古くから航空業界と特別なつながりを持つことで知られるブライトリング。その複雑なパイロットウォッチは、航空業界に欠かせないツールであり、ブライトリングが誇る回転計算尺を備えた画期的なベゼルは、飛行時間や消費燃料、速度計算といったパイロットに不可欠な計算から、通貨換算にも使用できる。今回はそんなブライトリングの時計を年代別に見ていこう。これらの時計を見ていると、技術は時代とともに変化していることがわかるが、ブライトリングの時計作りに対する姿勢は変わっていないことが分かる。
1940年代:ダトラ

プレミエ ダトラは、ブライトリングの発明家レオン、ガストン、ウィリー・ブライトリングの3世代に敬意を表したモデルで、コンプリートカレンダーとムーンフェイズを備えた同ブランドの中で最も洗練されたクロノグラフだ。ウィリー・ブライトリングは、プレミエを「非の打ちどころのないセンス」と評している。これらのコンプリートカレンダーを備えたクロノグラフは、比較的小さなケースに複雑機構を詰め込んだ時計であり、現代のスマートウォッチに相当するものと言えるだろう。ブライトリングは最近、これらの時計に敬意を表してダトラの復刻モデルを発売しているが、筆者はやはりオリジナルのヴィンテージモデルに惹かれてしまうものだ。
1943年:プレミエ Ref. 760とRef. 734

1940年代初頭、ブライトリングは同社の航空機用計器部門であるユイット・アビエーション部門から、連合国に高精度な航空計器を提供することでその名を知られるようになった。戦争が終わりに近づくにつれ、ウィリー・ブライトリングは、人々の間で日常的に使えるエレガントなクロノグラフに対する需要が高まっていることに気づき、1943年にプレミエコレクションを発売した。フランス語の「最初」という言葉にちなんで名付けられたプレミエは、高品質な素材と洗練されたデザインで、これまでコックピットで使用されていたクロノグラフを日常生活でも使用可能なものとし、当時の時計業界に新しいスタンダードをもたらした。
1952年:ナビタイマー Ref. 806

1952年はブライトリングにとって重要な年となった。ブライトリングは、アメリカの航空機所有者およびパイロット協会(AOPA)から会員向けのクロノグラフの設計を依頼され、手首に着けられる画期的なフライトコンピューターであるナビタイマーを開発。この革新的な時計は、上昇率や燃料消費量などの重要な計算を可能とし、パイロットとって不可欠なものとなり、パイロットウォッチのアイコンとなった。70年以上経った今でも、ナビタイマーはブライトリングと言えば、真っ先に思い浮かべる時計だ。
1957年:スーパーオーシャン Ref. 1004

ダイバーズウォッチは、1950年代に海洋探検や水上スポーツで重要な役割を果たすようになり需要が急増した。ブライトリングは、1957年に初のダイバーズウォッチであるスーパーオーシャンを発売。1960年代には、優れた性能と視認性を求める熟練のダイバー向けにスーパーオーシャン スローモーション(Ref. 2005)を発売し、ダイバーズウォッチというカテゴリーに置ける同社の専門性をさらに高めた。Ref. 1004(写真)は、軍用のダイバーズウォッチとは違い、スタイルや装着感を重視したスリムなケースとミッドセンチュリーデザインが際立つモデルだ。
1964年:トップタイム Ref. 810

1960年代に登場したトップタイムは、若い世代に向けて作られた近代的なクロノグラフだ。その大胆なプロポーションと印象的な文字盤デザインは、ターゲット層だけでなく、個性的な時計を求めるすべての人々も惹きつけた。トップタイムは、活気に満ちた若い世代が自身を表現するためのシンボルへと急成長し、現在もその役割を果たし続けている。
1985年:エアロスペース Ref. 80360

1985年に登場したエアロスペースは、時代を象徴する1本だ。ブライトリングは、他の多くの伝統的なスイスの時計メーカーと同様、クォーツ危機の影響で財政難に陥っていた。そこでブライトリングが発売したのが、クォーツ式のデジタルディスプレイを採用したエアロスペースだった。100分の1秒単位で計測可能なクロノグラフ、アラーム、カウントダウン、第2タイムゾーン、カレンダー機能を搭載し、すべてをリューズで操作できる。80年代を強く感じさせるツートンカラーのベゼルも特徴だ。
1995年:エマージェンシー Ref. E56021

エマージェンシーは本格的な緊急用送信機を内蔵した世界初の腕時計であり、冒険家に欠かせない安全とサバイバルのためのツールウォッチだ。革新的な超小型の無線発信機を搭載し、発信機が作動すると、救助活動のための警報信号が発せられる。
2001年:アベンジャー Ref. A13370

パイロット向けに設計されたアベンジャーは、時計としての役割を果たしながら、コックピットの過酷な環境にも耐えられるように作られている。この時計は、2000年代初頭の大型時計のトレンドを反映したものであり、直径48mmと、快適に着用するにはがっしりめの手首が必要となる。
2005年:ベントレー 6.75

時計と自動車ブランドのコラボレーションは目新しいものではなく、これまでにメルセデス、アストンマーティン、ロールスロイス、フェラーリ、ブガッティなどのブランドが時計メーカーとコラボレーション特別モデルを販売している。初代のブライトリング ベントレーコレクションは、ベントレーのフロントグリルを彷彿とさせる特徴的なベゼルを備えたモデルがラインアップされていた。これらの時計は、ブライトリングのアーカイブの中でも最も個性的な作品の一つとして今も残っている。
2020年:エンデュランス プロ

超軽量のブライトライトケース(チタンの3.3倍、ステンレススチールの5.8倍の軽さ)を採用したエンデュランス プロは、耐磁性、熱安定性、低アレルギー性、耐傷性に優れている。また、頑丈なだけでなく、鮮やかな色使いも特徴で、傷に対して神経質になる必要のない時計でありながらも、そのデザインから高級時計ブランドらしさもしっかりと持ち合わせている。