ロレックス、オメガ、パテック フィリップはChrono24で最もよく売れているブランドである。これらのブランド名は、ソーシャルメディアで最もよく見かけるものでもある。もう少し掘り下げていくと、極めてよく売れている少数のモデルがあることに気づくはずだ。そして、この状態はしばらく続いてきている。というわけで、これらはどんなモデルなのか、なぜこれらが多くのリストのトップを飾るのか、探ってみよう。
その前に、まずは最も人気の時計は何なのか、またその人気が時計市場にとって意味するところについて考えてみたい。ロレックスから見てみると、同ブランドのトップ人気モデルはサブマリーナとデイトナである (これは大して驚きではない)。ロレックスの他のステンレス製スポーツウォッチも全て高い需要を誇っているが、この2つは群を抜いている。オメガにおけるトップ人気モデルはもちろんスピードマスター。この業界のアイコンは何年もの間、私たちのプラットフォーム上でのベストセラーのひとつであり続けている。スピードマスターのようなレガシーを持つモデルなら、それも当然である。パテック フィリップを見てみると、そのトップモデルはノーチラスだ。この1970年代のアイコンはChrono24で最もよく売れているパテックの時計である。

重要なブランド
これらの特定の時計がこれほどの人気を得たのには、いくつかの理由がある。最初の、そして最も明白な理由は、これらが世界で最も素晴らしい機械式時計メーカーによる高品質のタイムピースだということ。パテック フィリップは品質と価格両方において (ほぼ間違いなく) 一段上であるが、オメガとロレックスは優れたタイムピースを量産するという点において最も優れている。
これら4つのモデルが非常に高い人気を誇る2つ目の理由は、全てのモデルがコミュニティを魅了するユニークな遺産とストーリーを持っていることである。このうちで最も素晴らしいストーリーといえば、1969年に世界で初めて月へ行った時計となったスピードマスターのものだ。人類史上最高の功績のひとつで重要な役割を果たしたタイムピースを所有すること以上にエキサイティングなことがあるだろうか?

語るべきストーリーを持つ時計
ロレックス サブマリーナは1953年に発表され、瞬く間に最も人気のダイバーズウォッチとなった。以来、それはダイバーズウォッチの典型となり、そのデザインは多数のブランドによって真似されてきた。一方、ロレックス デイトナのストーリーはスピードと華やかな魅力にまつわるもの。最も有名なデイトナ愛用者といえば、間違いなくポール・ニューマンである。ファンはすぐにニューマンが着用していたデイトナにこのハリウッドスターの名前をつけた。そしてそれは今では、これまでに作られた中で最も高い人気と注目を集める時計のひとつとなっている。

パテック フィリップ ノーチラスは、時計デザインの見方を再定義した、ジェラルド・ジェンタ氏によるラグジュアリーステンレススポーツウォッチの伝説的な三部作のひとつだ。パテック フィリップ ノーチラス、オーデマ・ピゲ ロイヤルオーク、IWC インヂュニアは、機械式時計業界がクオーツ危機のために苦しい状態にあった1970年代の、デザインイノベーションについてのストーリーを語ってくれる。この3つは全て、一体化されたブレスレット、超薄型のムーブメント、そして見事なルックスという、新しいスポーツウォッチ体験を示しているのだ。
市場への影響
これら4つのモデルの売上数を合計すると、それが市場のかなりの部分を占めていることがはっきりとわかる。これはいくつもの影響を引き起こしえる。需要が供給を上回れば価格は上昇する。これは近年、私たちが確かに目撃してきた現象であり、これら4つのモデルの価格はその定価よりもはるかに、一部においては定価の倍以上までにも高騰している。
ひとつの喜ばしくない副次的な影響は、これが時計を楽しむのではなく投資目的で時計を買う人を引き寄せてしまったということだ。事実、複数のモデルが、実際に購入時に支払った金額の10〜15%もの価値上昇を毎年現実的に見込める、良い投資対象となっているのである。これは一部の人の財力にとっては良いことだが、時計コレクターにとってはあまり良くないことだ。

これはどこで終わるのか?
私にとって、時計とは手首に着用してこそ最も楽しめるものだ。それは時間の魔法を捉え、素晴らしいストーリーを伝えてくれる。これらのストーリーのおかげで私たちは自分のタイムピースと個人的な繋がりを築き上げ、またそのストーリーのためにもっとその時計を着用したくなる。私は投資の利益目的で時計を売り買いしたことは今までに一度もない。真の時計愛好家は、時計を単に転売する目的では決して買わないものだ。しかし誤解しないでほしいのは、一度買った時計を一生所有していなければならないというわけではないのだ。しかし、多くの愛好家は (もっともなことだが) 時計を転売目的で購入することを軽蔑している。
腕時計を投資対象として扱うことの好ましくない影響のひとつは、多くの時計愛好家にとって、そういった時計が手の届かないほど高価になったり、入手不可能になったりしてしまうということだ。この影響は初期世代のヴィンテージモデルと最新のリリースにおいて最も顕著である。アイコニックなヴィンテージモデルは常に高価であり、本格的なコレクターたちの間で熱望されてきた。しかし、ヴィンテージのデイトナ、サブマリーナ、スピードマスター、ノーチラスの一部に付けられている価格は、これらの傑出した初期世代のタイムピースを心から楽しめるはずのほとんどの愛好家にとって、単純に手の届かないものになってしまっているのだ。

同じことは最新リリースにも言える。良い例がロレックス サブマリーナ ref. 124060だろう。これは2020年9月に定価85万4700円でデビューしたものだ。この時計を取り巻く熱狂はとてつもないものだった。正規販売店から購入ができないということから、Chrono24での需要は膨れ上がり、取引価格は約160万円近くからスタート。そして残念なことに、「それなら、先代モデルをお得な価格で買えばいい」と考えたのはあなただけではない。多くの購入希望者が同じことを考え、そのためにそれらの古い世代のサブマリーナモデルの価格も上昇してしまったというわけだ。

こういった全てのことを考慮に入れて、人々はオメガ、ロレックス、パテック フィリップの他のモデルを探し始めた。それにより、ロレックス GMTマスター、デイトジャスト、エクスプローラー、オメガ シーマスター、そしてパテック フィリップのいくつかのタイムピースの価格が上昇した。というわけで、必ずしもChrono24における人気トップ4モデルが市場全体の価格を決定付けるわけではないが、それが業界の価格レベルと顧客行動にある程度の影響を与えることは確かである。
では、なぜ人々はいまだにこれらの時計に固執するのだろうか?もしあなた自身がこういった時計に興味があるのなら、自分にじっくりと向き合ってみることでこの質問に答えられるかもしれない。なぜこの時計が必要、あるいはほしいのか?友達が持っているから?ソーシャルメディアで騒がれているものだから?良い投資対象かもしれないから?その回答はあなた次第である。しかし私にとって時計の楽しみとは、その金銭的な価値以上のものである。そして私からあなたへの願いは、これがドリームウォッチを探している際に巡り合えた、気づきの体験であってほしいということだ。楽しい時計探しの旅を!