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シルバーウェーブ?ブライツ? セイコーの歴代モデルの中で、いま復刻すべきは?

Jorg Weppelink 著
2022年2月24日 | 更新日: 2024/05/14
9 分
2:36

セイコーは、歴史あるブランドの一つだ。セイコーの物語は、服部金太郎が東京都心で時計の販売と修理を行う店を開業した1881年にさかのぼる。11年後の1892年に、彼は「精工舎」という工場を設立した。その後、セイコーは時計ブランドとして成功を収め、1913年の「ローレル」 (日本初の腕時計) から1924年のセイコーブランド初のモデルまで、多くの象徴的な時計を世に送り出した。また、1960年代後半に発表された一連の定番ダイバーズモデルや、世界初の自動巻きクロノグラフの製造競争の一環であった有名なキャリバー6139を初めて搭載したモデルも忘れてはならない。そして、1969年にセイコーは世界初のクォーツ時計、アストロンを発表し、業界に革命を起こした。さらに1988年にはセイコー キネティック、1999年にはスプリングドライブを発売している。 

結果として、多くの人に忘れられながらも、再び脚光を浴びるべき素晴らしいセイコー時計が、文字通り何百本も存在している。セイコー自身も、復刻版や現代版といった名作が持つ力を十分に理解しているが、セイコーの愛好家が復活を望むその他のモデルは常に存在するのだ。そこで、セイコーのラインナップに加えたい時計をいくつか選んでみた。過去に限定モデルとして復刻されたものもあれば、まだ現代にリリースされていないものもある。それでは早速、歴代の素晴らしいセイコー時計の数々を紹介していこう。 

1. 1964年のセイコー Ref.5717 クロノグラフ

1964年、セイコーは公式計時を担当した東京オリンピックを機に、日本初のストップウォッチを搭載した2つの時計を発表した。この2つのシングルプッシュ クロノグラフは、セイコーコレクターの間で伝説的な地位を確立している。セイコー Ref.5719 クラウン クロノグラフは、非常に独特なルックスを持ち、多くの愛好家に愛される定番時計となった。セイコーは2019年にこの時計へのトリビュートとなる、セイコー クロノグラフの55周年を記念した限定モデル、SRQ031を発表した。その1年後に、クラウン クロノグラフのデザインに敬意を表しながら、クロノグラフ機能を搭載しない3つの自動巻きモデルを発表した。しかも、これらの復刻版はすべて限定版であった。 

セイコークロノグラフ Ref.5717
セイコークロノグラフ Ref.5717

5719のほか、セイコーは1961年から展開していた「キングセイコー」シリーズをレギュラーモデルとして復活、全世界での展開を発表した。そのベースになったのは、「KSK」と呼ばれる2代目キングセイコー。発売当時、防水性能の実現や、時刻合わせに使う秒針規制装置(秒針ハック機能、秒針を停止できる機能)を備えたことで実用性を進化させたモデルとして評価され、シャープなケース、ボックス型の風防などでキングセイコーのオリジナリティも確立した。 

2. セイコー 6138-8020 ”パンダ” /ブライツ SDGZ013

セイコーの歴史上、最もアイコニックなシルエットの一つがセイコー 6138-8020である。前述のとおり、セイコーが自動巻きクロノグラフのキャリバー6139を発表したのは1969年のことだった。その直後には、コラムホイールと垂直クラッチを備えた初の完全一体型で2レジスターの自動巻きクロノグラフ セイコー 6138Aを発表している。キャリバー6138を搭載した時計は、有名なブルヘッド エディションを除き、6時と12時位置にレジスターを配した紛れもない縦型レイアウトとなっている。6138シリーズの最も定番なモデルは、ホワイトの文字盤にブラックのレジスターを備えた6138-8000 ”ベイビー パンダ” と ”パンダ” の2つだ。少し大きめの6138-8020は、コレクターの間でより人気が高い。 

セイコーは、定番モデルの ”パンダ” をモチーフにした時計を2度発表している。1度目は2014年、セイコー クロノグラフの50周年を記念してチタン製のセイコー ブライツ SDGZ013を発売したときだ。このモデルは日本限定モデル (JDM) だった。それから5年後の2019年、セイコーはセイコー クロノグラフ誕生55周年を記念して、SRQ029のステンレススチールバージョンを発表した。SRQ029は全世界で発売されたが、日本限定発売と同様、どちらも限定モデルですぐに完売している。セイコーは、あの1970年代のアイコンを限定版でなく、リニューアルモデルとして発売すれば、多くの人に喜んでもらえるだろう。すでにアニバーサリーモデル SRQ029で、現代版も魅力的であることを示している。 

セイコー 6138-8020
セイコー 6138-8020

3. セイコー 6139-6002 ”ポーグ”

不思議なことに、セイコー6139 ”ポーグ” は世界中のコレクターに広く愛されているにもかかわらず、セイコーはこの時計を一度も復刻していない。技術的にも視覚的にも際立つアイコニックな時計だ。セイコー 6139-6002 ”ポーグ”は、冒頭で触れたセイコーのアイコニックな自動巻きクロノグラフでキャリバー6139を搭載した最初の腕時計の一つである。イエローの文字盤にブルーとレッドのベゼルが映え、なんとも贅沢な雰囲気を醸し出している。また、同じ時計に4種類の文字盤色が採用されているシリーズの一つでもある。 

青文字盤は、フランスのF1レーサー、フランソワ・セベールが愛用したことから「セベール」とも呼ばれている。もう一つはイエローダイヤルの ”ポーグ” で、1973年のスカイラブ4号でウィリアム・ポーグ大佐が着用したことから、この愛称が付けられた。3つ目は個人的に好きなシルバーダイヤルのモデルで、最後は6時位置のクロノグラフレジスターの周りにあるマークから「サンライズ」と呼ばれるティールダイヤルのモデルである。一番人気は、今でもリーズナブルな価格で購入できるイエローの文字盤を備えたバージョンだ。その歴史的な関連性を考慮すると、6139のすべてのモデルは、お金をかけずにコレクションに加えることができる素晴らしいアンティークモデルである。しかし、セイコーがアイコニックな ”ポーグ” の現代版を発売したら、素晴らしいと思わないだろうか?もしセイコーがオリジナルの時計を称えるものを作ることができたら、過去数十年にわたりこの時計をこれほどまでにアイコニックな時計にした理由を思い起こさせることができるかもしれない。  

セイコー 6139-6002 ”ポーグ”
セイコー 6139-6002 ”ポーグ”

4. セイコー J12082 および 697990 シルバーウェーブ

セイコーのダイバーズウォッチといえば、62MASから2020年にセイコーのダイバーズウォッチ55周年記念の一環として限定発売された6159まで、ブランドを代表するダイバーのほとんどすべての復刻版や現代的に解釈したモデルが発売されている。また、有名な ”キャプテン・ウィラード” を現代的に再解釈したモデルもある。セイコーが豊富なダイバーズウォッチの歴史を活かして、定期的に新しいーモデルを発表するのは、それほど不思議なことではない。ダイバーズウォッチは最も人気のあるカテゴリーの時計であり、セイコーは素晴らしいものをたくさん製作してきた。中でも、1965年の62MASの前身となった2つの有名なモデルがセイコー シルバーウェーブである。1960年代初頭に、セイコーは初の試みとなる回転ベゼルを内蔵した防水時計となったシルバーウェーブを2種類発売している。 

初代モデルのセイコー J12082は1961年にデビューした。50m防水を実現し、セイコー初の試みを複数行ったモデルだ。セイコー初の本格的なダイバーズウォッチで、初の回転ベゼル、そして津波を表現したねじ込み式ケースバックを備えた初の自動巻きモデルである。この時計は1964年まで生産されたものの、その後セイコー Ref.697990 シルバーウェーブが登場した。現代の基準からすれば、この数字は決して特別なものではないが、セイコーはこの最初の真のダイバーズウォッチに敬意を表して、現代のスペックで復刻版を作ることも考えられる。そうすれば、コレクターも感謝する素晴らしいモデルとなるに違いない。 

セイコー初のダイバーズウォッチ: J12082。
セイコー初のダイバーズウォッチ: J12082。

5. セイコー SARB033

最後に紹介したいのは、有名なセイコー SARB033である。このモデルは、白文字盤の兄弟モデルのSARB035とともに、2008年から2018年まで日本で正規販売されていたモデルである。この2つの時計は、驚くほどのコストパフォーマンスを実現する、コストパフォーマンスに優れた普段使い用の2本として、世界的に有名な時計だ。私のお気に入りは、黒文字盤のSARB033である。どちらの時計も、定価約5万円のルックスと優れた仕上げのレベルから、”ベビー” グランドセイコーと呼ばれている。 

この38mmのケースと着け心地の良いステンレススチールブレスレットの組み合わせの素晴らしさは、世界中の時計ファンが認めるところだ。さまざまな手首のサイズにもぴったりフィットする時計となった上に、高価なモデルにも使用されているセイコーの自動巻きキャリバー6R15を搭載している。サファイアクリスタルと100m防水を採用し、スペック、魅力、クオリティのすべてにおいて、この上なく素晴らしい時計に仕上がっている。SARB033が現在およそ5万円~10万円で販売されているのはそのためだ (日本ではまだほとんどが販売されている)。セイコーがこの時計の新バージョンを発売し、世界中で買えるようになれば、きっと大成功を収めることだろう。 

セイコー スピリット SARB033
セイコー スピリット SARB033

現在入手不可能だが、再び復刻モデルとして脚光を浴びてほしい5本のセイコーモデルは、これで以上だ。果たしてセイコーは、このリストにある時計を発売して、私たちを驚かせてくれるのだろうか?ただ言えることは、セイコーには素晴らしい歴史があり、この5本以外にも魅力的な再販売の可能性が多くあるということだ。だからこそ、ぜひセイコーの歴史とその時計の世界に飛び込んでみてほしい。 

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Jorg Weppelink

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こんにちは、ヨルグです。2016年からChrono24で記者として執筆しています。しかし、Chrono24との関係はそれ以前からあって、時計好きになったのは2003年頃からです。私の友人 …

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