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パルミジャーニ・フルリエ:革新的技術で魅せる新進気鋭ブランド

Tim Breining 著
2025年5月28日
7 分
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パルミジャーニ・フルリエ:革新的技術で魅せる新進気鋭ブランド

パルミジャーニ・フルリエが設立されたのは1996年であり、非常に長い歴史を持つ時計業界では比較的若いブランドである。にもかかわらず、同社は業界の老舗大手でさえ持ち得ていない、並外れた技術力と独自のサプライヤーネットワークを有している。これは主に二人の人物による功績だ。まず一人はブランド名の由来となったミシェル・パルミジャーニ。複雑な機械式時計やオートマタの修復師として名を馳せた人物だ。オークションハウスの専門家たちが手の施しようがないと諦めた時計を膨大な作業時間を費やして修復したことで、裕福な顧客の信頼を獲得し、彼らのかけがえのない展示品の修復を任されるようになった。もう一人は当時サンド・ファミリー財団の代表を務めていたピエール・ランドルトである。この財団はサンド製薬会社の創業者エドゥアール・サンドの一族の資産を基盤としている。1980年代、パルミジャーニはエドゥアールの息子、モーリス=イヴ・サンドのコレクションの修復と保全を委託された。この関係を通じて、独自の時計でも事業に参入したいという願望が芽生えた。パルミジャーニにはそのための専門知識があり、サンド・ファミリー財団には資金力があった。当初は自社でムーブメントを設計・製造する能力がなかったため、名のある現存メーカーや、すでに廃業したメーカーのムーブメントを用い、独自の改良を加えたり仕上げを施したりしていた。

パルミジャーニ イオニカ エブドマデール(2000年)
パルミジャーニ イオニカ エブドマデール(2000年)

サンド・ファミリー財団のグループ会社「ポール・オルロジェ」

2000年前後より、地元企業3社の買収を皮切りに製造工程の垂直統合が始まった。まず挙げられるのが、旧ブルーノ・アフォルテ社だ。現在はレ・アルティザン・ボワティエの名でパルミジャーニのケース製造を担っており、他社からの注文も受けている。これはちなみに、サンド・ファミリー財団の時計製造部門であるグループ会社「ポール・オルロジェ」に属するすべての企業に共通する特徴でもある。次に、あまり注目されず過小評価されがちだが、パルミジャーニ(および他の顧客)の時計に不可欠な部品の製造を2001年から担っているのが、エルウィン社である。エルウィンはシャフトやネジといった精密な旋削部品や、コラムホイールのように同じく切削加工によって製造される比較的複雑な部品の専門メーカーである。自社一貫製造を実現するうえで重要な構成要素だが、顧客にとっては一見して具体的な付加価値をもたらすようには思えないかもしれない。だが、これらの部品も設計・製造する必要がある。

パルミジャーニ トンダ(2020年)
パルミジャーニ トンダ(2020年)

完全な自社製造を目指すブランドにとって大きな難関のひとつが脱進機構のコンポーネント群である。テンプやアンクル、特に高度な技術が求められるヒゲゼンマイなどだ。まさにこういった部品を製造できるのがアトカルパ社だ。前述の部品を含む調速機構をすべて製造・供給しており、2000年からグループの傘下にある。2003年にはエンジニアリングと製造の専門知識を備えた自社製ムーブメント製造会社、ヴォーシェ・マニュファクチュール・フルリエ社が創設された。サンド・ファミリー財団の中でも最も名の知れた企業と言えるだろう。ヴォーシェについても、パルミジャーニ専用のキャリバーだけを設計・製造するのではなく、同業他社の外部受注も引き受けるという方針が貫かれている。顧客はカール・スッキー&ゾーネのような小規模で若いブランドから、大口の取引先であり株式保有者でもあるエルメスに至るまでと多岐にわたる。2005年には、現時点でグループ内で最も新しい企業であるカドランス・エ・アビアージュ社が設立され、社名のとおり、文字盤の製造を担っている。

パルミジャーニ・フルリエの現在

見るからに順調そうなサクセスストーリーであるが、さまざまな情報源によると、同社が黒字を達成したのは創業から実に26年後の2022年だったという。それまでの何年にもわたる赤字はすべて財団側が受け入れ、あるいは補填してきた。パルミジャーニ・フルリエが本当に情熱を注いだプロジェクトであることが分かる。ここ数年、ブランドおよびそのサプライヤー企業の買収話をマスコミが度々報じているが、パルミジャーニについて過度な心配をする必要はないだろう。初めて黒字を達成したこと(主にトンダ PF コレクションによるもので、売上の9割以上を占める)に加えて、時計業界の大手ブランド各社が、直接的または間接的にパルミジャーニおよびヴォーシェと関わっているのだ。具体的には、パテック フィリップ、オーデマ ピゲ、リシャール・ミル、エルメス、ショパールといった名だたる企業が、資本参加や顧客としてパルミジャーニと関係を持っている。売却されるか否かに関わらず、ロレックスに買収された後のカール F. ブヘラのように、パルミジャーニがそのムーブメントや製造能力とともに消滅してしまう可能性は低いだろう。

パルミジャーニ・フルリエの現行コレクション

時系列上もっとも早く登場したコレクションに敬意を表し、トリックを最初にご紹介しよう。トリックコレクションは古典的なデザインとローマ建築の影響を特徴としており、溝付きベゼルで知られている。もちろん、創業当初のモデルと比べて、現行のトリックコレクションは現代の顧客の嗜好に合わせたものとなっている。

パルミジャーニ トリック パーペチュアルカレンダー(2025年)
パルミジャーニ トリック パーペチュアルカレンダー(2025年)

2つ目の現行コレクショントンダ PFは業績を上げてすでに同社の柱となり、ブランドに最盛期をもたらしたモデルだ。以前のトンダコレクションをよりスポーティーに解釈したものである。ステンレス製スポーツウォッチが相変わらずトレンドであることも、一体型ステンレスブレスレットを備えたこのスポーティーかつエレガントな時計が購入者に非常に好評だという事実に間違いなく貢献している。パルミジャーニはトンダ PFをさらにスポーティーに解釈したモデルもトンダ PF スポーツという名で展開しており、粗めの溝付きベゼルでスポーティーさを演出している。

パルミジャーニ トンダ PF GMT ラトラパンテ(2025年)
パルミジャーニ トンダ PF GMT ラトラパンテ(2025年)

特に複雑なムーブメントを搭載していたり、高度な職人技で作られたりした特別モデルは、現在「オブジェ・ダール」コレクションとして展開されており、現時点で同社の公式ウェブサイトに掲載されているのはラルモリアル・レペティシオン・ミステリューズというモデルのみだ。

パルミジャーニ・フルリエの未来

現在、業績は好調で、傘下に持つ複数のサプライヤーによって、自社グループの枠を超え、時計業界全体において確固たる存在感を築いている。しかし、買収の噂があるため、今後数年、数十年でパルミジャーニがどうなるか、確かな予測を立てることは難しい。近年の経済的成功にもかかわらず、パルミジャーニ・フルリエは傾向的に大衆の好みとは一線を画し、独立系で技術的に優れ、造形的にもユニークな魅力を持つブランドを評価する愛好家向けの存在であることは変わらない。コレクターにとっては、ブランド初期の特徴的なトノー型ケースを持つモデルや、伸縮する針を備えたオーバル パントグラフのような魅力的な珍品などは、感動を呼ぶ興味深い逸品ではあるが、オークションで記録を塗り替えたことはない。トンダ PFなど、同社はこれまで以上に現代の嗜好に即した製品を生み出しているが、ありふれて平凡なものにはなっていない。

文字盤の形状に沿って伸縮する繊細な針を備えた、唯一無二のオーバル パントグラフ
文字盤の形状に沿って伸縮する繊細な針を備えた、唯一無二のオーバル パントグラフ

 

記者紹介

Tim Breining

Tim Breining

2014年に工学部の学生であった際に、時計への興味を見いだしました。初めはちょっと興味があった時計というテーマは、徐々に情熱に変わっていきました。Chrono24 …

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