結婚祝いや何十年も家族に受け継がれてきた懐中時計など、時計は特別な意味を持つことが多い。また、特定の年に製造された時計も、個人的な思い入れのあるもの、そして持ち主にとって価値ある大切な1本となることが多い。このような特別な思いがこもった時計は、大抵が持ち主の人生において特別な存在である古いモデルである。そしてアンティーク/ヴィンテージの時計はもう長い事、時計ファンやコレクターの間で高い人気を誇っている。
時計はどの時点でアンティークになるのか?
多くの専門家は、時計におけるアンティーク/ヴィンテージのカテゴリーとは、1990年以前に製造され、30年以上経っているものとしている。一部のコレクターにとっては、1980年以前とされる。また、一般的にアンティークと呼ばれるものは、製造から100年経ったものを指すとされている。しかし時計の世界では、いつからアンティーク/ヴィンテージとして整理されるかについて、一般的な定義はない。
古い時計を所有するたいていのファンは、アンティーク時計において、時計の持つ特別な歴史や、色が変わったインデックスや、太陽の光で変色したベゼルなど、経年変化によるパティナが感じられることを重視している。また、アンティーク時計では、そのレトロな雰囲気とタイムレスな威力が失われないよう、細かなメンテナンスは行われないことが多い。最終的にケースの傷は時計の歴史の一部となり、その時計が過ごして来た時間という魅力を醸し出す。その魅力は、多くのアンティーク時計オーナーが高く評価するものだ。この記事では、有名ブランドの人気アンティーク時計6本を見ていきたい。もちろん、Chrono24でも入手可能なものたちだ。
1. ロレックス GMTマスター
腕時計の絶対的な定番として、ロレックス GMTマスターはしばらく前からその人気が復活を遂げている。マルチカラーの24時間表示ベゼルはとても人気があり、後継モデルとして誕生したGMTマスター IIは、ロレックスで最も人気が高いモデルの一つとなっている。Ref. 1675は、GMTマスターシリーズで初期のモデルであり、1950年代の終わりから1980年初頭まで製造された。このモデルは当時すでにペプシベゼル、自動巻ムーブメント、オイスターブレス、そして実用的なGMT機能を搭載していた。
この時代の保存状態の良い個体の大半は、ベゼルとインデックスが長い年月の間に色褪せ、過ぎ去った時代を物語っている。経年変化が見られるベゼルを持つGMTマスターはコレクターズアイテムとなっており、2024年の中古市場でも高い値段がついていることが多い。また、オリジナルの状態のままのモデルは当然高い価格が付けられており、平均で約480万円ほどで購入できる。1950年代および60年代の特にレアなモデルは、コレクターの間で最高1600万円前後という高値で取引されている。
2. オーデマ ピゲ ヴィンテージ
オーデマ ピゲの時計といえば、未来的なデザインと一流の最高峰レベルの高度な技術を備えたタイムピースを想像するだろう。これらのモデルが最高級のセグメントに位置していることは議論の余地がない。しかし、オーデマ ピゲの時計が常に未来的なデザインだったかと言えば、そうではない。Ref. Cal. 2003は、特別なアンティークのユニセックス時計で、1960年および70年代に製造されたものだ。イエローゴールド製の32mm径という小さなケースにとてもすっきりとした文字盤が組み合わさた外観は、このモデルがオーデマ ピゲの時計であることをつい忘れてしまいそうになるほどだ。
文字盤上に無駄な要素はなく、ブランド名、インデックス、”SWISS MADE” の表記、そして時針、分針のみとなっている。時計の内部には手巻き式の自社製キャリバー2003が搭載されている。オーデマ ピゲはこのムーブメントをすでに1952年に発表している。当時手巻き式で最も薄いキャリバーとされ、その記録は半世紀以上にわたり続いた。
1960年代および70年代の魅力を備えたヴィンテージのオーデマ ピゲは、スタイルと個性を持つレトロな時計を探している人に完璧な選択肢だろう。価格は、状態や付属品に応じて約50万円〜120万円となっている。
3. オメガ スピードマスター プリ・ムーンウォッチ
コレクションに欠かせない時計があるとすれば、それはオメガ スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナルだ。月面着陸を果たした初の時計であり、時計史にその名を刻んだ時計である。アンティークのムーンウォッチ Ref. 105.012-65は、手巻き式のクロノグラフで、ケース直径が42mm、スポーティーで堅牢なステンレスブレスを備えている。
このモデルは、1966年から1967年にかけてのみ製造されたもので、1969年にバズ・オルドリンが月面に降り立った時に着けていた “本物の” ムーンウォッチよりも少し古い。よく知られているスピードマスターの歴史とは別に、このレトロなバージョンには50年以上も前の時計からは想像できないほどの魅力がある。9時位置にスモールセコンドを備え、ファンにとっては「ドットオーバー90」で知られる90の数字の上に点が付いたタキメータースケールは興味深いものと言え、コレクターの心を躍らせるポイントである。それ以外の点で、スピードマスターのデザインは今日までほとんど変わっていない。そのため、この先どんなファッショントレンドにも合わせられるだろう。
Chrono24ではこのプリ・ムーンウォッチが中古で約190万円で入手できる。また、特に状態の良いモデルやフルセットで提供されているものについては、500万円以上する場合もある。
4. ロレックス サブマリーナー
サブマリーナー デイト 1680は、初めて日付機能が搭載されたサブマリーナーで、1967年から1980年頃まで製造されていた。これ以前、以降のモデルと同様に、1954年にサブマリーナーコレクションが発表された時と同じ、一目で見てわかるアイコニックなダイバーズデザインを備えている。また、ロレックスが特許を取得しているオイスター構造の40mm径のケースも特徴的だ。防水性は200m(20気圧)で、今日のアンティークウォッチでは達成できないであろう値となっている。
この期間のサブマリーナーはコレクターの間で特に人気があり、文字盤に赤いサブマリーナーの文字がある個体は特にだ。1975年頃までロレックスが製造していた “赤サブ” と呼ばれるバリエーションも該当する。ロレックスはサブマリーナー デイト 1680のほとんどすべての個体をステンレスで製造していた一方で、ケースとブレスレットに18Kイエローゴールドを使用したバリエーションも製造していた。
ほとんどすべてのロレックスウォッチと同様、1680に搭載されていたキャリバー1570および1575もCOSC認定を受けている。製造年やモデルにもよるが、約300万円〜730万円で購入可能だ。特に状態の良い個体でさらにゴールド製のものは、約1350万円〜1700万円ほどになる場合もある。
5. カルティエ パンテール
カルティエのアンティーク時計を探す際には、必ずパンテールコレクションに遭遇することだろう。1980年代のスターとして当時短期間のうちに絶対的なファッションアイコンとなったパンテールコレクションは、非常にエレガントなジュエリーウォッチだ。
Ref. W25030B6は特にその魅力から、レディースウォッチとして現代に受け継がれている。30mm径でステンレスおよびイエローゴールド製のコンビケース、ローマ数字、そして同じくコンビカラーのブレスレットを備えたパンテールのデザインには、時代を超越した魅力がある。ムーブメントには精巧なクォーツ式ムーブメントが搭載されている。
価格は37万円ほどで、この価格で時計の世界への入門にぴったりな、アンティークならではの魅力を持つレディースウォッチが手に入る。
6. ロンジン 1960 レジェントダイバー
ロンジン 1960 レジェントダイバー Ref. 7042は、20世紀という時代の魅力をこれ以上にないほど感じられる男性用アンティークウォッチだ。42mm径のステンレスケースで、インナーベゼルを備え、2時と4時位置に特徴的なリューズがある。ブラックの文字盤にはバーインデックス、3時、6時、9時、12時位置にはアラビア数字が配置されている。
搭載されているロンジンの自動巻キャリバー19ASは高精度で信頼の置ける時刻表示を保証している。このレトロな時計は、アンティーク時計に期待するすべてを備えている。価格は約140万円。
今回、Chrono24で購入可能な興味深いアンティーク時計を6本紹介した。この中に興味を持ったモデルがあれば、真贋と品質が確認された真正品を選ぶこともお忘れなく。