ウブロか、ロレックスか。このスイス発の2つの高級時計ブランドを比較することは、非常に不平等なようにも聞こえる。ロレックスが1905年以来、そのアイコニックな時計で歴史を刻んできたのに対し、ウブロは1980年以来、賛否両論なデザインの時計でその存在感を示してきた。両ブランドの違いは、デザインだけでなく、技術レベルにも見られる。たとえば、ロレックスがマニュファクチュールとしての確固たる地位を築いてきたのに対し、ウブロは汎用ムーブメントの利用と自社製ムーブメント製造の中間を取っている。しかし、ロレックスの多くのキャリバーとは異なり、ウブロの自社製キャリバーにはムーンフェイズやトゥールビヨンなどの複雑機構も搭載されている。この記事では、ロレックスとウブロという異なる2ブランドについて比較していきたい。
歴史
ウブロは1980年に創業した若いブランドだ。イタリアの企業家カルロ・クロッコがブランドを設立し、同年に世界初の天然ゴムのラバーストラップ付きゴールドウォッチを発表した。当初は「MDM ジュネーブ」の名で運営され、ウブロという名称は特定のモデルに付けられたものだった。2004年、クロッコはブランパンやオメガを率いた実力者である、ジャン=クロード・ビバーをウブロのCEOとして迎えることに成功した。翌年ウブロはビッグ・バンコレクションを発表し、数々の賞を受賞。2008年にはタグ・ホイヤー、ゼニス、ブルガリなどのブランドも所属する高級ファッション業界の複合企業、LVMH モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトンに買収された。
一方、伝統あるロレックスは、1905年にドイツ、クルムバッハ出身の実業家、ハンス・ウイルスドルフとその義弟アルフレッド・デイヴィスによって、スイス製ムーブメントの販売会社としてロンドンに設立された。その後、1908年にロレックスという名前が商標登録された。1919年には本社をジュネーブに移し、現在に至っている。特に1950年代に発表されたエクスプローラー、GMTマスター、サブマリーナーなどの有名なモデルは、ロレックスをスタイリッシュで機能性の高い時計ブランドにする上で重要な役割を果たした。1960年のハンス・ウイルスドルフの死後、同ブランドは彼が自ら設立した財団の所有なり、現在では世界中で約1万4000人が従事している。
ブランドイメージ
ウブロは、ラグジュアリー、技術革新、そしてユニークなデザインというイメージを持つ。伝統的な時計製造技術と現代的な素材を融合させ、他に類を見ない独特のデザインを生み出している。また、大きく、人目を引くデザインや、スポーツイベントやアーティストとのパートナーシップで、現代的でダイナミックなブランドと言える。伝統と革新を組み合わせたそのスタイルは、個性や名声を重んじる、こだわりのある特別な顧客層を捉えている。ロレックスはと言えば、ラグジュアリー、精度、特別感というイメージが世界中で結びつけられている。その高いレベルの仕上げと信頼性から、ステータスシンボルとしても地位を確立してきた。同ブランドの時計が持つタイムレスなイメージは、卓越した技術と、何十年にわたり継承されてきた、スタイリッシュでクラシックなデザインの融合によるものだ。
デザインと品質
ウブロの時計は、伝統的な時計製造技術と現代的な要素を融合させた革新的なデザインをしており、大きめで印象的なケースと、セラミック、チタン、カーボンといった従来の時計にない新しい素材の使用を特徴としている。そのため、軽く耐久性に優れている。ウブロらしさを象徴するのが、H型の装飾ビスが配置されたベゼルで、そのデザインは、船の舷窓をインスピレーションとしている。自社製ムーブメントに加え、スイスのムーブメントメーカーETA社製やセリタ社製の基本キャリバーをベースにしたムーブメントも使用されている。一方、ロレックスのデザインはアイコンとして広く認識されており、高級時計業界に多大な影響を与えたものだ。創業以来、時代を超えて愛されるデザインを開発し、今日でもスタイルを決めるものとなっている。デイデイト、サブマリーナー、エクスプローラー、GMTマスター II、デイトナなどのモデルは、歴史に名を残すだけでなく、今日までロレックスの特徴でもある、クラシックかつ機能的なデザインの基準を作り続けてきた。品質に関しては、非常に優れており、大部分が機械製造されている。これはケースやブレスレットだけでなく、自社製の機械式ムーブメントにも当てはまる。また、ロレックスはトリプロックリューズやパラクロムヒゲゼンマイを含む、ケースやムーブメントの部品に関するさまざまな特許を取得している。
人気モデル
ウブロの時計で最も人気があるのは、2005年に初めて発表されたビッグ・バンコレクションだろう。このコレクションの特徴は、トゥールビヨン、GMT、ミニッツリピーター、永久カレンダーを備えた自社製ムーブメントを搭載していることだ。また、ビッグ・バン MP-11のように、最長14日間という非常に長いパワーリザーブを備えたモデルもある。ケース径は最大45mmで、腕の上で特別な存在感を放つ。ケース素材にはマジックゴールド、キングゴールド、カーボン、サファイアを使用。そしてクラシック・フュージョンコレクションの時計も、同ブランドの中でも人気の高いモデルのひとつだ。ビッグ・バンよりもはるかに控えめなデザインだが、定番の舷窓のデザインも備えている。クラシック・フュージョン トゥールビヨン カテドラル ミニッツリピーターやクラシック・フュージョン オーリンスキー トゥールビヨンなどのトップモデルは、時計製造におけるウブロの専門性を証明している。また、スピリット オブ ビッグ・バンでは、トノー型ウォッチを提供し、ビッグ・バンコレクションにも見られるように、ブレスレットが一体化されているのが特徴的だ。スピリット オブ ビッグ・バンの最上位モデルは、スケルトン仕様の文字盤を備え、トゥールビヨンまたはムーンフェイズを搭載している。
ロレックス:すべてのモデルがアイコンモデル
ロレックスのラインアップには、機能面でもデザイン面でも絶大な人気を誇るモデルが数多く含まれている。デイトジャストや、大統領の時計としても知られるデイデイトは、同ブランドを代表するエレガントな時計だ。サブマリーナーは伝説的なスポーツモデルとされ、1954年の登場以来、ダイバーズウォッチの中で最も重要なアイコンとなっている。ダイバーズウォッチというカテゴリーにおけるデザインと機能のスタンダートを確立し、スタイルを象徴するモデルとして位置づけられている。そのデザインは世界中で人気となり、多くのメーカーが参考にしたり、独自の解釈を加えてたりしてきた。同様のストーリーが、GMTマスターや後のGMTマスター IIについても語ることができ、GMTマスターは1955年にパンアメリカン航空のパイロットのためにデザインされたもので、現在GMT機能を備えた最も有名な時計のひとつとなっている。そして世界で最も人気のあるクロノグラフのひとつがコスモグラフ デイトナだ。この時計は特にモータースポーツとのつながりで知られており、伝説のハリウッドスター、ポール・ニューマンによってその名声を確立した。
資産価値
ロレックスの時計はウブロの時計よりもはるかに人気があるため、両ブランドの資産価値についてはかなり異なる。ロレックスは、非常に安定した価値と、価値上昇の高い可能性で知られており、特にステンレス製のスポーツモデルに反映されている。比較的若いブランドであり、賛否両論なデザインのウブロは、定価を支払っても良いが、時計を投機目的で捉えることは少ない、ニッチな顧客層に支持されている。その結果、ウブロのほとんどのモデルは、店を出たとたんに価値が下がってしまう。例外は、ウブロがさまざまなアーティストとコラボレーションする限定特別モデルで、これらのモデルは二次流通市場においてより良い価値がつく。全体的に、ロレックスはウブロよりもかなり価値が安定している。
まとめ
ウブロとロレックスのブランド哲学は根本的に異なる。比較的若いブランドであるウブロが実験的なデザインと異素材の組み合わせに重点を置いているのに対して、ロレックスは何十年もの間、伝統的なアイコンモデルをラインアップとし、わずかに変更を加えるだけというアプローチをしてきた。ムーブメントに関して言えば、ウブロはロレックスの自社製キャリバーとは異なり、ムーンフェイズやトゥールビヨンといったコンプリケーションを搭載しているため、機能の点では優位に立っている。しかし、安価な価格帯のモデルでは、スイスのムーブメントメーカーによって製造された汎用ムーブメントをベースに、自社で改良を加えたものが搭載されている。そして、資産価値や価格の上昇に関しては、ロレックスを超えるのはほんの一握りのブランドだけだ。資産価値、価値上昇が重要でなければ、自身の好みで時計を選びたい。どちらのブランドも優れた品質を提供している。