2022年09月08日
 9 分

おすすめクロノグラフ:エントリークラスからオートオルロジュリーまで

Tim Breining
Top-3-Chronographen-für-jedes-Budget-2-1

エントリークラスから気の遠くなるような値段のオートオルロジュリーまで、市場には数え切れないほどのクロノグラフが存在する。しかし、どの価格帯を見渡しても、選択肢が多すぎて選ぶのは簡単ではない。そのため、本記事ではまったく異なる価格帯から、見た目にも技術的にも優れたクロノグラフを3本ご紹介する。この3本はこれ以上ないくらい違うが、1つだけ共通点がある。それは決して平均的で平凡な時計ではないということだ。 

ティソ PRX クロノグラフ 高品質な技術をフェアな価格で 

多くのマイクロブランドがすでに小規模で成功していることを、スウォッチグループのブランドティソ(TISSOT)は、PRXで大成功させた。このコレクションのモデルによって、誰もがロイヤルオークやノーチラスのスタイルのステンレスウォッチを手に入れることができるようになったのだ。レトロな美しさが好みなら、PRXの3針コレクションできっとお気に入りの1本を見つけることができるだろう。35mmや40mm、単素材やコンビモデルなど、さまざまなバリエーションが用意されている。 

時計の機能性やスポーティーな外観を重視しているならば、ティソ PRX クロノグラフをチェックしてみるべきだ。30万円以下の機械式クロノグラフはいくつもあるが、これほどまでに多くの要求を満たしてくれるモデルは多くない。 

Tissot PRX Chronograph, Referenz T137.427.11.041.00
ティソ PRX クロノグラフ Ref.T137.427.11.041.00

ムーブメントはA05.H31。インダイヤルの配置から、これが人気のバルジュー7753をベースにしていることがわかる。ETAは4Hzの振動数を下げることなく、香箱を調整することでこのムーブメントのパワーリザーブを現代的な60時間に高めている。  

防水性能は100m(10気圧)で十分すぎるほどだ。密閉構造のリューズとプッシュボタンはねじ込み式ではないため、PRX クロノグラフは手入れが楽で日常使いしやすい時計となっている。  

1970年代に作られた有名なアイコンのデザインコードも巧みに取り入れている。コマが細くなっていく一体型メタルブレスレットと角張ったプッシュボタンは、この価格帯におけるクロノグラフライバル機から一線を画している。3針モデルのエントリークラスではすでによく似たスポーツウォッチが提供されているが、クロノグラフではまだ驚くほど少ない。  

ティソ PRX クロノグラフは70年代スタイルのクロノグラフをお探しで、42mmのケース径や少ないカラーバリエーション(ブルーとホワイト)に抵抗がない方には非常におすすめのモデルだ。  

グランドセイコー SBGC251 スプリングドライブムーブメントを搭載したGMTクロノグラフ  

キャリバー9SA5(自動巻き)と9RA2(スプリングドライブ)のリリースによって、グランドセイコー(Grand Seiko)は新時代の幕開けを告げた。その後間もなくして、セイコーは新しいコレクションおよびデザイン方針「エボリューション9」によって伝統的デザイン哲学における進化の新たな段階を発表した。 

エボリューション9 コレクションには現代的な印象を与えるモデルからスポーティーなモデルまでラインアップされており、そのほとんどは自社製の自動巻きムーブメントとスプリングドライブムーブメントの最新世代によって駆動している。

グランドセイコーはエボリューション9のデザイン方針に3つの基本的原理を挙げている。 

1つ目の原理は「審美性の進化」。グランドセイコー、特にこのブランドの時計の表面仕上げの品質を知っている人は、これが何のことなのかお分かりだろう。歪みのない鏡面仕上げに精緻なサテン仕上げを組み合わせることで、光と影の共演を実現している。 

2つ目の原理は「視認性の進化」。さらにめりはりを高めた形状に研磨された針によって、視認性が高められている。エボリューション9 コレクションを一目見れば、実際にこの針がグランドセイコーの定番モデルに搭載されている通常のドフィーヌ針から際立っていることが分かる。 

3つ目の原理は「装着性の進化」。ケースの重心が下げられ、ラグ幅が広げられている。ラグ幅の拡大はグランドセイコーファンにとって気になる点である。なぜなら、このブランドのメタルブレスレットはその価格帯に見合わず、時計の他の部分にふさわしくないと批判されていたからだ。 

エボリューション9 コレクションから筆者がおすすめしたいのはGMTクロノグラフ Ref.SBGC251である。45mmのケース径はたしかに巨大であるかもしれない。それにムーブメントもリリースからかなりの年数が経っているが、これはグランドセイコーがスプリングドライブクロノグラフムーブメントの最新世代を発表しない限り変わらない。それまで、微調整が施された9R96は別として、キャリバー9R86はスプリングドライブ・テクノロジーを備えた唯一のクロノグラフキャリバーなのである。 

Grand Seiko SBGC251
グランドセイコー SBGC251

72時間のパワーリザーブ、クォーツ時計と同等の精度、バッテリーや電池は非搭載、コラムホイール方式、垂直クラッチ方式。この時計には本当に非の打ち所がない。クロノグラフでしか効果を発揮しないスプリングドライブ・テクノロジーの特別なメリットもある。スイープ運針のおかげで、1秒未満の精度でも難なく針を停止させることができるのだ。他の時計ではハイビート脱進機と多大な技術的努力を要する機能を、SBGC251は備えているのである。 

この時計がどれだけ技術的に精巧であるとしても、その巨大なサイズが誰の手首にも合うわけではないということは承知している。それでも、グランドセイコーの昔のクロノグラフの購入を検討したことがあり、SBGC203などの定番リファレンスは興味深いが外観が無骨すぎると感じた方にとって、SBGC251は有望なコレクション候補であるだろう。その場合は100万円を超える予算を用意しておかなくてはいけない。  

シンガー リイマジン トラック 1 現代において最も革新的なクロノグラフの1つ 

2017年、ロサンゼルスに本社を置く古いポルシェのレストアとモディファイを専門とする会社が時計を発表した。その評価はというと、非常に高い。というのも、シンガー(Singer) リイマジン トラック 1はその独特なデザインだけでなく、市場でおそらく最も革新的で技術的に複雑なクロノグラフムーブメントによって時計好きの心を引きつけているのだ。 

Singer Reimagined Track 1 Flamboyant Red Edition
シンガー リイマジン トラック 1 フランボワイヤン レッド エディション

この驚嘆すべき技術の成果はムーブメントの開発・製造メーカー「アジェノー社」が設計したもの。アジェノー社は「アジェングラフ」と呼ばれるクロノグラフムーブメントを開発するまで、モジュールの開発メーカーとして知られていた。しかし、時計業界における相次ぐ垂直統合によって、この市場は消滅の危機に瀕していた。そこで、「アジェングラフ」では密かにすべての表示が文字盤の中央を起点に回転するクロノグラフの巨大なプロジェクトが進められていた。このプロジェクトにおいて妥協は一切なく、アジェノー社の古い特許や無数の新しい特許を基にした多くの巧妙なソリューションがこの大作に駆使された。   

同じ頃、シンガー社において自社の時計を手掛けたいという望みが生まれた。そして、それは「門外漢」による中途半端なノベルティ製品であってはならなかった。そのアイデアはシンガー社の創業者、ロブ・ディキンソン氏と業界のベテラン、マルコ・ボラクチーノ氏とのやりとりから生まれたものであった。偶然にも、ボラクチーノ氏の頭にはアジェノー社がちょうど取り組んでいたのと同じような表示を備えた時計が浮かんでいた。同氏がアジェノー社に連絡を取った時、当時の社長、ジャン・マルク・ヴィダレッシュ氏はにわかには信じられなかった。長年にわたって取り組んできたムーブメントを使用するための完璧なパートナーが見つかったのである。 

しかし、トラック 1およびアジェングラフの何が傑出しているのだろうか? 

まず、この時計は妥協のないクロノグラフであり、その3つのセンター針のすべてがクロノグラフ機能に使用されている。現在時刻は文字盤外周部の6時位置で回転ディスクによって表示され、そこに固定された小さな針が指し示す数字によって読み取ることができる。 

さらに面白いのが、この3本のクロノグラフ針とそれを駆動している技術である。 

アジェングラフの最初の秘密は文字盤の裏に隠されている。そこに自動巻きローターが取り付けられており、シースルーバックからは見えないようになっている。そして、すべての針は大きなローター軸受に通されている。これは単なる技術的ギミックではなく、それによって美しく仕上げられた自慢のムーブメントの背面全体が見えるようになっているのだ。  

Inner workings of the Singer Reimagined Track 1
シンガー リイマジン トラック 1の内部機構

3本の同軸針を持つ時計では正確な視認性を確保することが不可欠であり、それは1本ではなく2本のステップ運針するジャンピングアワーとジャンピングミニッツによって実現されている。カムディスクはそのつどバネに長時間負荷をかけ、それがムーブメントの均等なエネルギー放出を確保している。 

針飛びを起こしにくく、一般的に現在のクロノグラフのほとんどに採用されており、技術的に最適であると見なされている垂直クラッチの代わりに、アジェノー社は独自のソリューションを使用している。それは、垂直クラッチのように摩擦車によって動力を伝達する水平クラッチだ。さらに塗布されているコーティングに加えて安全歯車も搭載されており、摩擦接触を一瞬でも妨げるような衝撃があったとしても針飛びを防いでくれる。 

まだ他にもこの傑作時計の技術的革新を列挙することはできるが、シンガー リイマジン トラック 1において最高の要求と完璧な出来栄えが一体となっていることは、すでにお分かりいただけたと思う。 

シンガー社はポルシェのデザインを取り入れたシンプルなバルジュークロノグラフを作ることもできただろうし、それを悪く思う人もいなかっただろう。しかし、ディキンソン氏、ボラクチーノ氏、ヴィダレッシュ氏、および彼らのスタッフが最終的に作り上げたものは、見事なものであった。  

今までにリリースされたエディションの新品価格は500万円から1000万円の間にある。Chrono24では中古の品を550万円以下で手に入れることができる。 


記者紹介

Tim Breining

2014年に工学部の学生であった際に、時計への興味を見いだしました。初めはちょっと興味があった時計というテーマは、徐々に情熱に変わっていきました。Chrono24 …

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