2022年09月07日
 5 分

パテック フィリップ ノーチラスはなぜここまで高いのか?

René Herold
E_Magazin_2_1

パテック フィリップ(Patek Philippe)のノーチラスは、多くの時計愛好家にとっていつかは手に入れたい「聖杯たる時計」であり憧れの存在だ。特にその最高峰とされているのは、ジェラルド・ジェンタがデザインした1976年の初代モデルに最も近いステンレススチール製の3針モデル。ノーチラスは誕生した時から決して手頃な値段の時計ではなく、パテックは「世界一高価な時計はステンレススチール製」というキャッチフレーズでこの時計を宣伝していたほどだ。しかしここ数年、ノーチラスの価格はまさに爆発的に上昇し、呆れるほどの金額となっている。3針と日付の付いたシンプルなステンレススチール製の時計にもかかわらずだ。では、ノーチラスの何が、人々に1000万円以上の金額を払っても良いと思わせるほど特別なのだろうか。一度詳しく見てみよう。 

The absolute dream watch for many enthusiasts: the Patek Philippe Nautilus 5711/1A-010.
多くの人にとってはまさに憧れの時計:パテック フィリップ ノーチラス5711/1A-010

ノーチラスの価格はどのように決まる?

パテック フィリップはスイスの老舗時計メーカーであり、オーデマ・ピゲ(Audemars Piguet)、ヴァシュロン・コンスタンタン(Vacheron Constantin)とともに、高級時計の世界では「世界三大時計ブランド」と呼ばれている。これらのメーカーへの信頼は高く、パテックに多額を支払うのもそれが一因だ。 

そして、手にしてみればその時計の品質は最高レベルだ。パテックのモットーは常に「量より質」。最高品質の素材を選ぶだけでなく、最高水準の作りにも重きをおいている。そのため、2400人近い従業員の大部分が自社で職業訓練を受けており、部門によっては訓練に何年もの時間と多額のコストをかけている。また、自社でのキャリバー開発も、高精度な製造設備をも一部自社で開発しなければならず、時間とコストがかかる。  

最高の品質を追求しているため、パテックの生産規模は比較的小さい。年間最大製造数は6万本だ。ちなみに、競合他社のロレックスは年間に推定で最大100万本製造している。そのためパテック フィリップの時計は希少で高級なものなのだ。  

そしてこれらの要素がすべて1本の時計の価格に反映される。こうしてみると、ノーチラス5711/1Aのラストエディションのメーカー希望小売価格が401万5000円なのは極めて適正だ。   

定価 VS 市場価格  

しかし問題は、パテックの神聖な製造工場から毎年送り出される製品数が少ないため、ノーチラスを正規の価格で手に入れるのは原則的にほぼ不可能なことだ。パテックの正規販売店では8年から10年の待ち時間が当たり前になっている。もちろん、そもそもウェイティングリストに載せてもらえればの話である。 

需要が店舗販売での時計の供給量を何倍も上回ったため、多くのコレクターや時計愛好家は自由市場に目を向けるようになった。需要と供給の法則に従って、ここでの価格は以前からずっと定価より高かったが、それでも通常の範囲内だった。例えば、2017年8月にはアイコニックなダークブルー文字盤のノーチラス5711/1A-010がChrono24で450万円以下で購入できていた。  

しかしその後、価格は上昇の一途をたどり、2年前の2020年8月には平均価格が750万円を超える。そして2020年末、パテックのティエリー・スターン社長が後継機を投入せずに5711をプログラムから外すと発表すると、まさにヒステリー状態となった。様々なオークションで史上最高価格を記録したという報道がこのムードをさらに煽り、ノーチラスを夢のような利回りの儲かる投資対象と見た投機家たちがさらに追い討ちをかけた。その結果、自由市場で次々と高値を更新してゆき、そうこうするうちに2500万円以上の金額で取引されるようになった。 

パテック フィリップ ノーチラス 5711/1A-010 のパフォーマンス
パテック フィリップ ノーチラス 5711/1A-010 のパフォーマンス

市場はやや落ち着きを取り戻したが、5711/1A-010の価格は約2300万円で、いまだに当時の定価の約6倍である。  

5711でなければならないのだろうか? 

5711の人気が過熱したせいで、ノーチラス・コレクションには他にもいくつか別のモデルがあることを忘れてしまっている人が多い。例えば、現行のステンレススチール製モデルにはグレーダイヤルのノーチラス 5726/1A-001がある。クラシックなノーチラス・ルックで、アニュアルカレンダーとムーンフェイズ表示を搭載し、市場価格は1300万円強だ。 

Alternative zur 5711/1a – das Schwestermodell 5726/1A mit Jahreskalender und Mondphase
5711/1aに代わる選択肢:アニュアルカレンダーとムーンフェイズを搭載した姉妹モデル5726/1A

また、アンティーク分野でも魅力的な価格の時計を見つけることができる。その一例がノーチラス 3800/1Aで、2022年8月現在Chrono24では約820万円で購入できる。製造されたのは1980年から1990年までの期間だ。5711とは異なり、3800は直径が37mmとやや小さいため、女性にとって魅力的な時計でもある。 

ステンレススチールでなくても良ければ、5711/1G-001も見てみて欲しい。この時計は5711のホワイトゴールドバージョンで、グレーの文字盤だ。Chrono24掲載のこのモデルの価格は2022年夏時点で約1530万円であり、ステンレススチール製よりも数百万円安い。 

まとめ 

パテックフィリップ ノーチラスは常に高価な時計だった。しかしそれも、このモデルの作りが水準以上の品質であることと、世界でも指折りの名声を誇る時計メーカーの名門ブランドであることを考えれば納得できる。だが、販売店で購入可能な数が少なく、何年もの待ち時間が常態化しているため、自由市場で高額なプレミア価格を払わないと手に入らなくなっている。この時計に正規の定価の5倍あるいは6倍の価値があるかどうかを決めるのは、あなた自身だ。 


記者紹介

René Herold

こんにちは、レネー・へロルドです。Chrono24には求人情報を見て応募しました。正直言うと、時計というテーマは当時私にとってそれほど大きな意味合いを持っ …

記者紹介

最新記事

patek_02
2022年06月20日
パテック フィリップ
 4 分

パテック フィリップ:ブロック社のためのアールデコスタイル

Sebastian Swart