2024年02月06日
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アール・デコ調の美しい時計5選

Sebastian Swart
アール・デコ調の美しい時計5選

アール・デコ調の美しい時計5選

アール・デコは20世紀前半にそれまでのトレンドだったアール・ヌーヴォー様式に代わって確立された美術史上の様式である。「アール・デコ」という言葉はフランス語の「Arts Décoratifs」に由来し「装飾芸術」と訳される。特に1920年代と30年代にはアール・デコ様式が大いに流行した。

主な特徴は長方形、台形、三角形などの幾何学的なフォルムだ。この時代は全体的に明確なラインと完成されたシンメトリーが流行した。明確な構造に加え、宝石、金、プラチナなどの贅沢な素材が多く使われた。そしてこのスタイルは建築、絵画、アートデザイン、ファッション、宝飾品、そしてもちろん時計製造などの幅広い分野に影響を与えた。

この記事では、さまざまな価格帯から現行の美しいアール・デコ調時計を5本紹介したい。どれも独自の美学を持ち、他とは違う魅力がある。

1. カルティエ タンク:戦車からインスピレーションを得たデザイン

アール・デコ様式の豪華な腕時計の代表といえば、もちろんカルティエ・タンク(仏語で「戦車」の意)である。1917年に発表されたこの時計のラグの長い長方形のデザインは、第一次世界大戦時の戦車の形状の特徴を取り入れたものだ。ケースの形状に加え、傾斜したローマ数字もこの時計のデザインの特徴だ。

多くのタンク・ウォッチのもうひとつの典型的なデザイン上の特徴は、リューズの上部を飾るブルーサファイアのカボションだ。そして青焼の時針と分針が全体のデザインを引き締める。今日、カルティエはさまざまなバリエーションと素材のタンクを提供している。だが素材がゴールド、プラチナ、ステンレスのいずれであっても、タンクは一目でタンクと分かる。

Eine der ersten Luxusuhren im Stil des Art-Déco: die Cartier Tank.
いち早くアール・デコ様式を取り入れた高級時計、カルティエ タンク

タンク ルイ カルティエ・コレクションのタンクは初代に近い。その中からこの記事ではリファレンスWGTA0011を紹介したい。18Kローズゴールド製ケースで、ケースサイズは33.7mm x 25.5mm。いわゆるラージモデルと呼ばれるものだ。とはいえ、男女を問わず着用できるほどよい大きさだ。時計内部には約38時間のパワーリザーブを備えたカルティエの手巻きキャリバー1917MCが搭載されている。タンク ルイ カルティエ WGTA011の平均価格は新品同様で約190万円だ。

2. ジャガー・ルクルト レベルソ:洗練された反転ケースのアール・デコ調時計

アール・デコ様式の美しい時計5選のリストからジャガー・ルクルト レベルソを外すことはできない。そのセールスポイントはなんといっても洗練された反転ケースである。これは、同社が1930年代の初めにポロ選手専用に開発したものだ。当時、選手たちはハードな試合中にガラスが割れない頑丈な時計を求めていた。そのニーズに応えるものとして、簡単に反転させられる時計ほど適したものが他にあるだろうか。レベルソもカルティエ・タンクと同様、数十年の時を経てアール・デコ調の時計として人気が高まり、今日ではジャガー・ルクルトで最も成功したコレクションと言えるだろう。そして、ゴールド製、プラチナ製、ステンレス製、ダイヤモンドの有無など、レベルソには数え切れないほどのバージョンが存在する。

グランド・レベルソ・ウルトラスリム1931(Ref. Q2788570)は1930年代のオリジナル・レベルソに非常に近い。ジャガー・ルクルトはこのモデルを2011年のレベルソ誕生80周年記念に発表した。38mm×27.5mmのステンレス製ケースは厚さわずか7mm。手巻き式の自社製キャリバー822を搭載し、パワーリザーブは約45時間だ。時刻を表示するのは時針と分針がそれぞれ1本ずつ。黒文字盤に細い台形インデックスを配したこのモデルは極めて控えめな印象を与える。未使用品で約140万円と、ジャガー・ルクルトの機械式レベルソウォッチの世界への入門モデルに最適だ。

Der Klassiker von Jaeger-LeCoultre – Reverso Ultra Thin 1931.
ジャガー・ルクルトの定番、レベルソ・ウルトラスリム 1931

3. パテック フィリップ ゴンドーロ 7041R スモールセコンド

パテック フィリップは1993年にゴンドーロ・コレクションを発表した。ゴンドーロの時計は同社が20世紀初頭に製作していたアール・デコ様式の歴史的な時計を彷彿とさせる。長方形またはトノー型のケースが特徴で、例外なくすべてが貴金属製だ。このシリーズはパテック フィリップではおなじみの、時代を超越したエレガンスと洗練されたクラフツマンシップを表現している。

Art déco auf die vielleicht eleganteste Weise – Patek Philippe Gondolo 7041R.
最もエレガントなアール・デコ時計かもしれない。パテック フィリップ ゴンドーロ 7041R

この記事では、スモールセコンドのリファレンスナンバー7041Rを紹介したい。美しく時代を超越したこのラグジュアリーな時計は、さまざまな点で際立った存在だ。まず、四角いローズゴールド製ケースは、丸みを帯びたエッジがクッションのような輪郭で見る人の心を惹きつける。とりわけエレガントなのは繊細な仕上げのラグで、ケースに取り付けられているように見える。シルバーホワイトの文字盤にはローマ数字がプリントされている。そして、パテック フィリップはこのモデルにも宝石を惜しみなく使用している。文字盤のフランジには合計108個のダイヤモンドがセッティングされており、重さは合わせて約0.31カラットだ。

このジュエリーウォッチには手巻き式の自社製キャリバー215PSが搭載されている。時分表示に加えて、6時位置にはスモールセコンドを備え、パワーリザーブは約44時間だ。パテック フィリップの希望小売価格は544万5000円だが、一般市場では新品同様で平均約600万円で取引されている。アール・デコ様式のこの素晴らしい高級時計は、パテック フィリップの基準からすれば、ほぼお買い得品と言えるだろう。

4. フレデリック・コンスタント クラシックアールデコ

ジュネーブを拠点とする時計ブランド、フレデリック・コンスタントは、高級時計の世界では比較的若いブランドだ。1988年に設立された同社は、より多くの人々が手に入れやすい高品質な時計に特に力を入れている。といっても、特別感に欠けるということはまったくなく、過去数十年にわたり、自社製キャリバーを数多く開発してきた。2016年から日本のシチズングループの一員となっている。

フレデリック・コンスタントはクラシック アールデコ(Ref. FC-200MPW2V6B)という、市場価格が20万円以下の驚くほどコストパフォーマンスの良い魅力的なステンレス製レディースウォッチを提供している。もちろん、この価格では貴金属や宝石は望むべくもない。クラシック アールデコの30mm x 25mmケースはステンレス製で、不必要な装飾は一切ない。それにもかかわらず、あるいはそれゆえに、この時計はクラシックなエレガンスをたたえ、全体的に上質な印象を与える。シルバーのマザーオブパール文字盤もそこには一役買っている。文字盤にはローマ数字がプリントされ、中央にはスタイリッシュなギョーシェ彫りが施されている。

クラシック アールデコは磨き抜かれた機械式キャリバーを搭載していない。その代わりに、伝統あるスイスのロンダ社の非常に精密なクォーツムーブメントを採用している。メーカーは電池寿命を60ヶ月としている。

5. ジラール・ペルゴ ヴィンテージ1945

最後は再び価格のハードルがやや高めだが、特別感の高さは間違いないブランド、ジラール・ペルゴを紹介したい。スイスのラ・ショー・ド・フォンに本社を置くジラール・ペルゴのルーツは1791年までさかのぼり、1975年に発表されたロレアートによって多くの人に知られるようになった。

1945コレクションはアール・デコ調の様々な時計を取りそろえている。ヴィンテージ1945 XXL ラージデイト&ムーンフェイズ(Ref. 25882-11-121-BB6B)もそのひとつだ。

Manufakturqualität zum attraktiven Marktpreis – Girard Perregaux Vintage 1945 XXL.
マニュファクチュールの品質を魅力的な市場価格で。ジラール・ペルゴ ヴィンテージ1945 XXL

ジラール・ペルゴはこのアール・デコ調モデルの角型ケースをステンレスで製造している。ケースサイズは36.10mm x 35.25mmで、主に男性向けのモデルだ。期待に違わず、シルバーの文字盤はエレガントだ。アプライドのアラビアインデックスが時間を示し、大きな日付は12時の下に配置されている。ムーンフェイズは5時と7時の間だ。

ヴィンテージ 1945 XXL ラージデイトに搭載されているのは、自社製キャリバーGP03300だ。このムーブメントには、ジラール・ペルゴが特許を持つラージデイト表示システムが搭載されている。日付はわずか0.10mmの薄型ディスク2枚によって表示され、日付の切り替えはわずか10分の1秒以内で行われる。このキャリバーのパワーリザーブは約46時間。ケースバックはサファイアガラス製で、ムーブメントを眺めることができる。ジラール・ペルゴ1945シリーズの市場価格について言えば、今回ご紹介したモデルのメーカー希望小売価格が190万3000円なのに対し、2024年1月時点では新品同様モデルの市場価格はわずか114万円前後だ。

以上、価格帯の異なる美しいアール・デコ調時計をご紹介した。皆様が気になるのはどの1本だろうか。


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Sebastian Swart

すでに数年前からChrono24のサイトを時計の買取と販売、そして時計について調べるのに使っていました。私は子どもの頃から時計に興味を持っており…

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