カルティエ タンクとパンテールは、伝統あるマニュファクチュールであるカルティエで最も有名で人気のある時計だ。どちらも、ブランドが誇る普遍のエレガンスと高いクラフツマンシップを体現しているが、デザインやスタイル、機能性は異なる。タンクがクラシカルなレクタンギュラーケースとミニマルな美しさを持つ時計なのに対し、パンテールは印象的なスクエアデザインと流れるようなブレスレットを備えた遊び心あふれるジュエリーウォッチだ。今回は、この2つのモデルを比較し、それぞれの特徴や共通点について紹介したい。
歴史
2つのモデルは、全く違う歴史を持つ。タンクが発表されたのは1917年で、そのインスピレーションとなったのは第一次世界大戦時の英国の戦車だ。ルイ・カルティエによってデザインされたこのモデルは、1919年に商品化され、初の腕時計であるサントスとともに成功を収めた。そのデザインは、100年以上にわたり受け継がれ、タンク ルイ カルティエやタンク アメリカン、タンク フランセーズなど、さまざまなバージョンが現在も販売されている。
一方、パンテールは、一体型ブレスレットを持つジュエリーウォッチとして1980年代に登場した。このモデルのインスピレーションであり、由来となったのは、エレガンスと力強さの象徴であるパンテール(豹)であり、今日でもカルティエのジュエリーやウォッチに繰り返し登場している。タンクと比べるとパンテールはバリエーションが圧倒的に少なく、2000年代には一時的に生産が中止されたこともあったが、2017年に復活して以来、モダンラグジュアリーの象徴となっている。
デザインとスタイル
カルティエを象徴するこの2つのモデルの第一印象は全く異なる。戦車をイメージしたサイドの2本のラインが特徴のタンクは、時代を超越するエレガンスの代名詞であり、余計な要素を削ぎ落としたクリアなラインとフォルムで際立っている。レザーストラップと組み合わせることで、クラシックなドレスウォッチらしさがさらに強調される。最新のモデルでは、自身でストラップ交換が可能となり、簡単に時計の印象を変えることもできる。タンクは様々な形とサイズで多様に展開されているため、男女を問わず魅力的な選択肢と言えるだろう。一方、パンテールは丸みを帯びたスクエア型ケースで、全体的に少し柔らかい印象を持つ。ケースに見られる小さなビスは装飾用のものだ。パンテールの特徴は、5連リンクのしなやかなメタルブレスレットで、手首になめらかにフィットする。正真正銘のジュエリーウォッチであり、遊び心を効かせたエレガントなスタイルが印象的だ。またその小ささから、特に女性から高い支持を得ている。しかし最近では、少し大きめのサイズも登場しており、より幅広い顧客層へとアプローチがされている。第一印象は異なる2つだが、よく見てみると実は共通点がある。文字盤のローマ数字や繊細なレイルウェイミニッツトラックなど、どちらもカルティエのDNAを引き継いでいる。また剣型の針も、リューズにあしらわれたブルーのカボションと同様に共通している部分だ。2つのモデルは紛れもなくカルティエの時計であり、その卓越したデザイン哲学を体現している。
機能と技術
機能と技術もまた、2つのモデルの特徴をよく反映している。カルティエ タンクでは、さまざまなムーブメントが使用されている。小さめのモデルにはクォーツムーブメントが搭載されることが多く、大きめのモデルには自動巻きムーブメントが搭載されている。また、タンク マストでは、光発電のソーラービート™️ムーブメントを搭載したバージョンもある。ほとんどのモデルはシンプルな時刻表示のみだが、タンク マスト XLのように日付表示が付いたものや、タンク アメリカンのようにムーンフェイズやクロノグラフを搭載したモデルもある。そしてパンテールでは、ジュエリーという側面とその美しさに重点が置かれている。その大きさから、クォーツムーブメントが採用され、シンプルな時刻表示がメインだ。ケースについては、どちらも様々な素材で展開され、タンクは、ステンレス、イエローゴールド、ピンクゴールド、ホワイトゴールドから選ぶことができる。また、コンビモデルやダイヤモンドをあしらったモデルもある。パンテールも同様で、ジュエリーウォッチらしくタンクよりも宝石がセッティングされたモデルを数多く展開している。防水性については、両モデルともドレスウォッチとして設計されているため、低いことを理解しておきたい。
価格設定と資産価値
タンクとパンテールの価格と価格推移を比較すると、両者には相違点がいくつかあるが、同時に類似点も多くある。タンクの場合、特にクォーツタイプは手の届きやすい価格から、時計ビギナーにとって魅力的な選択肢となっている。また、クォーツタイプのタンク マストの人気モデルや、機械式のタンク マスト XLもそこまで高価ではない。しかし、ゴールド製となると価格は一気に上がり、100万円以上となる。そしてパンテールの場合、タンクの同等のモデルよりも若干価格は高くなる傾向にある。ゴールド製モデルを選択した場合は、タンクと違いストラップもレザー製ではなく同じくゴールド製ブレスレットとなるため、価格はさらに上昇する。価格推移という点については、タンクが有利と言える。アイコニックな定番モデルとして市場で確固たる地位を確立しているタンクは、長年にわたってその価値を保ち続けている。特にゴールド製のアンティークモデルは、その素材ゆえに価値が上がることもある。一方、パンテールは2017年の復刻以来、その価値は上昇し続け、1980年代のアンティークモデルも同様に価値が上昇している。しかし、パンテールが常に上昇傾向にあるとしても、タンクの上昇率には及ばない。
まとめ
今回、タンクとパンテールを比較するにあたり、基本的な情報をもとに両者を比較した。ともに魅力的な人気モデルだが、最終的にどちらを選ぶかは、みなさんの好みや直感にお任せしたい。どちらの時計の方がしっくりくるか。筆者にとっては、間違いなくその答えはタンクだ。ブラックのレザーストラップにゴールド製のアンティークモデルを選びたい。最良の1本を選ぶ際、比較検討することは非常に大切である。けれども同時に、迷った際はどちらが心踊る時計なのか、どちらを頻繁に身に着けたいのか、そのことも忘れないでほしい。