ここ数年のカルティエの人気ぶりは疑う余地がないだろう。カルティエのジュエリーや腕時計がSNSのタイムラインに頻繁に登場し、Chrono24でもその勢いははっきりと見て取れる。2024年から2025年初頭の当社データを見ると、カルティエはChrono24のマーケットプレイスで売上上位5ブランドとして、ロレックスやオメガといった名だたるブランドと肩を並べているわけだが、それには確かな理由がある。なにしろ、カルティエの作品はどれも、それぞれ息を呑むほど美しいのだ。選びきれないほどたくさんの魅力があるが、我々がカルティエの時計とこのブランドそのものを愛する理由を、ここでは5つに絞ってご紹介しよう。
1. 伝説のはじまり
ルイ・カルティエとアルベルト・サントス=デュモンが1901年に初めて出会った時には、後に二人で伝説を築き上げることになろうとは予想もしていなかった。ブラジル出身の航空界のパイオニア、サントス=デュモンは、ある日友人のカルティエに、飛行中に懐中時計で時間を確認するのがいかに難しいかを話して聞かせた。この話にルイ・カルティエの発明家魂がかき立てられ、3年後の1904年にアルベルトに世界初とも言われる男性用腕時計を贈った。これがカルティエ サントス誕生の瞬間である。それまで主に女性向けの装飾品とされていた腕時計のイメージはこれで一変した。見た目のデザインはほとんど変わることなく、サントスは今もカルティエ コレクションの主力製品である。

2. 休めば体に錆がつく
カルティエが長い歴史と名声に安住していると思うなら、それは大きな誤解である。たしかにメゾンは、ブランドの代名詞でもあり人気の高いクラシックなアールデコのデザインを今なお大切にしている。しかし、それは技術、素材、そしてサヴォアフェール(匠の技)の面で絶えず進化を続けている事実と矛盾しない。たとえば最新のカルティエ サントスのブレスレットは、「クイックスイッチ」交換システムと「スマートリンク」サイズ調整システムが特に高く評価されている。日常生活でブレスレットの交換や長さの調整が簡単にでき、何よりもツールを使う必要がない。素材面でも多様な可能性に目を向けている。ゴールド、ステンレス、プラチナといったモデルが引き続きブランドのイメージと深く結びついている一方で、近年はDLCコーティングのモデルで、よりモダンな外観を打ち出そうとしているし、限定モデルのロトンド ドゥ カルティエ(Ref. WHRO0064)にはチタン製ケースが採用されている。カルティエが今後どこまで進化していくのか楽しみだが、ひとつ確かなことは、これからも変わらず、スタイリッシュでクラシック、そしてエレガントであり続けるということだ。

3. ラ パンテール:強い女性の象徴
カルティエのウェブサイトを開けばすぐに何度も目にする存在。それがパンテールである。20世紀初頭より、しなやかで希少なこの猛獣、パンサーはメゾンのデザイナーたちやジャンヌ・トゥーサン自身にとって、インスピレーションの源であった。1933年、ルイ・カルティエは当時46歳だった彼女をカルティエの新しいクリエイティブ・ディレクターに任命したが、当時、女性がそのような地位に就くことは極めて異例なことだった。彼女は尽きることのないエネルギーと行動力で、パンテール ドゥ カルティエの開発を推し進め、「ラ パンテール(女豹)」の愛称でも呼ばれるようになった。トゥーサンは斬新な時計デザインの象徴であり、また、ジュエリー業界での活躍により、強く自立した女性像そのものともされている。この精神を世界へ広めるべく、カルティエは2006年、マッキンゼー・アンド・カンパニーおよびINSEADビジネススクールと共に「カルティエ ウーマンズ イニシアチブ」を設立した。この賞はさまざまな分野で活動し、世界の課題解決に貢献しながら、それぞれのアプローチで世界を良い方向へと動かす女性主導の企業を対象としている。ヨーロッパ、北米、ラテンアメリカ、中東および北アフリカ、サハラ以南のアフリカ、東アジア、南アジア、オセアニアの各地域から毎年それぞれ3名のファイナリストを審査員が選出し、その中から各地域の受賞者を選び、「カルティエ ウーマンズ イニシアチブ アワード」を授与している。この場を借りて、すべての受賞者たちに心からの祝意を送りたい。そして、これを知って我々のカルティエへの愛はさらに深まった。

4. 社会貢献と持続可能性への取り組み
クラッシュ ドゥ カルティエ イベントの慈善的精神については以前にも触れたが、カルティエ フィランソロピー(旧カルティエ慈善財団)の存在には遠く及ばない。この非営利財団は、一人ひとりがポテンシャルを発揮できる世界を実現するという理念のもとに活動しており、目の前のプロジェクトに専念できるよう、メゾン カルティエとは完全に独立して運営されている。財団の主要な活動は、発展途上国における最低限の生活必需サービスの整備である。そのほかにも、ジェンダー平等、特に暴力被害にあった女性の社会的・経済的成長の促進、持続可能な生態系および生活基盤への取り組み、危機への備えや防災対策といった活動を主要な柱としている。こうした取り組みにより、カルティエは並々ならぬ社会貢献を果たしており、他の企業が見習うべき模範とも言えるだろう。この意義ある活動に、そしてカルティエに、心から敬意を表したい。それでもまだ足りないかのように、カルティエは社内においても企業倫理や環境・社会に関する基準の順守を徹底している。汚職やマネーロンダリングに対するゼロトレランス方針、誠実かつ透明性のある事業運営、そして素材、特にダイヤモンドの調達に関する厳格なガイドラインが、カルティエの基本原則として掲げられている。また、金や宝石の採掘現場における児童労働や強制労働は一切容認されていない。製造工程でも、どの作業ステップでエネルギー効率をあげられるか、また環境保護をどの程度まで改善できるかを細かく監視している。このように、持続可能性の面でも先進的な姿勢を示しており、高級時計ブランドとしての魅力をさらに高めている。
5. 細やかなディテールと個性あふれるデザイン
メゾン カルティエのもつ他にない特徴の一つは、間違いなくカボションである。カットされ研磨された宝石はカルティエのほぼすべてのモデルとコレクションに使用されており、カルティエ サントスなどの実用性重視のモデルにもエレガントな雰囲気を与えている。時計のリューズ部分に多くの場合はブルーサファイアが埋め込まれており、同社は指輪をはじめとする他のジュエリーにもこの宝石を使用している。ただ興味深いことに、ブルーサファイアはカルティエのカボションに最も多く使われる宝石ではあるものの、唯一の石というわけではない。青い宝石の他に、稀に緑のサファイアや赤いルビーが使用されることもある。

仮にカルティエのどのコレクションにも100%気に入るものが見つからなかったとしても、落胆する必要はない。カルティエには特注品のみを扱う専門部門がある。顧客の特別な要望とカルティエの金細工職人の比類なきサヴォアフェールが一つになる時、唯一無二の芸術作品が生まれる。すでに愛用のジュエリーをお持ちで、手入れや修理を希望する場合も、カルティエの専門家がサポートしてくれる。特別なジュエリーの手入れや製作をカルティエに依頼することは、まさに選ばれし者のコミュニティへの仲間入りを意味する。例えば、パティアラのマハラジャ、サー・ブピンダー・シンは、儀式用のネックレスの修復をカルティエに依頼したという。