2021年01月21日
 8 分

さようならムーンウォッチ、ようこそニュームーン

Sebastian Swart
さようならムーンウォッチ、ようこそニュームーン

さようならムーンウォッチ、ようこそニュームーン

何カ月も噂されていたが、ついに公式発表された。50年以上製造されてきたオメガの定番、スピードマスター プロフェッショナル ムーンウォッチ (最後のリファレンスは311.30.42.30.01.005) が生産終了になる。また、サファイアガラスのバージョン (311.30.42.30.01.006) も廃盤となり、後継モデルが発表される。おそらく世界で最も有名なこのクロノグラフは、ニュームーンによって引き継がれる。変更点は一見すると明白なようだ。しかし詳しく見てみると、これまでのムーンウォッチを彷彿とさせる細かい部分もあることがわかる。最もわかりやすい変更点は、時計の内部に見られる。それはこのニュームーンの時を刻む、新しいコーアクシャル マスター クロノメーター キャリバー3861である。

オメガ プロフェッショナル ムーンウォッチ — 簡単なまとめ

「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である」この有名な言葉は、1969年7月21日にアメリカ宇宙飛行士ニール・アームストロングが人類で初めて月面へ降り立った際に発したもの。アームストロングは彼のオメガ スピードマスターをアポロ11号に置いて月面へ足を踏みおろしたが、彼の次に月面へ降り立ったバズ・オルドリンはこの時計を着用して月面を飛び跳ねた。

スピードマスター プロフェッショナルは月面で着用された最初の時計になって以来ムーンウォッチと呼ばれ、この出来事と切っても切れない関係にある。オメガは当初このクロノグラフをレーシング用時計として開発していた。その全体的な特性とNASAによる多数のテストに合格したことから、この時計は宇宙ミッションにも理想的であることが証明された。

オメガは何十年もの間、月面着陸にまつわるストーリーをマーケティング戦略として巧みに使用してきた。ムーンウォッチのファンや愛用者は、過去50年もの間、この時計にほとんど変更が加えられていないことを高く評価している。大規模な改良は嫌がられていたため、この時計は何十年も手を加えられずにいたのだった。オメガは一貫して、手巻きキャリバー レマニア2310およびレマニア1873をベースとし、同社のキャリバー321、861、そして最後のムーンウォッチで採用されている1861を製造してきた。定番のムーンウォッチのその他の特性は、ヘサライト製の風防とねじ込み式のステンレス製ケースバックである。また素材とサイズは一貫して同じままで、直径42mmのステンレス製ケースとなっている。

オメガ スピードマスター ヘサライト、Ref. 311.30.42.30.01.005 表
オメガ スピードマスター ヘサライト、Ref. 311.30.42.30.01.005 表
オメガ スピードマスター ヘサライト、Ref. 311.30.42.30.01.005 裏
オメガ スピードマスター ヘサライト、Ref. 311.30.42.30.01.005 裏

2021年、キャリバー3861搭載のニュームーンが着陸した

2021年は、スピードマスターの新時代到来を告げる年である。ニュームーンという名前を持つ新しいモデルは、ヘサライト (Ref. 310.30.42.50.01.001) またはサファイアガラス (310.30.42.50.01.002) の風防から選べる。ヘサライトのバージョンはブラックのナイロンストラップ、またサファイアガラスのバージョンはブラックのレザーストラップでも提供されている。よってニュームーンは合計4つのバリエーションから入手可能となっている。では、これらの時計の特徴は何だろうか?

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ムーブメント

冒頭で述べたオメガ コーアクシャル マスター クロノグラフ キャリバー3861は、キャリバー861をベースに製造されている。変更は広範囲に渡り行われた。オメガが数年の開発期間で目指したのは、手巻きキャリバーがスイス連邦計量・認定局 (METAS) によるテストに合格し、マスタークロノメーターとして認定されることだった。そのために精度の高さと耐磁性能の高さに特に注意を払い、ムーブメントにはシリコン製ヒゲゼンマイを備えたコーアクシャル脱進機が起用された。これは高精度の機構に加え、最大1万5000ガウスまでの耐磁性を誇る。パワーリザーブは、キャリバー861よりも2時間長い50時間。変更されなかった点はテンプの周波数で、毎時2万1600回 (A/h) で振動する。

ケース、文字盤、オメガロゴ

ニュームーンのケースには、いくつかのディテールを除き変更は加えられていない。直径42mmのステンレス製ケースにはタキメータースケールがあり、そこに小さいながらも注目に値する点がある。オメガは1970年以前に製造されたムーンウォッチへのオマージュとして、「ドット・オーバー90」と称されるベゼルインサートを採用した。これは「DON」とも呼ばれ、タキメータースケールの90の数字の上にドット (丸印) が記されている。1970年以降に生産されたモデルでは、このドットは90の右隣に配置されている。真のスピードマスターファンにとって、これは間違いなくささやかなハイライトである。どのスピードマスターでも同じだったように、ヘサライトバージョンのケースバックはねじ込み式のステンレス製で、サファイアガラスバージョンのケースバックはキャリバー3861を眺められるサファイアガラス製となっている。

オメガは、文字盤デザインにいわゆるステップダイヤルを採用した。既存モデルのフラットダイヤルとは対照的に、新しい文字盤には明らかな段差が見られる積算計インダイヤルが備わっている。オメガは1968年に発表したRef.145.022にこの文字盤を採用している。ステップダイヤルを扱う利点は、その柔軟性の高さにあり、これにより文字盤の存在感が全体的に大きくなる。

文字盤のどんな些細なディテールも、ムーンウォッチを購入しようと思っている多くの人にとっては大きな違いである。文字盤上にあるオメガのブランドロゴは、ヘサライトバージョンに “のみ” 刻印されているのに対し、サファイアガラスバージョンはアプライドとなっている。この違いを作った意向は、オメガが片方のバージョンが持つツールウォッチ的な特性と、もう一方のバージョンが持つドレスウォッチ的な特性を強調させたかったからだと思われる。この意向はステンレス製のブレスのセレクションにも見られる。

ブレスレット

ニュームーンのステンレス製ブレスには、はっきりとした変更点が見られる。オメガはヘサライトバージョンとサファイアガラスバージョン用に2つの異なるブレスを採用した。ヘサライトバージョンのブレスの表面には全てサテン仕上げが施されており、サファイアバージョンには従来のモデル同様サテン仕上げとポリッシュ仕上げが施されている。リンクの側面は両バージョンともポリッシュ仕上げとなっている。

両バリエーションで新しくなった部分は、幅20mmのラグから幅わずか15mmのクラスプへと徐々に細くなっていること。ヘサライトのナイロン製ストラップでも15mm幅へ向けて細くなっているが、サファイアガラスのレザーストラップのクラスプ部分は幅16mmとなっている。

価格

ニュームーンの価格にはこれまでのモデルと比較して明らかな値上がりが見られ、次の通りになっている。

Ref.310.30.42.50.01.001

ヘサライト、ステンレス製ブレス                                             5800スイスフラン (約68万円)

Ref.310.32.42.50.01.001

ヘサライト、布製ストラップ                                                      5500スイスフラン (64万円)

Ref.310.30.42.50.01.002

サファイアガラス、ステンレス製ブレス                                  6600スイスフラン (77万円)  

Ref.310.32.42.50.01.002

サファイアガラス、レザーストラップ                                       6300スイスフラン (約73万5000円)

まとめ

オメガは定番のムーンウォッチに別れを告げ、まったく新しい後継モデルを世界に発表したわけだが、どれもすぐに親近感を覚えられそうなモデルである。変更点はこのような歴史ある時計にとっては革命的だと言えるが、同時に注意深く、そして愛情を込めて実行されているのがわかる。特にDONベゼルやステップダイヤルなどの細部は、ムーンウォッチの純粋な愛好家にとっては非常に魅力的だ。ニュームーンは現代に相応しいコーアクシャルキャリバーである新しいキャリバー3861を搭載している。この機構はその機能が現代的にも関わらず、またはおそらく現代的すぎるために、一部のムーンウォッチファンにはこの時計の伝統の全体像に合わないと思われるだろう。クラシックとモダンを組み合わせるというオメガの意図は、うまくバランスが取れており成功しているように思える。時計市場で新しいモデルがどのように受け入れられるか、そして従来モデルの価格がどのように発展するか、現時点ではまだ未知数である。


記者紹介

Sebastian Swart

すでに数年前からChrono24のサイトを時計の買取と販売、そして時計について調べるのに使っていました。私は子どもの頃から時計に興味を持っており…

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