2024年11月21日
 11 分

グランドセイコー VS ロレックス:ブランド比較

Sebastian Swart
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グランドセイコー VS ロレックス:ブランド比較

グランドセイコーとロレックスは、どちらも人気を誇るブランドではあるが、高級時計の世界におけるそのアプローチや哲学は根本的に異なる。ロレックスが、一目でそれとわかる象徴的なデザインと堅牢性で評価されているのに対し、グランドセイコーは、クラフツマンシップと精度に重きを置き、日本の美学にこだわった美しさが評価されている。また、グランドセイコーでは、スプリングドライブといった革新的なムーブメントや、日本の自然からインスパイアされた繊細なディテールも印象的だ。一方、ロレックスは耐久性あるタフな素材とブランドが築き上げてきた高い技術に重きを置いている。この記事では、高級時計界で人気の2ブランドを比較していきたい。

歴史

グランドセイコーの初代モデルが誕生したのは1960年であり、親会社であるセイコーの歴史と密接に結びついている。1881年に服部金太郎が東京に服部時計店を創業したのが、その始まりだ。キャリバー3180を搭載した初代グランドセイコーは、スイスの最高峰の時計に匹敵し、スイスのクロノメーター規格を超えるような機械式時計を目指し、1960年に発表された。その後グランドセイコーは、1970年代半ばまで生産され休眠状態となった。というのも、当時、セイコーが安価なクオーツ時計で世界の時計市場を席巻し、その結果機械式時計の需要が急減。クォーツショックが、自社の機械式時計にも影響を与えたためだ。1990年代の初めに再び機械式時計が復活の兆しを見せると、グランドセイコーも同様に復活を遂げたが、機械式の新しいムーブメントを搭載したモデルを発表したのは1990年代の終わりになってからだった。その新しいムーブメントこそが、クォーツ式と機械式の利点をあわせ持つスプリングドライブであり、時計史に残る偉大な発明として評価されている。そのため、グランドセイコーは時計愛好家の間では、スイス製のビッグブランドに匹敵するブランドと見なされている。2017年以降セイコーから独立し、長野県塩尻にある工房と、岩手県雫石町にある工房で時計を製作している。一方、ロレックスは1905年に実業家ハンス・ウイルスドルフと義理の弟アルフレッド・デイヴィスがロンドンでスイス製ムーブメントの販売会社、ウイルスドルフ&デイビスを設立したことに始まる。その後、1908年にロレックスを商標登録し、それ以来同ブランドは高品質な腕時計のトップブランドとして広く認知されている。1919年以降は、スイスのジュネーブに本社を置いている。時計業界のパイオニアとして瞬く間にその地位を確立した同ブランドは、1926年にオイスターを発表し、防水性腕時計の新しいスタンダードを築いた。1931年には、世界初となる画期的な自動巻き機構「パーペチュアル」を発表している。また、極地冒険家向けのエクスプローラーや、ダイバー向けのサブマリーナーといったモデルで、機能性にこだわるプロフェッショナルなツールウォッチを提供するブランドとしての地位を確立した。そして、1956年にはエレガントなデイデイトを発表し、このモデルは12時位置に曜日を表示するデイト機能を初めて搭載したものだった。1960年にウイルスドルフが亡くなって以降、ロレックスはハンス・ウイルスドルフ財団に譲渡され、管理されている。現在の従業員数は約1万4000人で、そのうち約9000人がスイスで働いている。

デザインとスタイル

グランドセイコー SLGA021
グランドセイコー SLGA021

デザインやスタイルにおける両ブランドの哲学は根本的に異なる。グランドセイコーの時計は精巧、かつ丁寧に仕上げられており、非常に控えめな印象だ。そのデザインの多くは自然をモチーフとしたもので、主に文字盤に反映されている。その一つの例が、グランドセイコー SLGA021だ。ブルーの文字盤は、夜明け前の諏訪湖の静かな水面からインスピレーションを得たものだ。また、同ブランドでは、1967年に独自に開発されたデザイン文法と言われる「セイコースタイル」のもと、視認性の高さや、仕上げの美しさに重きが置かれ、シンプルで明快なライン、上質で美しい表面仕上げ、形と機能の調和を実現している。それに対し、ロレックスのデザインは、はるかにアイコニックなものだ。同ブランドは創業以来、高級時計界のパイオニアとして、歴史に名を刻むタイムレスなデザインを数多く生み出してきた。それは、デイデイトやサブマリーナー、エクスプローラー、そしてGMTマスター IIデイトナ などの有名なモデルを含め、ほぼすべてのロレックスに当てはまる。ロレックスの現代モデルのデザインは、1950年代~60年代の同ブランドのツールウォッチのものを受け継いでいるが、なかでも華やかで目立つデザインの時計は、同ブランドのターゲット層の希望に沿ったものとも言え、ステータスや成功を表現し、人目を引くような外観をしている。それを象徴するのは、レインボーと呼ばれるモデルたちで、カラフルな宝石が散りばめられた贅沢なものとなっている。

希少価値の高いラグジュアリーなデイトナ レインボー Ref. 116595RBOW
希少価値の高いラグジュアリーなデイトナ レインボー Ref. 116595RBOW

グランドセイコーの人気モデル

エボリューション9コレクション SLGH021
エボリューション9コレクション SLGH021

グランドセイコーは、2024年の時点で、5つのコレクションを展開している。マスターピースコレクションでは、特に精巧に作られたタイムピースが並び、ブランドの最上位コレクションでもある。ヘリテージコレクションは、同ブランドのヴィンテージモデルにオマージュを捧げた時計で構成されたコレクションだ。エレガンスコレクションでは、上品で優雅なデザインのクラシカルな時計が並び、名前のとおり、フォーマルな服装やシーンに最適だ。スポーツコレクションは、卓越した品質とスポーティなデザインが特徴で、ダイバーズウォッチやGMT機能付きモデルなど、さまざまなモデルがそろう。5つ目となるエボリューション9は2020年に発表されたコレクションだ。時計は、前述のデザイン文法に従ってデザインされ、シンプルで凛とした佇まいが美しいモデルがラインアップされている。

ロレックスの人気モデル

ロレックスの定番2モデル、デイトジャストとデイトナ

ロレックスの時計は、機能面においても、デザイン面においても、圧倒的人気を誇るものがほとんどだ。デイトジャストは、エレガントなモデルの中でも特に人気があり、その次に、プレジデントウォッチとしても知られるデイデイトが続く。デイデイトでロレックスは初めて日付表示と曜日表示を組み合わせている。スポーツウォッチの中で最も人気なのが、サブマリーナーだ。1954年に発表されたこのダイバーズウォッチは、その後このカテゴリーの青写真とされ、そのデザインは時計史に刻まれることとなった。このサブマリーナーと同じようなストーリーを持つのが、1955年に航空会社パンアメリカン航空(パンナム)のパイロットのために開発されたGMTマスターや、その後に発表されたGMTマスター IIだ。今日、これらはGMT機能を搭載した時計の中で最も有名で、最も人気のあるモデルとなっている。ロレックスの中でも圧倒的人気を誇り、世界で最も伝説的なクロノグラフの一つとされているのが、コスモグラフ デイトナだ。1963年に発表されたこのモデルは、伝説のハリウッドスター、ポール・ニューマンが着用したことでその人気に火が付いた。ヴィンテージでも新品でも、デイトナは他のどのクロノグラフよりも人気がある。

品質と職人技

ロレックスとグランドセイコーの品質基準はともに非常に高い。しかし、そのアプローチや得意とする技術には違いがある。グランドセイコーでは、手作業による丁寧な仕上げに重きを置き、多くのモデルで、ザラツ研磨と言われる磨きが施され、鏡のような表面とクリアなラインを生み出している。文字盤も細部にまでこだわり、日本の自然や美意識を感じるデザインが多く見られる。一方のロレックスも、最高品質の仕上がりを提供し、時計業界のスタンダードを打ち立ててきたブランドだ。同ブランドの特徴は、工場で精密に製造、加工された高い耐久性を誇るパーツにある。素材については、どちらもブランドも最高峰のものを使用している。しかし、ロレックスでは独自の素材や合金も開発しており、傷がつきにくく耐食性に優れたオイスタースチール904Lやエバーローズゴールド、独自のセラミックであるセラクロムなどがそれにあたる。

テクノロジーと機能性

 グランドセイコー スプリングドライブ スノーフレーク
グランドセイコー スプリングドライブ スノーフレーク

ロレックスとグランドセイコーはともに、自社で時計を一貫生産するマニュファクチュールであり、ムーブメント技術に関しては世界の時計市場で重要な役割を果たしている。しかし、ここでも両ブランドのアプローチは異なり、グランドセイコーは、革新的な技術であるスプリングドライブで知られている。スプリングドライブは、機械式とクォーツ式を組み合わせたもので、精度の高さが特徴だ。その品質と精度は、決してロレックスに劣るものではない。同ブランドの中でも最も厳しい「グランドセイコースペシャル(GSS)規格」に沿ったムーブメントでは、平均日差は+4秒~-2秒という驚異的なものだ。また、テンプの振動数、毎時3万6000回(A/h)、80時間のパワーリザーブを誇るものもあり、ロレックスでは、同等のムーブメントは提供されていない。さらに、機械式ムーブメントしか採用しないロレックスとは対照的に、グランドセイコーでは一部のモデルにクォーツムーブメントを搭載している。

対するロレックスのムーブメントは、精度や堅牢性、革新的な素材使い、高い製造基準が特徴だ。すべてのムーブメントがスイスクロノメーター検定協会(COSC)の認定を受けている。また、同ブランドは独自に定めた精度規格を設け、高精度クロノメーターの称号が与えられた時計は、平均日差が−2〜+2秒という驚異的な精度を保証する。

ロレックスはムーブメントの素材の多くを自社開発し、特許を取得している。ブルーパラクロムヒゲぜんまいは、特殊なニオブとジルコニウムの合金ででできており、耐磁性に優れている。ニッケル・リン合金からなるクロナジーエスケープメントや、パラフレックス ショックアブソーバも同様にロレックスが独自に開発したものだ。

デイトナに搭載されているキャリバー4131と4132は、クロノグラフ機能を備えているが、グランドセイコーでは、クロノグラフを展開していない。 また、これらのムーブメントには前述の独自開発のパーツが使用され、それらは特許を取得しているものだ。どちらも垂直クラッチを備え、パワーリザーブは72時間。

ロレックス デイトナ 126506
ロレックス デイトナ 126506

価格設定と資産価値

価格面では、グランドセイコーの方がロレックスよりも低く設定されている。背景には様々な要因があるはずだが、だからといってグランドセイコーの品質が劣っているという理由ではない。ロレックスの価格が高いのは、その名声、高い人気、象徴的でタイムレスなデザインが主な理由と言えるだろう。さらに、同ブランドはマーケティングにも多額の投資を行っており、そのコストは最終的に価格に反映される。また資産価値という点では、ロレックスはグランドセイコーよりもはるかに上回る。2024年もロレックスの多くは希望小売価格を上回る価格で取引され、中古モデルやヴィンテージモデルも依然として高い人気がある。安定した価値、価値上昇といった点では、ロレックスがはるかに有利だ。

まとめ

グランドセイコーであれ、ロレックスであれ、どちらも独自のストーリーを持ち、最高品質の時計を製造している。グランドセイコーがエレガンス、洗練された技術、クラフツマンシップに重点を置いているのに対し、ロレックスはラグジュアリーブランドとしての絶大な地位と時代を超越したデザイン、そして安定した価値を強みとしている。今やロレックスの時計は時計以上のものであり、その価値は合理的な基準から切り離されることが多々あり、ステータスシンボルとされている。どちらのブランドを選ぶかは、人それぞれだ。卓越したクラフツマンシップや革新的な技術、そして繊細な職人の手仕事を評価するなら、グランドセイコーをおすすめしたい。そして、誰にでもわかるデザインでステータスや資産価値という点を重視するなら、選ぶべきはロレックスだろう。


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記者紹介

Sebastian Swart

すでに数年前からChrono24のサイトを時計の買取と販売、そして時計について調べるのに使っていました。私は子どもの頃から時計に興味を持っており…

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