2022年06月01日
 4 分

トロピカルダイヤルの時計は美しいのか、それともただの壊れた時計なのか?

Thomas Hendricks
Tropical-Dials-Magazin-2-1
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トロピカルダイヤルを持つ時計は、傷ついたものが実はより良いものという場合があるのか?という疑問を抱かせる。「トロピカルダイヤル」という言葉を聞いたことがある方は、それが何を意味し、なぜ話題になるのか気になっているかもしれない。そこで、著者のコレクションから数本のトロピカルダイヤルをご紹介し、このテーマについて競合する意見を取り上げたい。   

トロピカルダイヤルを持つアンティークのロレックス GMTマスター

トロピカルダイヤルとは?

まずは基本から。トロピカルダイヤルとは何なのだろうか?この用語は、時計の文字盤の色や外観が紫外線によって変化したものを指す言葉である。たいていの場合、ブラックの文字盤が茶色っぽくなる、言うなれば時計にとっての日焼けのような変色を意味する。   

視覚的な例で説明するため、著者の個人的なコレクションから、トロピカルダイヤルを持つ時計を2本持ってきた。1本目は1980年代のカルティエ サントス ラウンドである。一部のコレクターは、このモデルがオーデマ・ピゲ ロイヤルオークを思わせることから、”CartiOak”(カルティオーク)と呼んでいる。最初はスレートグレーだった文字盤が、時間の経過につれて油膜を張り、パープル、グリーン、そして錆のようなトーンを帯びる。  

1950年代のジャガー・ルクルト パワーマティックからもわかるように、明るい色の文字盤もトロピカルになる場合がある。こちらは、経年変化によって小さな斑点が増え、元のシャンパン色に比べて色が濃くなっている。それがまさにクールな点で、トロピカルダイヤルはそれぞれユニークなのだ。探してみると、スパイダーダイヤル、スターダストダイヤル、レオパードダイヤルといったニックネームがつけられた、他のスタイルも見つけることができる。どのパターンも、素材、日光、時間のユニークな組み合わせによって起きた結果である。  

ジャガー・ルクルト パワーマティック:古艶を楽しむ時計

文字盤がトロピカルになる理由とは?   

さて、この状態が起こるのはなぜなのだろうか?皮肉にも、20世紀に使われた塗料の多くは、この変色を防ぐために作られたはずが、実は全く逆効果だったのである。その誤算で、どこかで誰かがクビになっていてもおかしくないと思う。しかし、この効果はコレクターの間でかなりの人気があり、この素材を使った文字盤の時計を復刻させるようブランドに要請するコレクターもいるほどである。   

トロピカルダイヤルを持つアンティーク時計は優れた投資対象となるのか?   

もちろん、すべての人がこのような見た目の時計を好むわけではない。トロピカルダイヤルは技術的に言えば傷んだ文字盤、欠陥のある文字盤であり、クリーンな手つかずの外観を好む人であれば、これはおそらく交渉決裂となるだろう。しかしアンティーク時計には、オリジナルのカラーを保っているものも多く、マシュマロを火であぶるように、自分の好みの焼き加減を見つけることができるのだ。   

この外観が好みな人は、トロピカルダイヤルの時計により高いお金を払うことが多い。2021年11月、オークションハウスのフィリップスで、オメガ スピードマスター CK2915-1が340万ドル(約4億4千万円)というスピードマスター史上最高額で落札された。同モデルが2018年にオークションで40万ドル(約5200万円)で落札されたが、億レベルのスピーディの盛り上がりは主にあの美しいミルクチョコレート色のトロピカルダイヤルによるものだ。   

ロレックス デイトナについても同じような状況だ。現時点では、標準的なブラックの文字盤を持つ “ゼニス” デイトナ Ref.16520は平均でおよそ450万円~520万円となっているが、同じ時計のブラウンアイとも呼ばれるトロピカルなインダイヤルリングを備えた “パトリッツィ” バージョンは、およそ650万円~780万円となっている。   

トロピカルダイヤルの中には、他のトロピカルダイヤルよりも価値が高いものがあるのはなぜなのだろうか?多くの場合、これは文字盤の熟成がいかに均一であったかに起因している。均一な色落ちには、芸術的で洗練された、上質なウィスキーのような熟成感があるが、斑点やムラのあるものはただ汚く見えるだけになってしまう。   

いずれにしても、トロピカルダイヤルは今や過去のものであり、各ブランドは根本的な問題を修正している。モダンな文字盤とモダンなスーパールミノバは、時計の寿命が尽きるまで一貫した外観を保つことができる。   

皆さんはこれについてどう思われるだろうか?トロピカルダイヤルにお金をかける価値はあるのだろうか?また、現代のブランドはトロピカルダイヤルを復刻させるべきだろうか?


記者紹介

Thomas Hendricks

私はもともと時計を見て育ったわけではありません。しかし、大学を卒業してから数年後、私はオンラインポータル「Watchonista」でライター兼マーケターとして就職。同僚は私に向かって冗談半分で「誰も後戻りできない時計の世界へようこそ!」と言いました。現在はChrono24でプライベートクライアントアドバイザーとして、人生の大事な節目に完璧な時計を探す人々のお手伝いをしています。

記者紹介

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