2020年01月07日
 7 分

スケルトンウォッチの魔法

Jorg Weppelink
Cartier Santos de Cartier Skeleton.DLC.001 (1)

スケルトンウォッチの魔法, 写真: Bert Buijsrogge

時計を大好きになることは、誰かに恋することと全く変わらない。見た目を大事にする人もいれば、中身を大事にする人もいる。その両方を魅力的に感じるのが本来の姿だ。時計で言えば、魅力的なデザインと卓越した技術の組み合わせということになる。顔から人を好きになるように、時計に感じる美しさは通常文字盤から始まる。しかし、文字盤を取り除いて、時計の心臓部を直接見られるとしたら?そしてこれは実際に可能で、多くのブランドは所謂スケルトンウォッチを製造している。しかし、これらの時計は内面のために見た目を犠牲にしているのだろうか?それでは、その答えを見ていこう。

ここ数年、多くの大手スイスブランドがますます多くのスケルトンウォッチを発表し始めた。これは消費者に対する反応であり、機械式時計の内部で動いている繊細な技術を見たいという関心が高まっていることを示している。基本的に、スケルトンウォッチの文字盤には部分的に、もしくはその大半に透かしが施されており、そのため内部のムーブメントを見ることができる。しかし、スケルトン化は単なる文字盤の省略ではない。それは、必然的にムーブメントを最小限まで削ぎ落とすことにもなる。そして、これらのムーブメントにはしばしば複雑な仕上げや彫刻が施され、その結果優れた芸術作品が生まれる。

Ulysse Nardin Classic Skeleton Tourbillon
ユリスナルダン クラシック スケルトン トゥールビヨン

エリートの始まり

スケルトンウォッチは決して新しいコンセプトではなかった。その歴史は1760年まで遡ることができる。フランスのクロックメーカーであるアンドレ・チャールズ・キャノンは、彼の顧客が機械式ムーブメントの見事な技術を眺められるように、文字盤を持たない時計を作ることに決めた。また、特定の不必要な部品を省くことで、より薄い懐中時計が作れることも発見した。キャノンの顧客は18世紀パリの上層階級の人々であり、彼のスケルトンウォッチは非常に限られたグループの顧客のために作られていた。

スケルトンウォッチの再発明

約175年間姿を消した後、オーデマ・ピゲが1934年に自作のスケルトンウォッチを発表し、より多くのオーディエンスに向けて提供した。オーデマ・ピゲはキャノンと同じ可能性を見いだしていたが、それはまったく異なる文脈においてであった。懐中時計は腕時計に置き換えられ、オーデマ・ピゲが扱うケースサイズも大幅に縮小したが、それは問題ではなかった。このスイスメーカーのスケルトンウォッチは、美しくもあり機能的でもある同社の素晴らしいムーブメントを作り上げる能力を示した。スケルトンウォッチは20世紀後半に入ってようやくオーディエンスを獲得したが、この時計が大きな注目を集めるまでにはさらに数十年間の時間を要することとなる。

Jaeger-LeCoultre Reverso Gyrotourbillon
ジャガー・ルクルト レベルソ ジャイロトゥールビヨン、写真: Bert Buijsrogge

クォーツショックとの闘い

1970年と1980年代、スイス時計産業はクォーツショックの結果として崩壊の危機に瀕していた。スイス時計ブランドは、安価なバッテリー駆動のムーブメントに比べて精度で劣る機械式ムーブメントの使用を正当化する必要に迫られた。いくつかのブランドにとって、その答えは卓越した技術を際立たせる手作り機械時計、スケルトンウォッチの製造であった。幸いにもそれはうまくいき、それ以来オーデマ・ピゲ、ジャガー・ルクルトパテック フィリップヴァシュロン・コンスタンタンなどの高級ブランドはそのような時計を作り続けている。

アイデンティティとしてのスケルトンウォッチ

現在、カルティエブルガリ、オーデマ・ピゲを含むいくつかの時計ブランドが、非常に魅力的なスケルトンウォッチを製造している。しかし、それを本当に新たな次元に進め、スケルトンウォッチをアイデンティティとして採用したブランドはリシャール・ミルである。この会社は「究極のエンジニアリング」の哲学を中心に、可能な限り軽い時計を作るために最先端の素材を使用している。これも時計に伝統的な文字盤が搭載されていない理由であり、同ブランドを形作っている特徴でもある。

Richard Mille RM 055
リシャール・ミルRM 055

そうは言っても、現代的なスケルトンウォッチに関してリシャール・ミルが唯一のパイオニアというわけではない。ロジェ・デュブイ、HYT、ウルベルクなどのオートオルロジュリーブランドもより軽い時計を好んで従来の文字盤を省き、技術的卓越性に主眼が置かれている。結局のところ、これがスケルトンウォッチの全てである。基本的なムーブメントを単に見せる代わりに、これらのメーカーはまったく新しいデザインを作り出すためにたゆまぬ努力を重ねており、従来の時計製造をその限界まで推し進めている。

スケルトンウォッチの芸術作品

ここでは現代的なスケルトンウォッチを最もよく示している3つの時計を選び出してみた。

カルティエ サントス スケルトンADLC ノクトンブル

カルティエ サントスは誰もが認める時計業界のアイコンだ。SIHH 2019において、カルティエはカルティエ サントス ドゥ カルティエ スケルトンADLC ノクトンブルによって皆を驚かせた。サントスのスケルトンモデル自体は新しいものではなかったが、このノクトンブル、または「宵っ張り」エディションは、さらに一歩先へと進化している。そのケースはブラックのADLC (アモルファスダイヤモンドライクカーボン) で完全にコーティングされており、時計針とアワーインデックスにはスーパールミノバが塗布されている。そして、表面と裏面のサファイアクリスタルによって上下からスケルトンムーブメントを見ることができる。日中控えめに見える時計は暗闇の中で魔法のような光を放つ時計に姿を変え、サントスシリーズの時を超えた本質を証明している。

Cartier Santos de Cartier Skeleton, Bild: Bert Buijsrogge
カルティエ サントス ドゥ カルティエ スケルトン, 写真: Bert Buijsrogge

オーデマ・ピゲ ロイヤル オーク コンセプト トゥールビヨン クロノグラフ オープンワーク自動巻き

このリストで、史上最も注目すべきスケルトンウォッチを作り出したブランドとして、オーデマ・ピゲに触れないわけにはいかない。ロイヤル オーク コンセプトの時計は最先端の技術および素材と素晴らしいデザインを結びつけ、真の芸術作品を作り出した。ロイヤル オーク コンセプトトゥールビヨン クロノグラフ オープンワーク自動巻きは、サンドブラスト加工が施されたチタン製ケース、そしてブラックセラミック製プッシュボタンとネジ込み式リューズを搭載している。両面ともにサファイアクリスタルによって保護されており、この精密なムーブメントが作動している様子を見ることができる。また、その素材のおかげでこの時計は非常に軽い。しかし、真の見どころはオープンワークムーブメントで、オーデマ・ピゲの匠の技を示している。

オーデマ・ピゲ ロイヤル オーク コンセプト トゥールビヨン クロノグラフ

ブルガリ オクト フィニッシモ スケルトン セラミック

ブルガリ オクトフィニッシモは2014年に発表されて以来大きな成功を収めている。ここ数年、ブルガリは最薄のトゥールビヨンムーブメント、最薄の自動巻き時計、最薄のミニッツリピーターと、記録を塗り替えるモデルを定期的に発表してきた。そして、バーゼルワールド2019で発表されたのがオクト フィニッシモ スケルトン セラミックであった。これは軽量なセラミックで作られた初のオクト フィニッシモで、同時にスケルトンムーブメントを搭載するこのコレクション初の時計であった。この時計はオクト フィニッシモ デザインの力と、ブルガリのとてつもない野望を強調している。

Bulgari Octo Finissimo Skeleton Ceramic
ブルガリ オクト フィニッシモ スケルトン セラミック

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