1960年に誕生したグランドセイコーは、当時のスイス製高級腕時計に挑戦し、日本製の誇りを胸に世界に名を馳せました。その卓越した技術と繊細なデザインで、多くの時計愛好家を魅了し続けています。特に「白樺モデル」は、2021年度MLBア・リーグMVPを獲得した大谷翔平選手に贈られたことで再び注目を集めています。
今回は、グランドセイコーの魅力を深掘り、人気モデルの価格推移を紹介し、その価値を改めて考察します。
目次
グランドセイコーとは?
国内最高峰の時計ブランドとして名高いグランドセイコー。しかしながら、意外とその歴史や背景について詳しく知る人は少ないのではないでしょうか。まずは、そんなグランドセイコーの知る人ぞ知る魅力をご紹介します。
グランドセイコーの始まり
1881年創業の服部時計店を礎とするセイコーが、グランドセイコーの初代モデルを発表したのは1960年のこと。当時世界最高峰と謳われていたスイス製の高級腕時計に対抗し、完全国内生産の最高級腕時計ブランドとして時計業界の表舞台へと躍り出ました。その際、当時最高水準の規格とされていたスイス・クロノメーター検査基準優秀規格に準拠したモデルとして発売されたのが、その名も「グランドセイコー」。価格は2万5000円で、当時の上級国家公務員の初任給がその半額以下だったということからも、相当な高級品として扱われていたのがわかります。
グランドセイコーの歴史と、誇る技術
1960年代~70年代
初代「グランドセイコー」の発売から4年後には、カレンダー機能や50m防水性能を搭載した「GSセルフデーター」を発売、そしてその3年後の1967年には、現在まで受け継がれるデザイン理念を確立した「44GS」、またブランド初となる自動巻きモデル「62GS」を発表するなど、革新性に磨きをかけていきます。1969年には、精度月差±1分以内を達成。ムーブメントの薄型化も実現し、1970年代に入ると女性用の機械式腕時計についても最高水準のモデルをたたき出しました。
1980年代
1988年には、ブランド初のクォーツ式「95GS」を発売。年差±10秒という、クォーツとして当時最高峰の精度を実現させます。クォーツ式が登場して以降影を潜めていた機械式の雄グランドセイコーは、この「95GS」で再び世界の注目を集めました。
ちなみにクォーツ時計は、1969年に世界で初めてセイコーが開発に成功したことでも知られています。もともとはなんと箪笥サイズの機構だったというクォーツを腕時計に収まるまで小型化させたその技術力が、世界を変えるに至ったことをご存じの方は多いでしょう。いわゆるクォーツショックですね。セイコーが打ち出したクォーツ時計の性能が機械式時計を凌いだことから、スイスの時計業界は一時壊滅的なダメージを受けるに至っています。
1990年代
クォーツ式が未だ世界を席巻していた1990年代半ば、スイスの時計メーカーは機械式の復活に乗り出します。グランドセイコーもまた、機械式の再開発に着手しました。しかし、長い間機械式の開発から離れていた代償は大きく、その道は困難を極めたといいます。OBのアドバイスを仰ぎ、開発の再生にこぎつけたのは1996年のこと。その際開発した量産品がスイスの公認クロノメーター検定協会の精度検定に合格しています。しかしそれで満足しないのが日本人の心意気なのでしょうか。クロノメーターを超える精度をブランドの基準とするべく、独自に「新GS規格」を制定します。加えて50時間以上の持続を目指し、1998年、ついに誕生したのが「9S5」シリーズでした。
2000年代
ところで、世界でも類を見ないグランドセイコー独自の機構と言えば、機械式とクォーツ式のメカニズムを融合させた「スプリングドライブ」。この機構が初めてグランドセイコーに搭載されたのは、2004年のことです。しかしその開発に着手したのは実に20年以上前の1977年。機構の複雑さを物語っていますね。
このスプリングドライブに、さらに自動巻き機構を兼ね備える形で発表されたのが「9R6」シリーズ。その後もパワーリザーブの延長やGMT、ストップウォッチ機能など、次々と新しい機能が追加されていきます。
2010年代
2010年代に入ると、初めて全面にセラミックケースを採用したモデル(「ブラックセラミックス」)や、実に8日間の連続駆動を実現した「スプリングドライブ8Days」など、革新的なモデルを発表します。
そして、2017年、新生ブランドとしてついにセイコーから独立。デザイン領域に広がりを持たせた、新たなステージへと進みました。昨今の世界の時計展示会で毎度注目を集めるデザイン性の非常に高いモデルも、次々に誕生しています。
2020年代
2020年に60周年を迎えたグランドセイコーは、機械式「9SA5」とスプリングドライブ「9RA5」という二つの新しいムーブメントを発表。それぞれ、薄型化と、120時間のパワーリザーブを実現させました。そして古来より日本人が親しむ「引き算の美学」を取り入れた、日本ならではの情感あふれる外装をさらに進化させ今日に至っています。
グランドセイコーの資産価値
ここまで、グランドセイコーが誇る技術とその歴史を振り返ってきましたが、それでは、結局のところグランドセイコーの資産価値はいかほどなのでしょうか?国内と海外での評価を見てみましょう。
国内、そして海外における注目度
Chrono24におけるグランドセイコーの注目度を確認するため、この項ではお客様からのリクエスト数ランキングを見ていきましょう。
お客様が、「この時計を購入したい」という意思表示をされた数の合計を、Chrono24では「リクエスト数」と呼んでいますが、日本国内のお客様に絞った2023年のこのランキングにおいて、グランドセイコーは第8位。国内ブランドでは、セイコーに次ぐ快挙です。しかも、10位まで見ても国内ブランドとしてはこの2ブランドしか見当たりません。Chrono24における取り扱いブランド数が500近いことを考えても、国内で相当な人気を博していることが明白です。
一方全世界で見ても、堂々の20位。世界ランキングで20位ですので、これも相当な注目度と言えるでしょう。
前述のとおりグランドセイコーの技術力は世界水準であり、そのことは世界的に周知の事実。また、日本ならではの美しさを追求した他に類を見ないデザインも、資産としてふさわしいと捉えられているのが影響しているのでしょう。
さらに、実は日本と世界を比較すると、世界で発生するリクエスト数の総数はなんと日本国内における数の約70倍!つまり、ものすごい数の日本国外のお客様が、「グランドセイコーが欲しい!」と考えておられるということです。
つまりこれは、海外において買い手がつきやすい!ということになります。
定番・人気モデルの特徴と価格推移
ヘリテージコレクション SBGA211
通称「雪白」、一面に積もった純白の柔らかな雪を思わせるダイヤルが特徴の大人気モデルですが、実は白いカラーは使っておらず、特殊な銀メッキ加工というから驚きです。ステンレス製に見えるケースは、実はステンレスより遥かに軽く、硬度の高いブライトチタン。焼き入れしたブルーの秒針が映えるスプリングドライブ搭載のモデルです。
価格的にこの3年を見ると、上がったり下がったりを繰り返しつつ、現在は若干の上昇傾向。3年前と比べると価格は上がっています。Chrono24における現在の相場は ¥ 682,716 − ¥ 799,408。
エレガンスコレクション SBGM221
時を超えて愛されるクラシカルなデザイン、しかしどこかモダンでアクティブな印象をたたえる人気モデル。GMT機能のほか、約3日間のパワーリザーブを誇ります。裏蓋がシースルーなので、搭載されたキャリバー「9S66」がじっくり観察できるのも嬉しい仕様。使い込むほどに愛着の湧きそうなデザインの時計です。
価格的には、現状下降傾向。ただ3年前と比べると若干上昇しています。Chrono24における現在の相場は ¥ 500,701 − ¥ 611,367。
ヘリテージコレクション SBGA413/SBGA443
桜の花びらを思わせる淡いピンクのダイヤルが美しいモデル。「時の本質」をテーマに、日本の二十四節気の中の四節気をモチーフとしたデザインが特徴で、こちらのモデルは「春分」。2019年にアメリカで先行して限定発売されたのが「BGA413」、その後2022年に日本で発売されたのが「SBGA443」です。キャリバーはともに「9R65」搭載、ケースサイズも同じです。
2020年に大幅な値上がりをした後は下がり傾向でしたが、現在ちょうど元に戻った感があります。Chrono24における現在の相場は ¥ 899,930 − ¥ 947,176。
ヘリテージコレクション SBGX261
ケースサイズは少し小さめの37㎜、袖口にしっくり収まるように計算された、絶妙なサイズのモデルです。ムーブメントはクォーツ式の「9F62」で、年差±10秒。奥ゆかしいサイズ感と潔いほどにシンプルなダイヤルに、静かな自信がみなぎります。
この3年で見ると、若干の下降傾向。ただしこのグラフ以前の5年程前は23万円程度だったことを考えると、全体としては若干上昇しています。Chrono24における現在の相場は ¥ 234,654 − ¥ 284,754。
エレガンスコレクション SBGY007
真冬に湖が完全に凍った際に起こるという神秘的な自然現象、「御神渡り(おみわたり)」をイメージしたというダイヤルが際立つモデル。スプリングドライブ「9R31」が搭載されており、約72時間のパワーリザーブを実現しています。
こちらは、2023年に入り下がり傾向ではありましたが、現状上向き。2021年と比べても若干の上昇が見られます。Chrono24における現在の相場は ¥ 927,517 − ¥ 1,171,049。
エレガンスコレクション SBGW231
すっきりとしたシンプルなデザインのダイヤルを覆うサファイアガラスは、実は丸くカーブしています。そしてそれにしっくり沿うように、針にも曲げ加工が。全体的に優しい丸みを帯びたこの時計からは、なんとなく昔懐かしい雰囲気が漂います。手巻きの機械式。
例にもれず乱高下していますが、この3年で見ると上昇しています。現在も上昇トレンドですね。Chrono24における現在の相場は ¥ 557,304 − ¥ 600,428。
ヘリテージコレクション SLGH005
言わずと知れた通称「白樺」、大谷翔平選手に贈呈されたことでも知られるモデルです。光と影、そしてその中間にあるグラデーションの美しさを追求する新デザインコンセプト、「エボリューション9スタイル」の代表作でもあり、ダイヤルに刻まれた模様が織りなす陰影がなんとも美しい逸品。自動巻き。
価格的には、発売以降全体として下降していますが、現状は上昇トレンドで元の価格に迫っています。今後に期待できそうですね。Chrono24における現在の相場は ¥ 993,792 − ¥ 1,162,488。
売るか?買うか?見極めが肝心
こうしてグランドセイコーの人気モデルの価格推移を見てみると、ロレックスやオーデマ ピゲなど時計市場の動きが個々のモデルの変動率に如実に反映されがちなブランドと比べて、なかなか読みにくいというか、独自の動きをしていることが見て取れます。言ってみればそれは、日々その動向を追い、タイミングを見計らうことで、この先いつでも購入、または売却のチャンスがあるということかもしれません。
納得のいく価格で売却するには?
タイミング
日本国内で売り買いする分には問題ありませんが、海外に売るとなった場合、やはり円安、円高などのタイミングは重要です。為替に注意して、なるべく換算率が良いタイミングを逃さないようにしたほうが良いでしょう。円安が続いている2023年は、買い手がつきやすいといった意味では、売り時かもしれませんね。
国内?それとも海外で売る?
国内でも人気のグランドセイコーですが、海外で欲しがっているお客様も多く、買い手がつきやすい、というのは前述のとおりです。特にChrono24では通常の買い取り制度とは違い、Chrono24を介し相手のお客様に直接販売する方式。半額以下になりがちな買い取りに出すよりも、欲しいと思っていただける方に、時計市場において現状ふさわしい価格でお譲りすることが可能です。販売事業者の方だけでなく個人でももちろん出品が可能なので、売却を検討しているのであれば、まずはお手持ちのモデルがどの程度で売買されているのか、Chrono24の「ウォッチコレクション」や「クロノパルス」といった機能でご確認することをおすすめします。お手持ちのモデルをスキャンすれば詳細情報が見られる、Chrono24アプリの機能「ウォッチスキャナー」もおすすめです。
まとめ
グランドセイコーの歴史から人気モデル、売却の際の注意点まで見てきましたが、いかがでしたでしょうか。資産価値云々を置いておいたとしても心を奪われる美しさと技術を兼ね備えた時計だからこそ注目を集め、そして注目されるからこそ資産価値が保たれる。そんな時計を持つこと自体が、高級腕時計ならではの醍醐味とも言えそうですね。
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