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ストーンダイアル:手首を飾る上質な天然石

Sebastian Swart 著
2025年5月7日
8 分
G0A48239

ストーンダイアル:手首を飾る上質な天然石

ストーンダイアル。鉱物岩石で作られた文字盤はまさにアイキャッチャー。自然の美しさを生かし、手首に他にない個性を与えてくれる。ラピスラズリ、マラカイト、オニキス、タイガーズアイ、あるいは隕石など、それぞれの天然石文字盤は唯一無二であり、他にはない色彩の揺らぎや魅惑的な深みが魅力だ。1970年代にはスタイリッシュなステートメントと考えられていたものが、今ふたたびおしゃれなカムバックを果たしている。しかも、天然石を用いるのは大手の高級ブランドだけではない。独立系メーカーやマイクロブランドも自社の時計にストーンダイアルを採用しているのだ。この記事では、ストーンダイアルを備えた時計を5つご紹介したい。

ロレックス GMTマスター II タイガーアイアン:不規則性の美学

ロレックス GMTマスター II タイガーアイアン:不規則性の美学
ロレックス GMTマスター II タイガーアイアン、 画像:ロレックス

ジュネーブを拠点とする時計界の巨人ロレックス は、1970年代にはすでに天然石の文字盤を備えたデイトジャストやデイデイトのさまざまなバージョンを発表していた。2017年に同社はRef.116519LNとして隕石製文字盤を採用したデイトナを発表。その翌年の2018年には、同じく隕石の文字盤を備えたGMTマスター II(Ref.126719BLRO)が続いた。そして2025年のWatches and WondersではGMTマスター II Ref.126715CHNR「ルートビア」の新作を発表した。このモデルはケースとブレスレットが18Kエバーローズゴールド製で、極めてユニークなストーンダイアルが採用されている。文字盤はタイガーアイアンと呼ばれる石でできており、独特の色合いと質感を持つ。色は金褐色から深紅、そして黒もある。独特の色合いは石の主成分である3種類の鉱物によって生み出されるもので、タイガーズアイが金褐色を、レッドジャスパーが燃えるような赤を、そして酸化鉄の鉱物であるシルバーヘマタイトが銀色から黒までのトーンをそれぞれ加えている。文字盤の見た目は不規則的なカオスとでも言えるものだろう。これは自然のプロセスが生み出した唯一無二の結果であり、手首につければこの上なく個性的な存在感を放つ。ロレックス GMTマスター II 126715CHNRは直径40mmで、ロレックス自社製キャリバー 3285を搭載しており、パワーリザーブは70時間だ。GMTマスター II タイガーアイアンの発表時のメーカー希望小売価格は746万7900。

オーデマ ピゲ ロイヤル オーク:天空の石ターコイズ

AP ロイヤル オーク Ref.15550BA
AP ロイヤル オーク Ref.15550BA

スイスの高級時計メーカー、オーデマ ピゲにも、ストーンダイアル製作に関しては長い伝統がある。1970年代からすでに、ラピスラズリ、マラカイト、ターコイズを用いたロイヤル オークのモデルを展開してきたのである。色鮮やかな文字盤には、イエローゴールドやホワイトゴールドといった貴金属を組み合わせるのがこのブランドのスタイルだ。2023年に発表されたターコイズ文字盤のロイヤル オーク Ref.15550BAも同様だ。多彩な色のタイガーズアイとは対照的に、ターコイズは鮮やかな青緑色が際立つ石だ。ターコイズの青い色合いは石に含まれる銅によるもので、緑の色が強いほど、鉄分が多く含まれていることを示している。ターコイズの表面には茶色がかった黒い脈が走っていることが多く、それが石に独特の個性を与えている。この脈模様はさまざまな鉱物で構成されており、酸化鉄から石英、砂岩から粘板岩や玄武岩まで多岐にわたる。含まれる鉱物の種類に応じて、脈模様は明るい色、灰色、茶色、黒などの色合いを呈する。仕様は製品ラインの標準に準じたもので、一体型ブレスレットが付いた37mmケースを備えている。どちらのパーツもこのリファレンスでは18Kゴールド製である。時計内部には自社製キャリバー5900が搭載され、パワーリザーブは60時間。ロイヤルオーク 15550BAのメーカー希望小売価格は957万円だが、Chrono24では2000万円を超える高値で取引されている。

ピアジェ Andy Warhol ウォッチ:時代の寵児へのオマージュ

ピアジェ Andy Warhol ウォッチ
ピアジェ Andy Warhol ウォッチ

時計と宝飾品メーカー、ピアジェとポップアートの旗手、アンディ・ウォーホルとは生前から親しい関係にあった。1987年に亡くなったウォーホルはイヴ・ピアジェの親友であり、ピアジェの時計を7本所有していた。同社は1987年に設立されたアンディ・ウォーホル財団とのコラボレーションで、Andy Warhol コレクションにストーンダイアルを備えた時計を展開している。その最新作として2025年のWatches and Wondersで発表されたのが、タイガーズアイ文字盤を採用したAndy Warhol ウォッチ(G0A50240)である。タイガーズアイは石英を主成分とする鉱石で、黄金色から茶色がかった色と、明瞭な波模様または縞模様が特徴である。表面の光の反射が猫の目を連想させることからこの名前が付けられた。タイガーズアイの色は鉄分を含む鉱物クロシドライトによって生じる。タイガーズアイ文字盤を備えたAndy Warhol ウォッチのケース(45mm x 43mm)はロジウム加工のホワイトゴールドだ。時計の心臓部には自社製自動巻ムーブメント501P1が搭載され、パワーリザーブは60時間。メーカー希望小売価格は849万2000円である。なお、Andy Warhol コレクションには他にもリファレンスG0A43238およびG0A49238がある。前者はマラカイト製のグリーンの文字盤を、後者は隕石を使ったブルーの文字盤を備えている。

ジェラルド・チャールズ マエストロ GC39 ジャンピングアワー搭載

ジェラルド・チャールズ マエストロ GC39、画像:ジェラルド・チャールズ
ジェラルド・チャールズ マエストロ GC39、画像:ジェラルド・チャールズ

まだ比較的若い独立系時計ブランド、ジェラルド・チャールズのルーツは2001年にまで遡る。このブランドを現在もその拠点とするジュネーブに設立したのは他でもない、デザイン界の巨匠ジェラルド・ジェンタであった。このメーカーは2011年に亡くなったジェンタの遺産を引き継ぎ、彼の手がけた独自のデザインスタイルを持つ高級時計を定期的に発表している。2005年に最初のマエストロ・モデルをリリースした。そして2025年にはマエストロ GC39 25周年記念エディションとして、文字盤に深いブルーのラピスラズリをあしらった100本限定のチタン製モデルが登場した。石は文字盤の中央に置かれ、ブルースチールフレームとブラックのミニッツトラックに囲まれている。ラピスラズリの深い青は、主成分である鉱物ラズライトによるものだ。ケースサイズ42mm × 42mmのこの時計には、ゴールド製の巻き上げローターを備えた自社製キャリバー4.0が搭載されている。このムーブメントはジャンピングアワー機構を備えており、11時から1時の間のディスクにアラビア数字で表示される。パワーリザーブは50時間だ。ジェラルド・チャールズ マエストロ GC39の価格は775万7750円である。

オメガ シーマスター 300、グリーンマラカイト文字盤

シーマスター 300、プラチナ製、グリーンマラカイト製ストーンダイアル、Ref.234.93.41.21.99.001
シーマスター 300、プラチナ製、グリーンマラカイト製ストーンダイアル、Ref.234.93.41.21.99.001

ビール/ビエンヌに本拠地を置くオメガのコレクションには、2022年にストーンダイアルを備えたシーマスター 300のモデルが2つ加わった。リファレンスナンバー234.93.41.21.99.001はケースがプラチナ製であり、シーマスター 300 Ref. 234.63.41.21.99.001はイエローゴールド製だ。両リファレンスに共通するのは、緑色のマラカイトの文字盤である。マラカイトは鮮やかな緑色と独特の質感のある模様で知られる鉱物であり、緑色は銅の含有量の多さによるものだ。個々の石にはそれぞれ、同心円、波模様、縞模様などの独自の模様がある。技術仕様は標準的なシーマスター 300だ。どちらのリファレンスも直径41mmだが、このシリーズの他のリファレンスとは異なり、マラカイトバージョンにはグリーンのベゼルが装備されている。それに合わせて、ストラップにも同じくグリーンのアリゲーターレザーが用いられている。ムーブメントは特許取得済みのコーアクシャル エスケープメントを搭載した自社製キャリバー 8913で、パワーリザーブは約60時間だ。プラチナ製モデルはChrono24で新品同様のものが約570万円で入手可能であり、イエローゴールド製モデルはそれよりも大幅に安価で、約460万円で販売されている。

まとめ

ストーンダイアルを備えた高級時計は2025年も引き続きトレンドであり、多くのメーカーがラインアップしている。こうした時計は優れた時計製造技術と自然が生み出す唯一無二の美を兼ね備えている。ラピスラズリ、マラカイト、ターコイズ、タイガーズアイ。個々の石の特性によってすべての時計が唯一無二の一点物となり、ストーンダイアルを持つモデルはコレクターやデザイン愛好家にとってはとりわけ魅力的な存在である。ちなみに、ストーンダイアルを備えた腕時計が必ずしも高額とは限らない。たとえば香港に拠点を置くデニソンはストーンダイアルの腕時計に特化したブランドであり、約10万円で入手可能なモデルを展開している。デニソンの製品ラインには2針の高品質クオーツ時計があり、 文字盤はタイガーズアイ、マラカイト、ラピスラズリから選ぶことができる。

記者紹介

Sebastian Swart

Sebastian Swart

すでに数年前からChrono24のサイトを時計の買取と販売、そして時計について調べるのに使っていました。私は子どもの頃から時計に興味を持っており…

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