多くの方がご存知のとおり、パテック フィリップは、大人気だったステンレス製ノーチラスの生産を終了した。ブランドのCEOであるティエリー・スターンは2021年、美しいグリーンの文字盤を備えたモデルを最後に、有名なノーチラス Ref.5711の生産を終了することを発表したのだ。このモデルが最後に生産されたレギュラーモデルとなったが、その後ティファニーために170本限定で生産された、ティファニーブルーの文字盤を持つノーチラスが後継モデルとなった。時計界のニュースをフォローしている人なら、この時計が世界中で大きな話題を呼んだことをご存じだろう。しかし、それからわずか数ヶ月後、ステンレス製のノーチラスはもう存在しないのだ。では、パテック フィリップは次にどんなモデルをデビューさせるのだろうか?
パテック フィリップ アクアノートのストーリー
パテック フィリップをご存知の方なら、次善策としてパテック フィリップ アクアノート Ref.5167/1Aを挙げるだろう。有名ブランドが1997年に入門レベルのスポーツウォッチを発売した際は、若いユーザーをターゲットに、陸海両方で使える多目的時計として市場に出していた。また、この時計はラバーストラップを備えた初のパテック フィリップでもあり、当時、純粋なパテック フィリップの愛好家の間では冒涜的と考えられていた。しかし、このブランドは、新しく若いユーザーたちを惹きつけるためには、大きな魅力があって、新しい素材を使用した、さらに親しみやすい価格帯のスポーツウォッチを考案すべきだということを完璧に理解していた。
アクアノートのデザインは、著名な時計デザイナーのジェラルド・ジェンタが手がけたアイコニックな時計、ノーチラスがベースとなっている。パテック フィリップは、アクアノートのインスピレーションの源を決して秘密にしてはいない。秘密にする必要があるだろうか?確かに、デザインの影響が明らかで、価格も安いため、パテック フィリップ アクアノートはすぐに「貧乏人のノーチラス」となった。しかし、この時計はヒット商品となり、コレクションも同時に拡大していった。この25年間で、日付表示を備えたアクアノート、トラベルタイムのモデル、クロノグラフのエディションなど、さまざまなサイズのモデルが登場した。ここからは、アクアノートの各モデルについて、ノーチラスと比較してみたい。いまだに伝説のノーチラスの弟分にすぎないのか、それともアクアノートに支持がまわったのだろうか?
入門レベルのパテック フィリップ アクアノート
まずは、ステンレス製のパテック フィリップ アクアノート Ref.5167/1Aから始めたい。1997年に発表されたこの時計は、長年にわたっていくつかのアップデートが行われてきた。パテックは時計を改良し、全体的なデザインを向上することに成功した。40.8mmのステンレス製ウォッチは、ブラックのラバーストラップとステンレスブレスから選択できる。パッと見ただけでも、ベーシックなアクアノートは、ノーチラス Ref.5711のようなアイコニックで印象的な存在からは程遠いことがわかる。むしろノーチラスにインスピレーションを得ながらも、ノーチラスではない、パテック フィリップの入門レベルのスポーツウォッチという、まさに意図したとおりの印象だ。そしてそれは理にかなっている。またアクアノートは、単純にノーチラスのレベルに及ばないのだと著者は思う。しかし、パテックのステンレス製ノーチラスをめぐる熱狂は、間違いなくアクアノートに影響を与えていた。ブラックのラバーストラップを備えた現行アクアノートの定価は2万1650ドル(約280万円)だが、ご存知のとおり、正規販売店でこの価格で入手するのは事実上不可能である。Chrono24での価格は約970万円からと、定価の4倍近くにまでなっており、この時計は間違いなく人気であると言える。また、18Kローズゴールドのバージョンもあり、定価は約450万円強となっている。しかし市場での販売価格はおよそ1500万円近くから始まり、1700万円台にまで簡単に上昇する。
アクアノートシリーズの次に登場するのは、18Kホワイトゴールドの少し大きめの兄弟モデル、Ref.5168Gだ。正直なところ、著者はこちらの方が好みである。42.2mmのケースは、小さいモデルよりもしっくりくる気がするのと、このリファレンスのカラーも気に入っている。この時計には、グリーンの文字盤にグリーンのラバーストラップ、ブルーの文字盤にブルーのラバーストラップを持つモデルの2種類があり、いずれもステンレス製モデルよりも魅力的で、鮮やかな印象を受ける。この2本のモデルの定価は約520万円弱となっている。しかしChrono24で見てみると、ホワイトゴールドのモデルは非常に人気が高く、その販売価格は約1500万円~1600万円までに到達する。
パテック フィリップ アクアノート クロノグラフ
ここで、著者が個人的に気に入っているパテック フィリップ アクアノート、アクアノート クロノグラフ Ref.5968Aに話を移したい。この時計は、ホワイトゴールドの日付表示を備えたモデルと同じ42.2mmケースを採用し、ケースの右側には2つのプッシュボタンによるクロノグラフ機能が追加されている。個人的には、オレンジ色のクロノグラフのディテールを統合することにより、時計により存在感と活気を与えている点が気に入っている。この時計には、ブラックとオレンジのラバーストラップが付属している。私からのアドバイスとしては、すぐにブラックのストラップを交換し、オレンジ色のストラップで着用すること。この組み合わせで、カラフルで華々しい印象の時計が完成する。国内参考価格は515万1600円となっているが、さすがにこの定価で入手するのは不可能に近い。その希少性と人気の高さから、Chrono24における希望価格は驚きの約2500万円から始まり、3200万円前後まで上昇する。さらに驚きなのは、同じ時計で18Kホワイトゴールド製のグリーンとブルーのバージョンもあるものの、ステンレス製のクロノグラフモデルと同じくらい高価であることだ。Ref.5186Gより価値の高い素材を使用し、定価も約190万円以上高いにもかかわらず、このありさまだ。つまり、ステンレス製のアクアノート クロノグラフは非常に人気の時計なのである。
パテック フィリップ アクアノート トラベルタイム
最後に紹介したいのは、パテック フィリップ アクアノート トラベルタイム Ref.5164Aである。このアクアノートの特別バージョンは、第2タイムゾーンの時刻を表示するコンプリケーションを搭載しており、世界を飛び回る人々にぴったりの時計となっている。しかし、あまり旅行に行かない人にとっても、腕にはめると美しい、スタイリッシュなスポーツウォッチだと思う。大型の日付表示とデイ/ナイト表示を備え、アクアノートの伝統であるブラックの文字盤とブラックのラバーストラップが付属している。パテック フィリップはブラウンの文字盤にローズゴールドのアクセント、ダークブラウンのストラップを組み合わせた、18Kローズゴールドの少し華やかなバージョンも提供しており、こちらはプレーンなブラックのバージョンよりも鮮やかな時計となっている。ステンレス製モデルの国内参考定価は400万6800円だが、Chrono24における販売価格は1500万円~1700万円に簡単に到達する。Chrono24で入手できるローズゴールドのアクアノート トラベルタイムの販売価格は約2000万円から始まり、あっという間に2600万円にまで上昇する。
パテック フィリップ アクアノートのステータス
ステンレス製ノーチラスの廃止は、間違いなくブランドのパテック フィリップ コレクションのファンの心に穴を開けることになるが、アクアノートは確実に多くの人々の痛みを和らげることができるように見える。ノーチラス Ref.5711のようなアイコニックなモデルに取って代わるのは明らかに難しいことだが、アクアノートのさまざまなモデルはノーチラス コレクションの人気から利益を得ている。主力モデルのノーチラスがなくなった今、アクアノートはその素晴らしい代替モデルとなるべく存在する。パテック フィリップ アクアノートは、「弟分」というイメージを見事に払拭し、このモデルの魅力は、多くの人に愛されている。著者としては、現在販売されているステンレス製のノーチラスモデルよりも、アクアノート クロノグラフ Ref.5968Aを選びたい。この選択をするのは、ノーチラス Ref.5711を愛する純粋主義者であることも理由の1つだが、アクアノート クロノグラフが素晴らしい時計であることも理由である。オレンジ色のラバーストラップは、普段使いにぴったりのパテックだと思う。
アクアノートのほとんどのモデルの価格は、多くの人にとって実際に所有することを考えるのもあり得ないようなものになっているが、購入する余裕があるのであれば、ぜひ一度目を向けてみてほしい。昨年はどのモデルもかなり値上がりしたが、ここ数ヶ月は少し落ち着きを見せている。限られた生産数とアクアノートの人気の高さを考慮すると、価格は安定し、もしかしたら再び上昇するかもしれない。ノーチラスがなくなった今、パテック フィリップのステンレス製スポーツウォッチなら、アクアノートがおすすめだ。アクアノートが今後も人気の時計となることは間違いない。