2023年01月26日
 8 分

トレンドのゴールドウォッチ。ブランド独自の金合金の現在

Barbara Korp
Omega-Semaster-Rolex-Yacht-Master-2-1

ゴールドウォッチはトレンドと呼んでよいのだろうか?伝えられているところでは、その歴史は1879年にまでさかのぼる。当時、ジラール・ペルゴがドイツ皇帝ヴィルヘルム1世のために、初めて金無垢の腕時計を製作したとされているのだ。しかし、今確かなことは、需要が高まっているためにゴールドの時計を市場に投入するメーカーが増えていることだ。だがご存知のように、光り輝くものはすべて金という訳ではない。もっと素晴らしいもの、つまり極めてモダンで美しいゴールド合金もある。

ゴールドウォッチを次世代に遺せる財産と考える人もいれば、ファッション、自己主張と捉えて金メッキの時計で十分と考える人もいる。また、見た目や技術的な魅力から、特殊な金合金の時計を狙って選ぶ人もいる。

時計業界ではほぼ常に、必要な硬度を得るために金を合金として加工してきたが、近年はメーカー独自の金合金が市場に投入されることが増えてきた。時計そのものと同様に独自性があり、色合いや耐久性の高さ等、個性的な特徴は多くの時計ファンの心を躍らせる。これらのゴールドウォッチは決して時代遅れではなく、革新的だ。今回は最も人気が高く、最も魅力的な金合金を皆様にご紹介しよう。

ロレックス エバーローズゴールド

エバーローズゴールドの名を聞いたことがある方も多いだろう。なんといっても、有名なロレックスのローズゴールド合金なのだ。では、何がこの名前の裏に隠されているのか、なぜ作られているのかもご存知だろうか。ローズゴールドはその見た目から時計の素材として人気があるが、銅の含有量は多い。銅は酸化しやすく、変色することもある。例えば海水や太陽光、あるいは汗によって、ローズゴールドに含まれている銅が反応する可能性がある。そこで、エバーローズゴールドが開発された。金と銅と少量のプラチナを混ぜた合金だ。プラチナ成分は結合剤の役割を果たし、変色から守ってくれる。同時に、エバーローズゴールドに特別な輝きを与え、その輝きは長く持続し衰えない。

エバーローズゴールドは現在ロレックスの多くのモデルに採用されている。デイトジャストのツートンカラーモデル、GMT II「ルートビア」、メテオライト&ブラックの文字盤を持つエバーローズ デイトナ等、エバーローズゴールドによってロレックスのあらゆる時計が新たな輝きを得ている。筆者のお気に入りはラバーストラップのヨットマスター エバーローズゴールドだ。エバーローズとブラックのみの組み合わせはコントラストが美しい。筆者にとっては、スポーティーとエレガントが完璧に融合したものであり、それこそがロレックスの魅力そのものなのだ。

Rolex Yacht-Master Everose Gold
ロレックス ヨットマスター エバーローズゴールド

オメガ セドナゴールド

2013年からオメガも独自のローズゴールド合金、セドナゴールドを使用している。ベースはやはり金と銅の組み合わせだが、オメガはそれに耐傷性と耐久性を強化するためにパラジウムも配合した。セドナゴールドはオメガだけでなく、同じくスウォッチグループのブランパンにも採用されている。視覚的にはエレガントな色彩の輝きを生み、素材としても実用的だ。しかし、素材以上に秀逸なのはこの合金のネーミングなのである。マーケティングにどれだけの時間とエネルギーを費やしているかが伺える。

セドナとはイヌイットの神の名前だ。海の母であり、つまりシーマスター・コレクションの守護神。それだけでなく、セドナとは準惑星の名前でもある。写真で見ると、合金と同じピンク色をしている。宇宙に関連しているという点でも、オメガと、ムーンウォッチを含むスピードマスター・シリーズにぴったりだ。筆者のお気に入りのセドナゴールドもこのシリーズの一員で、オメガ スピードマスター セドナゴールド ムーンウォッチだ。クラシックなムーンウォッチに、まだ発見されていない天体への憧れが込められている。合金と黒の組み合わせは暗い空に浮かぶ星のようで、探検心を呼び覚ます。ムーンウォッチにこれ以上望むものはないだろう。

Omega Speedmaster Sedna Gold Moonwatch
オメガ スピードマスター セドナゴールド ムーンウォッチ

ウブロ マジックゴールド

ウブロ。これほどまでに新素材の開発に力を注いでいるブランドは他にないだろう。同社がマジックゴールドという非常に特別なゴールドを開発したのも驚くことではない。それは魔法ではなく、2年間集中的に研究した成果なのだ。ただその結果生まれたのは確かに魔法のように、傷のつきにくい18Kの金合金だ。金とセラミックパウダー、正確には炭化ホウ素パウダーでできている。防弾チョッキや装甲と同じ素材だ。素材の融合には非常に複雑で特殊な工程が必要であり、マジックゴールド製の時計は年間数百本しか作れない。

そのため、ビッグ・バン サンブルー IIのようなマジックゴールド製の特別モデルがあるのもうなずける。スイスのタトゥーアーティストとのコラボレーションで生まれたこの時計は、腕時計というよりは彫刻のようで、コレクターズアイテムとして人気が高い。ここでは銅色に近い特殊な合金が重要なのか、それとも特別なデザインの方なのかは議論の余地がある。しかし、素材だけでなく、美しさと贅沢さが完璧に融合していることは間違いない。

Hublot Big Bang Sang Bleu II
ウブロ ビッグ・バン サンブルー II

ウブロ キングゴールド

ウブロはもちろんローズゴールド合金についても独自のものを開発している。キングゴールドだ。これも金、銅、プラチナの組み合わせだ。ウブロによると、この配合でより温かみのある色合いと、ポリッシュ仕上げやサテン仕上げに最適な素材が実現できているそうだ。これだけ聞くと他と同じようなローズゴールド合金のようだが、実物を見ればそうではないことがわかる。キングゴールドは素晴らしく魅力的なのだ!ウブロはこの合金で、非常に生き生きとした燃えるような色合いを作り出すことに成功した。この色彩特性はまさにブランドのイメージにぴったりだ。ルールを新しく定義する最もスタイリッシュなやり方がウブロなのだ。例えば、キングゴールドのクラシック・フュージョン オーリンスキーのように。

Hublot Classic Fusion Orlinski King Gold
ウブロ クラシック・フュージョン オーリンスキー キングゴールド

パネライ ゴールドテック

ダイバーズウォッチ用の特別なローズゴールド合金はあるのだろうか?もちろんある!パネライはゴールドテックで、スポーティーとエレガントの組み合わせがいかに美しいものかを証明してみせた。標準的なローズゴールドより多めに銅を配合した合金だ。また、素材と色の安定性を確保するためにプラチナも加えられている。その結果、海辺の夕日を思わせる、非常に温かみのある色合いに仕上がった。黒文字盤とストラップの組み合わせはクラシックでエレガントな印象だ。ブルーと組み合わせると、何か特別で美しい、驚くような色彩のハーモニーが生まれる。残念ながら、現在パネライのコレクションには、ゴールドテック製はほんのわずかな選ばれたモデルしか存在しない。しかし、パネライ ルミノール マリーナ ゴールドテックのようなモデルを見ると、もっと多くを求めたくなる。

Panerai Luminor Marina Goldtech
パネライ ルミノール マリーナ ゴールドテック

A.ランゲ&ゾーネ ハニーゴールド

ハイエンド時計メーカーのA.ランゲ&ゾーネは2010年からハニーゴールドを使用したモデルを展開している。見た目には、確かにローズゴールドというよりハチミツを思わせる。そして、なぜ独自の合金を扱うのがこれほど難しいのかを教えてくれる模範例のようなものだ。この合金を独占的に生産できる鋳造工場はひとつしかなく、しかも最小ロットは50kgだった。時計のケースが約80gで、A.ランゲ&ゾーネが年間に約5000本しか時計を作らないことを考えれば、これは膨大な量だ。その上、ハニーゴールドはプラチナよりも硬いため、加工はさらに難しい。そのため、最高級モデルにしか採用されていない。しかし、A.ランゲ&ゾーネがこの逆境に負けなかったことは、我々時計愛好家にとってはもちろん幸運としか言いようがない。1815ラトラパント ハニーゴールドのようなモデルには、最も強い感銘を与える時計作りの技と、最も芸術的な素材の仕上げがひとつに溶け合い、永遠のタイムピースとなっている。

A. Lange & Söhne 1815 Rattrapante Honey Gold
A.ランゲ&ゾーネ 1815ラトラパント ハニーゴールド

ロジェ・デュブイ イオンゴールド

ロジェ・デュブイも独自の金合金であるイオンゴールドを提供している。他の合金と同様に、色彩と光沢を長く保つことができる。この合金が他と比べて特別なわけではないが、この合金から作られる時計は特別だ。なぜなら、ロジェ・デュブイのモデルはすべてジュネーブシールを取得しているからだ。フライングトゥールビヨンを搭載したエクスカリバー MT イーオンは他の追随を許さない贅沢な夢の時計だ。とにかくこの時計を見て、スケルトンの美しさにただただ感嘆して欲しい。

Roger Dubuis Excalibur MT EON
ロジェ・デュブイ エクスカリバー MT イーオン

記者紹介

Barbara Korp

時計が単なるアクセサリー以上のものであることを発見した時、私はすっかり時計にハマってしまいました。時計技術の美しさに心を奪われてしまったのです。それと同時に、ほとんどのモデルが私の手首には大きすぎることに失望を感じました。しかし、諦めるという選択肢はなく、その結果、小さなケース径を持つ時計に対する関心が発展することになりました。

記者紹介

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