ロレックス GMT マスター II Ref.126710BLRO、通称ロレックス “ペプシ” は、おそらく世界中において一目でそれとわかる時計の1つだろう。ロレックスのモデルが一般的に高い認知度を誇ることを考慮すれば、この時計がどれほど特別か理解できる。手首の上で輝く特徴的な青と赤のベゼルは、一度見れば忘れられないほど印象的で、部屋の反対側からでも視線を惹きつける力を持つ。
一方で、もう少し控えめで洗練された印象を求める人には、ペプシより後にリリースされた、ロレックス GMT マスター II Ref.126710BLNR、ロレックス “バットマン” として知られているモデルがある。現時点でどちらも非常に需要の高いモデルであり、iOSユーザーなら公式Chrono24アプリ上のChrono24 バーチャルショールームで試着してみることができる。今回、この特別な2つのモデルに焦点を当て、その魅力と背景に迫ってみたい。
目次
GMT マスターの原点
GMT マスター IIが生まれる前には、GMT マスターが存在していた。この時計は、大陸間飛行の勃興および今は亡き航空会社と永遠に関連づけて考えられることだろう。1950年代当時、軍関係者ではない民間人も、ついに飛行機で異国へと旅ができるようになり始めていた。その結果、当時のアメリカ最大の大陸間航空会社パンアメリカン航空は、パイロット用に新しいタイプの時計、つまり同時に2つのタイムゾーンを表示できる時計を必要としていた。そして彼らはごく自然にロレックスに助けを求めたのだった。
このリクエストに応えるべく、ロレックスは文字盤に4本の針を持つ新しい時計を開発した。この4本目の針は回転するベゼルに表示される24時間目盛りを指し、持ち主に2つのタイムゾーンの時刻を同時に知らせることができた。パイロットが容易に昼と夜を見分けられるよう、ベゼルは独特な夜を表す青と昼を表す赤とに分けられたのである。パンナムはロレックス GMT マスターを長距離フライトの乗務員へ支給することを決め、他の複数の航空会社もその後これに続きGMT マスターを公式時計とするようになった。
実際、1960年代にコンコルドが最後のテスト飛行を行った際、2人のパイロットはどちらもロレックス GMT マスターを着用していた。その時点で、この時計はすでに象徴的なモデルとしての地位を築きつつあったのである。
GMT マスター IIの登場
GMT マスター IIは1983年にRef.16760でデビューした。ややこしいのは、少なくとも最初はこれがオリジナルのGMT マスターの終焉というわけではなかったことだ。代わりに、ロレックスはGMT マスターを90年代後半まで製造し続けた。この2つのコレクションは非常によく似ているものの、微妙な違いがいくつかあった。手始めに、Ref.16760はより厚めのケースで「ファットレディ」と呼ばれている。また、より厚いリューズガード、サファイアガラスを採用。そしてより重要なのは、GMT マスター IIにはいくつかの技術的な面において、その前機種をしのぐということだ。
それは、単独で調整可能な時針を持つ新しいムーブメント、キャリバー3085によるところが非常に大きい。これはつまり、秒針を止めたり分針や24時間針に影響を与えることなく時間を1時間ずつ調整できるということを意味している。回転ベゼルとこの機能により、3つ目のタイムゾーンを読み取ることができるようになった。GMT マスターと区別するため、Ref.16760には「コーク」として知られる赤と黒のベゼルのみが採用された。
Ref.16760の後にはGMT マスター II Ref.16710が続いた。これにはペプシ、オールブラック、オリジナルのコークと、3つのベゼルオプションがある。ロレックスはこのモデルを2007年まで製造し続け、その製造終了の日はスチール製のロレックス GMT マスター IIのファンにとっては暗い1日となった。またファン達は、バーゼルワールド 2019でロレックスが人気のGMT マスター II ルーネット ノワール 116710LNの生産終了を発表した際にも同じように失望を表した。
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バットマンの誕生
2005年、ロレックスはセラミックのセラクロムベゼルを採用した最初のGMT マスター II Ref.116718LNをリリースした。当時ロレックスは2色のセラミックベゼルを作ることは不可能だとしており、2007年にRef.16710が生産終了となってからはGMT マスター IIはブラック1色のベゼルのみだった。
8年後、ロレックスはRef.116710BLNRというもう一つの驚きの発表を行った。このモデルは “バットマン“ としてよりよく知られている。これはロレックスの時計の中で2色のセラミックベゼルを持つ最初の時計だった。それは期待していたような青と赤のベゼルではなく、GMT マスター IIコレクションの中では全く新しいカラーコンビネーションである、青と黒だった。これが人々に受け入れられるには少々時間がかかったものの、スチール製の “ペプシ” の代わりが見つからない状態において、“バットマン“はすぐに独自のファンを獲得していった。
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待望のスチール製ペプシ、ついに復活
そして2014年、ロレックスは考えられないことをやってのけた。“ペプシ” GMT マスターIIを新しいセラクロムベゼルで復活させたのだ。ただし、この新作は18金ホワイトゴールドモデルのみの展開であった。これはスチール製モデルを待ち望んでいた時計ファンにとっては大打撃だった。そして、その願いが叶うにはさらに4年を要したのである。
2018年にリリースされたロレックス GMT マスター II Ref.126710BLRO ペプシはセンセーションを巻き起こした。まず第一に、それは初めてのセラミックベゼルを採用したスチール製のペプシ GMT マスター IIだった。第二に人々が予想していたような無骨なオイスターブレスレットではなく、ドレッシーなジュビリーブレスレットだったのだ。でもそんなことは問題ではなかった。Ref.126710BLROは、需要が供給をはるかにしのぐ大ヒットとなった。
2019年、ロレックスはバットマンの最新版であるRef.126710BLNRを発表し、それは同じような道を辿っている。それがなぜかは理解に難くない。どちらのモデルもロレックスの現代史の重要な節目を表しているのだから。そして、どちらのモデルも手首の上でどれだけ素晴らしく見えるかについては言うまでもない。
もちろん、これほどまでに人気の高い近隣のロレックス正規販売店で気軽に試着できるわけではない。きっと笑われてしまうだろう。しかし、Chrono24のバーチャルショールームであれば、スマートフォン一つで、これらの憧れの時計を自宅で存分に試着することが可能である。気に入った方は、Chrono24で両モデルとも取り扱っているので、購入を検討していただきたい。