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たゆまぬ進化|ジラール・ペルゴのネオ・コンスタント・エスケープメント

Elisabeth Schroeder 著
2023年10月11日
5 分
たゆまぬ進化|ジラール・ペルゴのネオ・コンスタント・エスケープメント

たゆまぬ進化|ジラール・ペルゴのネオ・コンスタント・エスケープメント

2013年、筆者がまだ高校生で脱進機構どころかクロノグラフとクロノメーターの違いさえも知らなかった頃に、ジラール・ペルゴはコンスタント・エスケープメントL.M.を発表し、ジュネーブ時計グランプリ (GPHG)で「エギーユ・ドール(金の針)」を受賞した。この時計の特徴は一定の力(コンスタントフォース)で作動するエスケープメントにあり、供給されるエネルギー状況に左右されない安定した精度を確保している。

それから10年後の今、筆者は多くの時計用語を学んだだけでなく、2023年9月1日にはこのモデルの最新の進化版を目の前にしている。ネオ・コンスタント・エスケープメントという名前は、そのユニークな機構に因んでいるだけではない。生涯を通じてクロノメトリーのさらなる進歩に携わったコンスタン・ジラールの名にも因んでいる。今年のジュネーブ・ウォッチ・デイズで、筆者はこのスイスの時計メーカーの新しいタイムピースを目にする機会に恵まれ、その背景について詳しく知ることができた。

コンスタント・エスケープの物語の始まり

「このアイデアは、なんの変哲もないごく普通の電車の駅で生まれた」。ジラール・ペルゴ社のコミュニケーション及びブランドイメージ責任者レオポルド・チェリによると、その時「一人の時計職人が電車の切符を中指と親指で弄んでいた」のだそうだ。この時計職人は指に挟んだ切符をたわませて、膨らんだ部分を指で押すと、たわみが瞬時に反転し膨らみが「ぺこっ」と反対側に移動する様子を観察していた。このたわみの動きを、シリコン製極細ブレードに応用したのがコンスタント・エスケープメントの脱進機だ。

Die Constant Escape ist sehr fein und aus Silizium gefertigt.
非常に繊細なシリコン製のコンスタント・エスケープメント

シリコンは14マイクロメートルという、人間の髪の毛の6分の1の細さのブレードを湾曲させてテンプに一定の力を供給することのできる唯一の素材である。中央にブレードを置いた脱進機のゼンマイは、1枚のシリコンから一体成形したものだ。これが時計のシンメトリーを強調し、特徴的なブリッジとともにこの時計の顔つきを他と見間違うことのない独特なものにしている。

以前の記事、時計製造における一定の力で作動するコンスタントフォース・メカニズムでは、時計の高い精度を実現するレアな複雑機構について紹介している。

最適を求めた先の斬新さ:ネオ・コンスタント・エスケープメント

ネオ・コンスタント・エスケープメントは過去の成功をさらに発展させたものだ。「ムーブメントのパーツ数を280から266に減らした」と語るのは、PRとメディア・プロジェクトマネジメントを担当するキャピューシーヌ・アブリシュだ。ジラール・ペルゴが追求するのは複雑さではなく、最適解なのだということがよく分かる。

Reich an Details, aber leicht wie eine Feder: die Neo Constant Escapement Girard-Perregaux
豊かなディテールと羽のような軽さ:ジラール・ペルゴのネオ・コンスタント・エスケープメント

ネオ・コンスタント・エスケープメントの直径は手首を覆い隠すほどの45mm(先代モデルはなんとさらに3mm大きい)だが、筆者の細い腕につけてもさほど重さは感じない。その理由はケースが軽量なチタン製なためであり、また、時計作りの技のすべてが可視化されていながらもエレガントな印象を与えている。ジュネーブ・ウォッチ・デイズの期間中、チタン製の時計を数多く見たが、この時計には特別な何かがある。一見、大きくどっしりして見えるが、持ち上げてみると意外なほど軽やかだ。この最初は矛盾しているように思える印象と、マットでありながら煌めくチタンのソフトブラックが、ネオ・コンスタント・エスケープメントにある種の特別感を与えているのだ。

Live Updates: Geneva Watch Days 2023(英語)では、Chrono24がジュネーブ・ウォッチ・デイズで目にした各ブランドの新作を紹介している(英語)。

独特な形状のサファイヤガラスの風防の中には斬新な文字盤があり、露出した部品が見える。キャリバーGP09200は7日間のパワーリザーブを備えており、9時位置のリニア式インジケーターで巻き上げ残量を確認することができる。上層にある時針と分針はスケルトン加工でロジウムメッキが施され、夜光塗料が塗布されている。そして最後に、秒針がこのタイムピースの全体を引き締める。まるですべてのディテールの上に浮かんでいるかのようだ。青い先端は時の流れを表わし、もう一方の先端のディテールはジラール・ペルゴのブランドロゴに使用されているブリッジの半分を思わせる。

クロノメーター認定、黒のファブリック調ラバーストラップ付き。チタン製のトリプル・フォールディング・クラスプを備え、マイクロアジャストメントシステムにより、手首にぴったりとフィットする。

Abgerundet mit einem schwarzen Armband aus Kautschuk mit Stoffeffekt.
黒のファブリック調ラバーストラップ付き

ネオ・コンスタント・エスケープメントは、ジラール・ペルゴのアイデアの豊さと斬新さを体現した傑作だ。価格は10万5000ユーロ/ 9万9600米ドル(約1700万円/約1500万円)。

技術仕様:ネオ・コンスタント・エスケープメント、Ref. 93510-21-1930-5CX

ケース
素材 チタン
直径 45mm
厚さ 14.8mm
ガラス 無反射コーティングのサファイアガラスボックス
ケースバック サファイアガラス
文字盤 サスペンディッドインデックス付きリング
青色蓄光塗料コーティング
スケルトン加工、ロジウムメッキ、ドーフィン型、青色蓄光塗料コーティング
防水性 30m(30気圧)
ムーブメント
Ref. GP09200-1153

機械式ムーブメント、手巻き式

COSC認定クロノメーター

直径 39.5mm
厚さ 7.4mm
振動数 毎時2万1600回(3Hz)
パーツ 266個
受け石数 29石
パワーリザーブ 7日間以上
機能 時間・分表示、センターセコンド、パワーリザーブ表示
ベルト
素材 黒のファブリック調ラバーストラップ
クラスプ マイクロアジャストシステムを備えたチタン製トリプルフォールディングクラスプ

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記者紹介

Elisabeth Schroeder

Elisabeth Schroeder

初めて足を運んだジュネーブ・ウォッチ・デイズ 2023は、高級時計への興味をさらに搔き立てるものでした。そして、「時計について書く」ことが、時計をより深く理解するための一番の方法だと思っています。

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