2023年10月10日
 6 分

ジン – フランクフルト発エンジニア志向のブランド

Donato Emilio Andrioli
Sinn-2-1

1961年の創設以来、特殊要件を満たす高機能時計を製造してきたジン(Sinn)。直販というビジネスモデルにより、高品質な時計を手頃な価格で入手できるため時計ファンの間で高く評価されている。この記事では、フランクフルト発の時計ブランドの歴史と人気のモデルを3本を紹介したい。

ジンの誕生

ジン(Sinn)社は1961年にドイツ軍パイロットで飛行教官だったヘルムート・ジンによって「ヘルムート・ジン スペツィアルウーレン(特殊時計会社)」として設立された。当初からパイロット用の時計、クロノグラフ、ダイバーズウォッチの製造にフォーカスし、直販のみで販売していた。同社に思わぬ大成功をもたらしたのは、1979年にクォーツ危機の影響でブライトリングが生産中止を余儀なくされた時だった。ジンはこの絶好の機会を逃さずブライトリング ナビタイマーのすべての部品とムーブメントを譲り受け、ジン 903.ST.として販売したのだ。面白いのは、ブライトリングの文字やロゴがこれらの時計の部品に残されたまま使われたことだ。古い部品やケースを使い切ると、ジンは古いモデルに合わせて独自のケースを作らせ、このモデルは2023年まで絶大な人気を誇った。最近になって、ジン 903は製造中止となったが、後継モデルが登場するのもそう遠くないだろう。同社の製品の中でも特に重要なモデルなのだから。

Sieht aus wie eine Breitling Navitimer, ist aber eine Sinn 903.
ブライトリング ナビタイマーのように見えるが、これはジン 903だ。

1994年、ヘルムート・ジンは会社を元IWC取締役のローター・シュミットに売却した。時計ファンはジン社のことを好んで「エンジニアの時計ブランド」と呼ぶが、それもそのはずである。ケースに極めて高い耐傷性を持たせるテギメント加工技術も、どんな水深でも時計のガラスが曇らない防水性を実現するハイドロシステムも、ジンがいかに「革新技術」を重んじているかを示すものだ。フランクフルトを拠点とするこの会社が、GSG9(ドイツ連邦警察局特殊部隊)や消防士といったプロフェッショナルな部隊のための時計を製造しているという事実も、同社の時計の信頼性と品質を証明している。

ジンの時計を身に着けているのは誰?

ドイツ連邦警察のメンバーでなくても、エクストリームスポーツのプレイヤーでなくても、パイロットでなくても、ジンを身につけることはできるので心配はいらない。手首に着けられる優れたツールとしてだけでなく、日常使いにも適した時計なのだ。最も人気のある3つのモデルはオフィスでも、レジャーでも、あるいは人生のちょっとした冒険の時にも、素晴らしい存在感を発揮してくれる。

ジンの人気モデル

一番人気の「ジン 194」

2013年に登場したジン 104は、まさに定番であり、今日でもファンの一番のお気に入りとされている。このパイロットウォッチの人気の秘密は、普遍的なデザインだけでなく、サイズによるところもあるだろう。直径41mm、厚さ11.9mm、ラグトゥラグ47mmで、誰の腕にもぴったりとフィットする。文字盤の視認性も申し分なく、回転計算尺ベゼルは軽量アルミニウム製で両方向回転式だ。ムーブメントにはセリタSW 220-1を搭載し、パワーリザーブは41時間で、実用的な日付機能と曜日表示を備えている。サファイアガラスと200m防水を備えているため日常使いに最適で、サファイアガラスのケースバックからは、美しく演出されたムーブメントを眺めることができる。ベルトに関しては、2種類のステンレス製ブレスレットだけでなく、レザー製やシリコン製など多くのオプションが用意されている。筆者が特に気に入ったのは白文字盤のバージョンで、黒いベゼルとの組み合わせが秀逸だ。道具と称するブラックの時計が巷に溢れる中、白いバージョンの登場はまさにタイムリーだ。価格も40万円以下と、愛好家だけでなく高品質で美しいデザインの腕時計を探している初心者にもおすすめしたいモデルである。

Die Sinn 104 ist ein Fan-Liebling und mit blauem Zifferblatt ein echter Hingucker.
ジン 104はファンに人気のモデル。ブルーの文字盤はまさにアイキャッチャーだ。

オールラウンダーの「ジン 556」

日常生活にも、人生のちょっとした冒険にも寄り添ってくれるオールラウンダーをお探しなら、ジン 556はおすすめの1本だ。直径38.5mmでこのタイプの時計としては理想的なサイズである。ジンらしさに溢れた個性ある時計だが、特にステンレス製ブレスレットとの組み合わせではロレックス エクスプローラーを思い起こさずにはいられない。しかし、そもそもエクスプローラー自体パイロットウォッチに近いテイストなのだ。また、サファイアガラスと200m防水のおかげで、非常に堅牢である。ちなみに、このモデルでもサリタ製ムーブメント SW200-1がサファイアガラスのケースバックから眺めることができる。シンプルな見た目のジン556にしては意外な仕様だ。価格は30万円以下からと、ロレックス エクスプローラーに代わり得る非常に手頃なモデルと言える。黒文字盤ではシンプルすぎるなら、2023年に発売されたカラフルなバージョンにも注目すべきだ。ただし、カラフルなバージョンはそれぞれ400本限定で、市場ではブラックバージョンよりも若干予算を多めに計画しておく必要がある。

Die Sinn 556 ist der sportlich elegante Allrounder bei Sinn.
ジン 556はスポーティーでエレガントなオールラウンダー。

ジンのダイバーズ「ジンU1」

ジン社は優れたパイロットウォッチだけでなく、素晴らしいダイバーズウォッチも製造できることをジン U1が証明している。この重厚なダイバーズは、極めて強靭なドイツの潜水艦用に開発されたUボート・スチールでできている。希望すればテギメント加工をオプションで施すことができ、ケースがさらに傷つきにくくなる。ジン U1は完全に機能性を追求した設計となっており、直径44mmと非常に重厚で武骨な印象を与える。文字盤、インデックス、時針、分針、秒針は、水中でも完璧な視認性を保証する。ダイビングベゼルは手袋をしたままでもスムーズに操作でき、4時位置のリューズは手の甲に当たらないようになっている。また、防水性は驚異的な1000mを実現している。この一切妥協のないダイバーズウォッチもジン 556と同様にセリタ製ムーブメントSW200-1を搭載しているが、シースルーケースバックではない。そもそもこの機能的なダイバーズには似つかわしくないだろう。ジン U1では大きすぎると感じるのであれば、U50という選択肢もある。直径41mmとやや着用しやすくなっている。Chrono24ではジン U1の未使用品が約30万円から出品されている。

Die U1 ist die Taucheruhr-Ikone von Sinn.
U1はジンのダイバーズウォッチの代表格。

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記者紹介

Donato Emilio Andrioli

チューダー ブラックベイ41という機械式時計を始めて買って以来、機械式時計の虜になってしましました。特に、古くて感動的な歴史を持つアイコン時計が大好きです。

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