字盤の模様、青焼きの針。そして腕に着けた時に初めて気づく卓越した職人技。筆者にとってマスターコレクションは、時計の宇宙を知るための理想的な入門機だ。なぜなら、この時計は信頼性が高く、どんなシーンでも使える万能な時計であると同時に、時計ファンになるきっかけとなるに十分な魅力を備えているからだ。
レジェンドダイバー
ダイバーズウォッチは特に人気の高いカテゴリーであり、日常生活でも好んで着用されている。しかし、定番のダイバーズウォッチでは大きすぎたり、普段使いには目立ちすぎるという方には、レジェンドダイバーがおすすめだ。ダイビングベゼルを排除して直径をわずか39mmとしたこのモデルは、ダイバーズウォッチとレディースウォッチの理想的なコンビネーションと言えるだろう。
アンティーク感が控えめな印象を醸し出している。しかし、特に素晴らしいのはこのモデルには長い伝統があることだ。ロンジンは早くも1937年には防水機能付きプッシュボタンを備えたケース、つまりダイビングに適したケースを開発している。1960年代にはより大規模にダイバーズウォッチの生産を始めた。レジェンドダイバーはこの時代を思い出させてくれる時計であり、理想的なユニセックス・ダイバーズウォッチなのだ。
まとめ
高級時計の世界に初めて足を踏み入れる方にとっても、ベテランのコレクターにとっても、ロンジンの時計はじっくりと見る価値がある。今回紹介した6本以外にも見るべきものはまだまだある。なぜなら、ロンジンの時計はすべて、魅力的な長い歴史と優れた品質を備えているだけでなく、予算オーバーにならないリーズナブルな価格で購入できるからだ。そういう時計を人は好んで、気兼ねなく着けるものだ。そして、それこそが時計にとって最も重要なことだろう。