2022年04月21日 | 更新日: 2022年04月21日
 8 分

なぜセイコーは特別なブランドなのか?

Jorg Weppelink
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セイコーはこの広大な時計作りの世界で特別な位置を占めている。セイコーウオッチ株式会社 (グランドセイコーとクレドールも含まれる) の一部として、セイコーは独特なポジションにある。彼らは予算の額にかかわらず、全ての人への腕時計を作っており、高品質なクォーツ式時計から高級な機械式タイムピースまで、セイコーには全てがそろう。ではもう少し深く掘り下げて、セイコーというブランドがこんなにも特別である理由を探ってみよう。 

セイコー vs. スイスブランド

セイコーについて聞いてみると、たいていの人は同ブランドのクォーツ式時計について述べるだろう。公正な立場で言うならば、クォーツ式時計は同社の収入の基盤である。しかし、セイコーがそれのみによって定義されるべきだということではない。セイコーは興味深い歴史を持つ高品質の機械式時計の驚異的なコレクションをも持っているのだ。 

そしてここで歴史というのは、本格的な歴史なのである。多くの人はセイコーが1世紀以上もの歴史を持つことを知らない。この長い時間の間に、セイコーはイノベーションを重要な焦点に据えることによって、自社をスイスの時計業界と切り離した。さらにセイコーは良心的な価格のタイムピースを作るという長い伝統を持っている。ほとんどのスイスブランドが高価なラグジュアリーアイテムとしての時計のみを提供する一方で、セイコーは高品質の機械式時計を妥当な価格帯から始まり、非常に高価なグランドセイコーやクレドールといったブランドのものにいたるまで提供しているのだ。それでは、セイコーの素晴らしい業績から見ていこう。 

セイコー:イノベーションの代名詞

セイコーの歴史は1882年、服部金太郎が東京の銀座に腕時計と置時計の店を構えたところまでさかのぼる。そして1924年、セイコー名義で最初の腕時計が発表され、偉大なるレガシーが始まった。 

Seiko Marvel

以来セイコーは、同ブランドを定義し、業界に革命を起こすこととなったいくつかの非常に象徴的な時計を開発してきた。その一例が、同ブランド初の自社製ムーブメントを搭載した、1956年のマーベルである。これは1959年のセイコー ジャイロマーベルのベースとなった。後者のタイムピースは、巻き上げ性能を向上させる「マジックレバー」機構を持っていた。1960年、セイコーは初めてのグランドセイコー時計を発表。セイコーのラグジュアリーラインとして何十年も存在していたが、グランドセイコーは今では独立したブランドとなっている。 

1964年、セイコーは日本初のクロノグラフをリリースした。セイコーは2019年に、このモデルの55周年記念を復刻版のリリースをもって祝った。1965年には、2017年に復活した有名な時計である初代セイコー ダイバーがデビュー。1969年にはセイコーは2つの世界初の時計をデビューさせる。ひとつは今ではレジェンドとなったセイコー キャリバー6139によって駆動する、世界初の自動巻クロノグラフ時計(セイコー 5スポーツスピードタイマー)である。 

Seiko 5 Sports Speed Timer
セイコー 5スポーツ スピードタイマー キャリバー6139

もうひとつの世界初は、時計業界の軌道を永遠に変えてしまった。お分かりのように、これは世界初のクォーツ式時計、今では “クォーツ危機” と呼ばれるもののきっかけとなった時計のことである。1969 セイコー クォーツ アストロンとその革新的なクォーツ式ムーブメントは革命を引き起こした。それはどんな機械式ムーブメントよりもずっと正確だった。おそらく、クォーツ アストロンの最も注目すべきディテールは、そのケースが18Kイエローゴールド製だったということだろう。今日では、ほとんどの人がクォーツ式ムーブメントを安っぽい時計や素材のものだと考えるのだ。 

セイコーの革新的な姿勢はその後の数十年も続いた。彼らは1988年にキネティックムーブメントを発表し、そして1999年、初めてのスプリングドライブムーブメントを発表。後者はいくつかのグランドセイコーの時計を含むさまざまなセイコーのブランドに使われている。最新の大きなイノベーションであるアストロン GPS ソーラーは、2012年にお披露目となった。この時計はソーラーパワーをエネルギー源とし、GPS衛星からのシグナルによって自動で現在地の時刻に合わせて調整するのである。これはセイコーが生み出してきた数多くの画期的な技術革新のうち最新のものである。これらのイノベーションにより、同社は今日あるユニークなブランドとなり得たのだ。 

Seiko Astron GPS Solar

セイコーの人気の理由

セイコーが世界中の人々からこんなにも愛されるのには、多くの理由がある。すでに述べたように、セイコーは非常に革新的なブランドである。それって最高ではないか?さらに、同社の機械式時計は非常に品質が高く、非常にお手頃な価格で販売されている。つまり、セイコーの時計は支払う金額の1円たりとも無駄にならない時計なのだ。 

セイコーはまた多数のデザイン的な定番時計も生み出しており、それらは多大な支持を集めている。ファンが特定のモデルにつけたニックネームの一部には、スモー、モンスター、タートルなどがある。セイコーは逆に、自社の時計にはリファレンスナンバーしか使わない。このブランドの歴史を見てみれば、セイコーが広く愛される時計を作ってきたことがわかるだろう。それはトップの時計メーカーだけが主張できることである。 

セイコーが愛される理由として最後にもうひとつあげたい点は、価格に関係なく、同社が作る全ての機械式時計に注ぎ込むプライドと職人技である。あなたが買うのがたとえ6万円のタートルでも、42万円のマリーンマスターでも、はたまた100万円近いグランドセイコー ハイビートGMTでも、1本1本の時計は、どんな細部にまでも行き届く目と高いプライドをもって職人たちによって作りあげられている。セイコーを訪れた人に聞いてみれば、みな一様にその職人技は並外れたものであり、彼らの献身は並ぶものがないと言うはずだ。多くの人が、セイコーの日本本社を離れる際には、そこに着いたときよりもより大きな尊敬の念をこのブランドに対して抱いていると話している。 

Grand Seiko Hi-Beat GMT
グランドセイコー ハイビート GMT

現行のセイコーモデル

現行のセイコーカタログには5つのモデルシリーズがある。ダイバーズウォッチのプロスペックス、最近リニューアルしたスポーツウォッチラインのセイコー 5スポーツ、スタイル、品質、そして耐久性に焦点を置いたプレザージュ、クラシックなデザインのプレミアシリーズ、そしてGPSソーラーテクノロジーを搭載したアストロンコレクションである。全体的に見て、最も低価格のセイコー 5スポーツモデルが3万5000円ほどから、マリーンマスター 300として知られるプロスペックス SBDX023が約42万円と、非常に多彩な時計コレクションがそろっている。 

近年のセイコーのリリース

通常モデルに加えて、ここ数年、セイコーは自社の偉大な業績のいくつかを記念して、多くの素晴らしい限定版時計をリリースした。こここそが、セイコーが真にその才能を発揮したところだと私は思う。彼らは自社の過去に敬意を表し、最新テクノロジーを把握する方法を知っていることを証明した。その結果として、まさに見事なスペシャルエディションの時計が生まれたのである。 

最も忘れられないものをいくつかあげると、2017年にリリースされた1965年のセイコー初のダイバーズウォッチを称える、セイコー SBDX019ダイバーズウォッチ。1968年の伝説的なセイコー自動巻ダイバーズウォッチの復刻版である、2018年リリースのセイコー SBEX007。後者は私の個人的なお気に入りである。それは1968年モデルに忠実にできており、ワンピース構造のスチール製ケース、そして8L55ハイビートキャリバー (元来グランドセイコーのキャリバー) が搭載されている。構造と仕上げは最高で、手首に着けてみれば素晴らしいフィット感である。 

Seiko SLA025

およそ71万円とセイコーの時計にしては非常に高価だが、この価格はファンにとっては明らかに大した問題ではなかった。1500本限定で作られたこのタイムピースは、ほんの数日で完売となったのだ。現在、この時計は中古品市場で非常に高い人気を誇っている。豊かな歴史、タイムレスなデザイン、信じられないほど革新的なムーブメントが、この時計、そしてセイコー全体を時計の世界でユニークな存在にしている。しかし最も重要なのは、セイコーはそのファンたちが自分のタイムピースに個人的なつながりを持っているからこそ特別なのである。そんなファンの1人である私にはわかる。結局のところ、セイコーは私が機械式時計に興味を持つ最初のきっかけを作ってくれたブランドであり、私はそれをずっと忘れることはない。 


記者紹介

Jorg Weppelink

こんにちは、ヨルグです。2016年からChrono24で記者として執筆しています。しかし、Chrono24との関係はそれ以前からあって、時計好きになったのは2003年頃からです。私の友人 …

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