2019年10月08日
 13 分

もし1本だけ買うなら、どの万能時計を選ぶべきか?

Pascal Gehrlein
If you could only own one watch what would it be_2-1
If you could only own one watch what would it be

「時計を1本だけ選ぶとしたら?」と時計ファンが議論するのを、フォーラム、グループ、ソーシャルメディアにおいて度々目にする。どのような場面にも似合い、1本ですべてをこなす万能な時計はあるのだろうか?

さてここで、ある問いが頭をもたげる:そもそも「万能」の定義とは?そして、コレクション欲を抑え、1本で満足できる時計が満たすべき条件とは?

「万能」とは、その定義によれば「何でもできること」を意味しているが、もちろんその条件は人それぞれによって異なる。私の日常、趣味、ワードローブを考慮した上で思い当たった、時計が備えるべき性質を以下に列挙してみよう。

堅牢性

旅行は私の趣味のひとつだ。安全上の理由から、旅行にはできるならばどのような場面でも身に着けていられる時計を1本だけ持って行きたい。つまり、プールに飛び込んだり冷たいシャワーを浴びたりする時のために、時計は最低でも100m防水でなくてはいけない。また、同じ理由からメタルブレスレットも非常に望ましい。イエローゴールドやホワイトゴールドなどの柔らかい金属は、その重量によって快適とは言えないだけではなく、傷も付きやすい。また私の意見では、時計内部の性能も堅牢性に含まれる。例えば摩擦 (摩耗) を抑えることでオーバーホール間隔を長くするオメガ(Omega)のコーアクシャル機構は、その好例だ。

慎ましさ

この点に関しては間違いなく議論の余地があるが (ご意見があれば、ぜひFacebookのコメント欄に書き込んでいただきたい)、私にとって慎ましさとは時計ができる限り目立たず、注目を集めないことで、必要であれば時計を袖の下に隠せることである。煌めくダイヤモンド、オレンジ色のラバーストラップ、金無垢のケースはもちろんこの性質に該当せず、サイズは41mmまでが許容範囲となる。また、時計のイメージも重要な役割を果たす。有名なアメリカのラッパーが着用していることで知られている時計などは、プライベートでは問題なくとも、クライアントやビジネスパートナーの前で身に着けることは憚られる。

レザーストラップとの互換性

ほとんどの日常生活にとって、とりわけ水に触れる場合、メタルブレスは便利であると思う。しかし、しかるべき機会に、気分に応じてレザーストラップに取り換えられることは、私にとって決定的ではないにしても非常に重要な観点である。そのため、オーデマ ピゲ(Audemars Piguet)のロイヤルオークのような一体型ブレスを持つ時計はここでは除外される。

ワードローブとの相性

時計は少なくとも70%以上のワードローブによく似合い、20%にはほどほどでなくてはならず、似合わないのは残りの10%だけ。これが私のモットーだ。私は自分のスタイルをビジネスカジュアルと呼んでいて、スーツを着ることは稀であるが、スニーカー、スラックス、シャツ、スポーツジャケットは多く所有している。また、万能時計としてカラフルなベゼルや文字盤を持つ時計は選びたくない。将来的に色が気に入らなくなるかもしれないと心配であるからだ。そのため、ブラックまたはホワイトの文字盤を持つ時計がより好ましい。

基準を挙げるのはこの程度で十分だろう。それでは、1本だけ選ぶ時計として、どのモデルが候補に挙がるのかを検討していきたい。ここでは、15万円以下、40万円以下、60万円以下 (Chrono24価格) の価格帯別にいくつかの時計をリストアップした。

15万円以下

Sinn 556
ジン 556

ジン 556(Sinn 556)は異なるメタルブレスとレザーストラップで提供されている有名な時計である。この3針時計は20気圧防水(200m防水)で、堅牢性の基準を完璧に満たしている。そのケースはサテン仕上げされたステンレス製で、ガラスにはサファイアクリスタルを使用。リューズガードや白い夜光インデックスなどツールウォッチのディテールを持ちながらも、直径38.5mmのミニマルなジン 556はレザーストラップと組み合わせることでどんな場面においても洗練された印象を与える。このスポーティーかつ上品ジンは自動巻ETA 2824-2によって駆動されており、ストップセコンド機能と、4時と5時の間にある小さな日付表示窓を備えている。このジン時計の価格は約12万円で、最高の万能時計の中の有力候補であると言える。

堅牢性: 4 / 5

慎ましさ: 3 / 5

レザーストラップとの互換性: 4 / 5

ワードローブとの相性: 4 / 5

その他: 日付表示、ストップセコンド機能

セイコー プレザージュ

同じく私の基準に合致するモデル、それはセイコー(Seiko) プレザージュだ。時計コミュニティにおいて、セイコーのSKXシリーズ、とりわけSKX007はコストパフォーマンスの高さで有名であるが、このシリーズは私にはスポーティーすぎるし、普段使いには多機能すぎる。プレザージュはプレザージュ クロノグラフなど、数多くのバリエーションで手に入れることができる。しかし、私がここで取り上げるのは、レザーストラップとローマ数字インデックスが使用された非常にクラシックなモデル、またはブラックの文字盤とステンレスブレスを持つ数字なしのよりカジュアルなモデルだ。特にSARX035はオールラウンドプレーヤーとしてぴったり。この自動巻きキャリバー6R15を搭載する時計は10気圧防水で、耐磁性能を備えている。また、裏蓋にはサファイアクリスタルが使用されており、41mmサイズの時計のムーブメントを見ることができる。私の意見では、この時計のデザインは非常に幅が広く、Tシャツ、シャツ、スーツのどれにも合わせることができるが、ポリッシュ仕上げされたインデックスと文字盤はカジュアルな場面では少々上品すぎるかもしれない。この点に関してはジン 556に利点がある。それでも、この約10万円の価格で提供されている3針時計は万能時計に適した選択肢と言えるだろう。

堅牢性: 4 / 5

慎ましさ: 5 / 5

レザーストラップとの互換性: 5 / 5

ワードローブとの相性: 3 / 5

その他: 日付表示、耐磁性能、ストップセコンド機能、シースルーケースバック

40万円以下

Tag Heuer Autavia Isograph
タグ・ホイヤー オータヴィア アイソグラフ

タグ・ホイヤー オータヴィア アイソグラフ

タグ・ホイヤー(TAG Heuer)は今年のバーゼルワールドで、まったく新しいデザインを纏うオータビアによって多くのジャーナリストと時計ファンを驚かせた。私も驚いたが、それはまったくポジティブな意味でだ。この3針のオータビア(なんとクロノグラフではない!)は航空からインスピレーションを得ているが、その印象は控えめであらゆる場面に合わせることができる。タグ・ホイヤーはこの時計に様々なカーフレザーストラップとNATOストラップを提供しており、時計をステンレスブレス付きで購入したとしても後から交換することができる。おまけに、この新作オータビアにはストラップをバネ棒工具なしで簡単に交換できるシステムが搭載されている。時計内部ではジン 556と同じ様にETA 2824をベースとした自動巻きキャリバー5が時を刻む。キャリバーには新しい独自開発のカーボンコンポジット製ヒゲゼンマイが組み込まれており、非常に高い耐衝撃性・耐磁性も実現。また、この時計の防水性能は最大10気圧である。これらの機能の他に、ヴィンテージにインスピレーションを得たデザインと6時位置の日付表示も、私にとってはプラスなポイントだ。モデルによって異なるが、例えば黒いレザーストラップやステンレスブレスを取り付けたこの42mmサイズの時計は、スポーツジャケットやオックスフォードシャツに非常によく似合う。オータヴィア アイソグラフはChrono2435万円以下 (モデルによって異なる) で手に入れることができ、素晴らしい万能時計であることは間違いない。

堅牢性: 4 / 5

慎ましさ: 3 / 5

レザーストラップとの互換性: 5 / 5

ワードローブとの相性: 3 / 5

その他: 日付表示、耐磁性能、ストラップのクイックチェンジ機能

グランドセイコー SBGR309

Grand Seiko SBGR309
グランドセイコー SBGR309

グランドセイコー(Grand Seiko)は日本の職人技による卓越した品質と、非常に過小評価されていることで知られている。グランドセイコーを着用する人は、良い趣味を持ちながらも、それを誇示することを好まないことを示している。私の特にお気に入りのグランドセイコー モデルはSBGR309だ。SBGR309はデュアルカーブサファイアガラスと内面無反射コーティングを備えている。キャリバー9S6870時間のパワーリザーブを誇り、その精度はグランドセイコーで予想されるとおり非常に高く、シースルーケースバックを通して内部を眺めることもできる。さらに、ねじ込み式のリュウズとケースバックによって100mの防水性能を実現した。また、42mmのケースをよく見てみると、ステンレスの精密で細かいサテン仕上げと鋭いエッジの研磨を見て取ることができる。この点においてグランドセイコーは例のごとく傑出しているが、そのためにこの非常に丈夫な時計を休暇中にビーチやプールで着用するのはもったいないとも言える。プレザージュと同様にそのデザインは上品な趣を持っているが、スポーティーさとエレガンスのバランスもうまく取れており、ディープブラックの文字盤、少々幅が広いインデックス、ドフィーヌ針が、繊細すぎない印象を与えている。このモデルは約40万円で入手可能だ。

堅牢性: 5 / 5

慎ましさ: 5 / 5

レザーストラップとの互換性: 3 / 5

ワードローブとの相性: 4 / 5

その他: 日付表示、耐磁性能、シースルーケースバック

60万円以下

Omega Seamaster Aqua Terra
オメガ シーマスター アクアテラ, 写真: Bert Buijsrogge

オメガ シーマスター アクアテラ

オメガのアクアテラは、このテーマに関して最初に思い浮かんだ時計のひとつだった。人気のスピードマスター ムーンウォッチシーマスター 300mの陰に隠れているが、シーマスター アクアテラは「万能性」に関して両モデルより優れていると思う。私にとって決定的なのは、アクアテラならブルーの文字盤を持つゴールド製、ステンレス製、およびゴールドとステンレスを組み合わせたものなど異なるモデルが入手可能な点だ。他の時計と比較するために、ブラックの文字盤を持つシーマスター アクアテラ 150M (Ref. 220.10.38.20.01.001) を例に挙げてみよう。シーマスターシリーズの一部として2003年に発表されたアクアテラは、1950年代に作られたスポーツモデルに端を発し、海とのつながりを連想させるラグおよびチークコンセプトの文字盤を特徴とする。このリファレンスのケース径は快適で小さすぎない38mmで、その名前から察せられる通り、150mの防水性を誇っている。サファイアクリスタルはドーム型で、両面に無反射加工が施された仕上がりだ。また、15,000ガウス以上の耐磁性能を誇るコーアクシャル マスター クロノメーターのキャリバー8800を搭載。このキャリバーはもちろんクロノメーター検定済みで、6時位置に日付表示とシースルーケースバックを備えている。要するに、アクアテラは独特な文字盤によってグランドセイコーやその他のライバル機と一線を画す、スポーティーで上品な3針時計なのであり、目立ちすぎず、ビジネスの場で使用するために十分な格も持ちあわせているのだ。この時計の性能がバケーションに適しているかどうかは言うまでもないだろう。価格は約47万円だ。

堅牢性: 5 / 5

慎ましさ: 4 / 5

レザーストラップとの互換性: 2/ 5

ワードローブとの相性: 3 / 5

その他: 日付表示、耐磁性能、シースルーケースバック

ロレックス エクスプローラー 11470

おそらく多くの人はロレックス(Rolex) エクスプローラーをこのリストの上位に挙げるだろう。ここでは特にエクスプローラー 11470に焦点を当てたい。このモデルは専門家によって新しい隠れたスターとして扱われている。このオイスター パーペチュアル 39とともに控えめなロレックスモデルは、歴史的に冒険家であるテンジン・ノルゲイおよびエドモンド・ヒラリーと深い関わりがある。というのも、ロレックスは1953年の冒険において同社の時計を提供したからだ(この時計がエクスプローラーであったとは公式に発表されていない)。つまり、堅牢性はこの時計の本質的価値であった。回転ベゼルもクロノグラフも日付表示も搭載されていない。この時計に求められたのは、無駄を最小限にまで削ぎ落とした、シンプルな実用性だったからだ。私が114270を選んだ理由は、その外観が人気のヴィンテージ モデル1016に非常に似ていながらも、その製造期間が2001年から2010年であったため、前モデルの14270に比べて現代的な技術が搭載されているからである。36mmのステンレスケース内部ではキャリバー3130が正確に時を刻み、一体型フラッシュフィットは外部の堅牢性を高め、スーパールミノバは視認性を向上させている。ミニマルで控えめ、そしてすぐにはロレックスだと分からないエクスプローラーは、他のロレックスとは一線を画しているのだ。水着からスーツまで、エクスプローラーが似合わない場面はない。36mmが小さすぎるという方は、キャリバー3132を搭載するケース径39mmRef. 214270をチェックしてみてほしい。状態に応じて、約58万円で販売されている114270より若干高い、約70万円から見つけることができるはずだ。

堅牢性: 4 / 5

慎ましさ: 5 / 5 (ロレックスとしては)

レザーストラップとの互換性: 3 / 5

ワードローブとの相性: 5 / 5

まとめ:

全体的に見て、ステンレスブレスが取り付けられており、ある程度の堅牢性と慎ましさを持つ3針時計が万能時計であると言えるだろう。そのようなモデルはどの価格帯にでも見つけることができる。この評価はもちろん私個人の経験と、ある程度の趣向に基づいている。そしてこのリストの中から最終的に私が選ぶ1本は、グランドセイコーだ。なぜなら、すでにエクスプローラー Iを長年着用してきているが、グランドセイコーを長い期間にわたって身に着ける機会が今までなかったからだ。もちろん、このリストに挙げることができなかった時計もある。IWC インヂュニア IW357002は、そのような優れた選択肢の一例である。

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