2019年01月30日
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エルメスの輝きと創造力: アルソー ルゥール ドゥ ラ リュンヌとギャロップ ドゥ エルメス

Jorg Weppelink
エルメスの輝きと創造力: アルソー ルゥール ドゥ ラ リュンヌとギャロップ ドゥ エルメス

エルメスの輝きと創造力: アルソー ルゥール ドゥ ラ リュンヌとギャロップ ドゥ エルメス

ジュエリーと時計について知り尽くしたメーカーが生み出す、創造的な時計の新しい潮流を目の当たりにすることは、非常に刺激的な体験であった。ブルガリエルメスのようなブランドは伝統的なデザインの常識にとらわれておらず、ジュエリーにおける実践と同様に、全く新しい形を生み出す自由さを備えているようだ。SIHH 2019では、エルメス アルソー ルゥール ドゥ ラ リュンヌのデビューなど、誰もがこのブランドの新作の話題で盛り上がっていた。この時計は月の満ち欠けの表現を全く新しいレベルに昇華させた。また、エルメスによるもう1つの重要な発表は、同社の新しいレディースコレクションであるギャロップ ドゥ エルメスであった。これらの発表は、エルメスがいかに創造力と時計製造技術を結びつけているかを示している。

エルメス アルソー ルゥール ドゥ ラ リュンヌ
エルメス アルソー ルゥール ドゥ ラ リュンヌ 写真: Joël Von Allmen

エルメス アルソー ルゥール ドゥ ラ リュンヌ

エルメス アルソー ルゥール ドゥ ラ リュンヌは、私たちがムーンフェイズ表示を搭載した時計について知っているすべてを取り込み、そしてその常識を覆す。通常、ムーンフェイズは追加機能として時計に組み込まれるが、この時計ではこの機能こそがデザインの中心となっている。アルソー ルゥール ドゥ ラ リュンヌには、43mmのホワイトゴールド製ケースを備えた2つのモデルがある。両モデルの違いは、グレーラッカー塗装のディスクを持つグレーのメテオライト文字盤と、ホワイトラッカー塗装のディスクを持つダークブルーのアベンチュリン文字盤だ。文字盤の上にはそれぞれ北半球と南半球から見える2つの月が描かれており、マザー・オブ・パールで描かれた月の上を2つのディスクが互いに周回しあっている。

エルメス アルソー ルゥール ドゥ ラ リュンヌ
エルメス アルソー ルゥール ドゥ ラ リュンヌ 写真: Joël Von Allmen

1つの可動式ダイアルは時間と分を表示し、もう1つのダイアルは現在の日付を示している。一見、傾斜したフォントのアラビア数字が、この静謐な雰囲気を持つ文字盤に合わないように見えるかもしれないが、それによって時計に加味されている個性をすぐに魅力的に感じるようになるだろう。ダイアルは59日間で一周し、ディスクが月を覆うことで両半球から見た現在の月の満ち欠けを表現している。2つの月はそれぞれ異なるデザインを持ち、上の月にはディミトリ・リバルチェンコのデザインによるペガサスのシルエットが、下の月には実際の月面が描かれている。

この時計のムーブメントはエルメス キャリバーH1837で、特許を取得した独自開発モジュールが付けられており、エルメスはこれを「ルゥール ドゥラリュンヌ」と呼んでいる。このモジュールは117の異なる部品から構成されているが、そのサイズは厚さ4.2mm、直径38mmしかない。メテオライト文字盤搭載のモデルにはグラファイトグレーのマットなアリゲーターストラップが付けられており、アベンチュリン文字盤搭載のモデルにはアビスブルーのマットなアリゲーターストラップが合わせられている。両モデルともに100本に限定されているため、完売するのは時間の問題だろう。エルメス アルソー ルゥール ドゥ ラ リュンヌは、エルメスの驚くべきクラフトマンシップを示す本当に素晴らしいタイムピースであり、SIHH 2019におけるベストウォッチの1つであることは間違いない。

エルメス ギャロップ ドゥ エルメス
エルメス ギャロップ ドゥ エルメス 写真: Calitho

エルメス ギャロップ ドゥ エルメス

SIHH 2019におけるエルメスのもう1つの発表は、エルメス ギャロップ ドゥ エルメスと呼ばれる同社の新しいレディースコレクションであった。デザイナーのイニ・アーチボンは、とりわけ乗馬に関わるエルメスの豊かな歴史をこのコレクションのインスピレーションとして使用した。同社の創始者であるティエリ・エルメスは当初、馬具・馬勒メーカーとして働いていた。豊かな伝統を持つ多くの高級ブランドはクラフトマンシップに基づく歴史と実際的な問題を解決する能力を持っているが、エルメスもこの例外ではない。エルメスの初期製品は有名な賞を獲得し、それによって品質に対する高い評判を得ることとなった。そして、この伝統は現在まで受け継がれている。

アーチボンはエルメス・コンセルヴァトワールでエルメスの豊かな歴史と馬具について研究した。そして、ギャロップ ドゥ エルメスによって同ブランドの伝統的デザインに新しい解釈を与えた。アーチボンはまず時計ケースのための基本形を決め、そこから時計の細かい部分に取り掛かった。そこでは、光がどのように時計の表面で反射し、できる限り快適な着け心地をどのように作り出すかが問題であった。そして、その最終的な結果として現代女性の動きを表す時計が生まれた。

エルメス ギャロップ ドゥ エルメス
エルメス ギャロップ ドゥ エルメス写真: Joël Von Allmen

この時計の注目すべき特徴はリューズの位置で、ケースの右側ではなく6時位置の下側に配置されている。そして、この位置によって上から下へとスムーズに流れる調和したデザインが生み出されている。この時計の全4モデルは、ケースの形に合わせて大きさが異なるユニークにデザインされたアラビア数字と、シルバーホワイトの文字盤を搭載。ケース素材にはステンレスとピンクゴールドが用意されており、レザーストラップを使用して着用される。また、各エディションはダイヤモンド装飾付きと装飾なしのモデルから選ぶことが可能だ。

全体的に見て、この時計の素晴らしい成果は、新しく斬新なデザインであるにも拘わらず非常に親しみのある印象を与えるところにある。アーチボンはエルメスの新コレクションの開発において、同ブランドの豊かな歴史に完璧にマッチする素晴らしい仕事をした。ギャロップ ドゥ エルメスに機械式ムーブメントが搭載されていれば、さらに魅力的な時計になったことだろう。

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記者紹介

Jorg Weppelink

こんにちは、ヨルグです。2016年からChrono24で記者として執筆しています。しかし、Chrono24との関係はそれ以前からあって、時計好きになったのは2003年頃からです。私の友人 …

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