2021年06月30日
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フォーミュラ1とその時計、ブランド、モデル

Sebastian Swart
TagHeuer_RichardMille_Hublot

F1とプロフェッショナルな計時は昔からずっと表裏一体の関係にある。F1のスポンサーリストにはメインスポンサーであるロレックスの他に、ウブロやリシャール・ミルなどの若いブランドも名を連ねている。これらのブランドはフェラーリやマクラーレンなどのF1チームにおいて「ポールポジション」を獲得したようで、一部途方もない価格の時計をレーサーに提供している。また、タグ・ホイヤーはスポンサーとなることに関して誰もが認める先駆的存在。というのも、同社は1969年からF1にてスポンサーとして活動しているのだ。この記事では、タグ・ホイヤー、ウブロ、リシャールのモデルをいくつか紹介し、それらの時計に投資価値があるのかどうかを説明していく。

タグ・ホイヤー ― サーキットの時計パイオニア

時計とF1の話をするときに、最初に出てくることが多い名前は「ジャック・ホイヤー」。それもそのはず、このスポーツウォッチのパイオニアは彼自身が開発したクロノグラフを個人的に世界中のピット・レーンに持ち込んだのだ。彼は時計にカレラ、モナコ、モンテカルロなどの名前を付け、それによって時計の方向性をはっきりと示した。1960年代と1970年代にホイヤーの時計を腕に着けていないレーサーなどいなかった。それはレーシングにおいて安全に関するレギュレーションがまだ完全に規定されていなかった時代。プロのレーサーは死を恐れないタフガイであった。

おそらく最も有名なホイヤー クロノグラフはオータヴィアだろう。この時計の名前は「AUTomobile (自動車)」と「AVIAtion (航空機)」を合わせた造語である。1962年、この時計はレーシングカーのダッシュボードから腕時計へと生まれ変わり、成功を収めたレーサーの手首に巻かれるようになった。当時最も有名であったオータヴィア着用者はヨッヘン・リント、ジョー・シフェール、そしてマリオ・アンドレッティ。彼らはこの時計を宣伝のためだけではなく、プライベートでも着用していた。

当時作られたバルジューの手巻きキャリバーを搭載するヴィンテージ オータヴィアは、現在時計コレクターとF1ファンにおいて最高の名声を得ており、そのため非常に人気が高い。クラシックカーと同じく、この時計においても製造年、ムーブメント、状態に応じて価値の上昇が期待できる。例えば、Ref.2446 “ヨッヘン・リント” の価格は過去4年間において約130万円上昇し、現在は約230万円となっている。

Heuer Autavia ref. 2446 "Jochen Rindt"
ホイヤー オータヴィア Ref.2446 “ヨッヘン・リント”

タグ・ホイヤーは2017年にヨッヘン・リントが愛用していたRef.2446の新型モデルRef.CBE2110を発表。”ヨッヘン・リント” の復刻モデルはオリジナルモデルに比べて大幅に大きくなり、自社製キャリバーを搭載した。しかし、このモデルが爆発的なヒットを記録することはなかった。確かに人気はあるのだが、オリジナルモデルを愛するファンにとっては大きすぎるのだ。これは価格にも見ることができ、定価の4750ユーロ (約62万円) よりも大幅に安い約47万円で手に入れることができる。

2021: タグ・ホイヤーとF1

2021年、タグ・ホイヤーとレッドブル レーシングチームは2024年までパートナーシップを延長することを公表した。ベルギー人レーサーのマックス・フェルスタッペンと、メキシコ人レーサーのセルジオ・ペレスはそれまでタグ・ホイヤーの宣伝を行う。しかし、レーシングドライバーにも時計にも昔ほどの華やかさは感じられない。フォーミュラ1コレクションは3針時計とクロノグラフで構成されており、一部のモデルにはクォーツムーブメントが搭載されている。2019年にリリースされた自動巻きクロノグラフのマックス フェルスタッペン スペシャル エディションは、バルジュー7750をベースとするホイヤー キャリバー16を搭載しており、ブラックのベゼル上に刻まれた「MAX VERSTAPPEN」の文字など、多くの赤いデザイン要素を持っている。

TAG Heuer Max Verstappen Chronograph ref. CAZ2018.BA970
タグ・ホイヤー マックス フェルスタッペン クロノグラフ Ref.CAZ2018.BA970

タグ・ホイヤー フォーミュラ1の時計は、昔のホイヤーの名機ほど投資に適しているわけではない。2019年におけるマックス フェルスタッペン スペシャル エディションの定価は3100ユーロ (約40万円) であった。この時計は現在でもほぼ同じ価格で手に入れることができる。自動巻きクロノグラフ「セナ」の希望小売価格も同じく3100ユーロであるが、Chrono24におけるこの時計の価格はそれよりも約13万円安い。新しいコレクションのモデルの価格が将来的に大きく上がることは、あまり期待できないだろう。

ウブロ ― F1のための高い時計技術

1980年に設立されたウブロは、比較的若いスイスの高級時計ブランド。この時計ブランドは効果的な最新材料を革新的技術と巧みに組み合わせている。イエローゴールドとセラミックを組み合わせた「マジックゴールド」はウブロだけが使用できる合金で、他にカーボンやチタン、サファイアも使用される。大型で明快な時計によってウブロが求めているもの、それは目立つことだ。

ウブロは数年間にわたってフェラーリのスポンサーを務め、とりわけ4度のF1ワールドチャンピオンに輝いたセバスチャン・ベッテルに特別な時計を提供してきた。ベッテルはビッグ・バン フェラーリ ウニコ カーボン レッド セラミック (Ref.402.QF.0110.WR) を人前で好んで着用した。この時計のケースは直径45mmで、その名前から察せられる通り、セラミックから作られている。時計内部で時を刻んでいるのは72時間のパワーリザーブを備えたキャリバーHUB1241。文字盤はスケルトン仕様なので、時計の正面からムーブメントを眺めることができる。特に人目を引くのがフェラーリレッドのベゼルで、それ以外すべてブラックのケースからはっきりと際立っている。

この時計は投資に適しているのだろうか?この時計の定価は2万9000ユーロ (約380万円) で、新品モデルの市場価格は約260万円となっている。この時計の価格が落ち着くまでもう少し時間が必要であるが、2021年3月以降軽い上昇が見られている。

Hublot Big Bang Ferrari Unico Chronograph ref. 402.QF.0110.WR
ウブロ ビッグ・バン フェラーリ ウニコ クロノグラフ Ref.402.QF.0110.WR

もう1つの興味深いウブロ フェラーリコレクションの時計は、2021年初頭に発表されたビッグ・バン フェラーリ 1000 GP。この時計が有名なレーシングドライバーの手首に見られたことはまだないが、事実がすべてを物語っている。この時計はカーボンセラミック製で、これはF1レーシングカーのブレーキディスクにも使用されている複合材料である。45mmのケース内部に収められているのはフライバック機能を搭載した自動巻きキャリバーHUB1243。この時計はわずか20本の限定生産で、価格は5万1900ユーロ (約680万円) となっている。

タグ・ホイヤーの時計との直接的な比較はおそらくフェアじゃないだろう。価格に関してウブロはタグ・ホイヤーから一線を画しており、はるかに高級な価格帯に属している。これはケースやブレスレットに使用されている材料や、ムーブメントのレベルにも反映されている。

リシャール・ミル ― フェラーリとマクラーレンのためのハイテク時計

リシャール・ミルは極めて頑丈な高級ハイテク時計をアスリートのために作っており、レ・ブルルーのマニュファクチュールではレーシング、および航空・宇宙飛行分野の特殊材料を使用するエンジニアが働いている。それらの特殊材料には、カーボンの他に、炭素をベースとしたグラフェン、グレード5チタン、およびアルミニウム・リチウム合金などが数えられる。もちろん、リシャール・ミルは自社製キャリバーも提供しており、そこで使用されている部品の大部分も同じく珍しい材料から作られている。正直なところ、リシャール・ミルと比べて、技術的な面に関してタグ・ホイヤーの大半のモデルはエントリーレベル以下と言わざるを得ない。それに対し、ウブロはミルと同じような路線にいるが、リシャール・ミルの方が一歩進んでいる。

ウブロの時計とは対象的に、リシャール・ミルは多くのアスリートによってハードな試合中にも着用されている。有名な例はテニス選手のラファエル・ナダルとバスケットボール選手のレブロン・ジェームズだ。レブロン・ジェームズは数千万円のリシャール・ミルを着用して試合に出た時、大きなセンセーションを巻き起こした。

ミック・シューマッハ、シャルル・ルクレール、フェルナンド・アロンソ、キミ・ライコネン ― リシャール・ミルは2021年のF1シーズンのために有名なレーシングチームの大物レーサーを確保できたようだ。ダニエル・リカルドとランド・ノリスもリシャール・ミルのブランドアンバサダーで、両レーサーは過去にRM 11-03 オートマティック フライバック クロノグラフを身に着けてカメラの前でポーズをとったことがある。

Richard Mille RM 11-03
リシャール・ミル RM 11-03 マクラーレン オートマティック フライバック クロノグラフ

リシャール・ミルはミック・シューマッハにRM 033を提供。このモデルは同ブランドのコレクションの中で数少ないラウンド型の時計であり、同時にケースの厚みがわずか6.30mmしかない非常に薄いモデルでもある。

Richard Mille RM 033
リシャール・ミル RM 033

シャルル・ルクレールが選んだモデルはRM 67-02。この時計は長年の広告パートナーであるフェルナンド・アロンソも着用している。このカーボンTPT製の時計の特徴はその軽さで、ストラップを含めてたったの32gしかない。ロマン・グロージャンは2020年の大事故の後、RM 011 レッド TPT クオーツ オートマティック フライバッククロノグラフを身に着けて、インディカーレースで再び登場した。

Richard Mille RM 67-02 FQ
リシャール・ミル RM67-02 FQ

リシャール・ミルの時計の資産性

リシャール・ミルの派手な時計は好みだが、上に挙げたモデルの資産性について気になるという人もいるだろう。それについて、以下で見ていこう。

F1ドライバーのダニエル・リカルドとランド・ノリスなどが着用しているRM 11-03のChrono24における価格は、2018年初頭においてまだ2200万円ほどであった。これは大金であるが、現在の価格は約5900万円を超えている。ピンクゴールド製のRM 033は約870万円で手に入れることができるが、2019年中頃はそれよりも80万円ほど安かった。

スペイン人レーサーのフェルナンド・アロンソが愛用している軽量なRM 67-02 オートマティック エクストラフラットの価格は現在約3020万円。この時計の価格は2018年中頃に比べて1000万円ほど上昇した。ロマン・グロージャンのRM 011 TPT クオーツ オートマティック フライバッククロノグラフは2017年以降、約2010万円で横ばいに推移している。つまり、この期間内に時計の価値は減少していないということだ。

まとめ

タグ・ホイヤー、ウブロ、リシャール・ミルは、どれも素晴らしいモータースポーツ向けの時計を提供している。コアなファンはF1と最も長い関係を誇るホイヤーのヴィンテージモデルを好むかもしれない。また、いくつかのモデルは高い資産性も兼ね備えている。タグ・ホイヤーの現行コレクション「フォーミュラ1」は素晴らしい品質を持つ時計であるが、投資としての魅力には欠けるかもしれない。

ウブロの時計がお好みであれば、その性能にも外観にも満足できるだろうが、投資としてはリスクが高いかもしれない。リシャール・ミルは派手で人目を引き、技術、外観、価格のどの面においても非常にエキサイティングな存在だ。同ブランドの時計のどれを見ても、リシャール・ミル氏のモータースポーツに対する思い入れを見て取ることができる。つまり、現時点でポールポジションに立っているのはリシャール・ミルだということだ。

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記者紹介

Sebastian Swart

すでに数年前からChrono24のサイトを時計の買取と販売、そして時計について調べるのに使っていました。私は子どもの頃から時計に興味を持っており…

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