時計市場には多種多様なモデルが存在し、その中からこれという1本を見つけるのは簡単ではない。Chrono24のようなマーケットプレイスも例外ではなく、ヴィンテージ、中古、新品の時計がそろい、選択肢はほぼ無限だ。特に時計の世界に足を踏み入れたばかりの人にとっては、数の多さに圧倒されることだろう。しかし、選択肢が多い分、好みや予算に合う時計を必ず見つけることができる。時計の世界に足を踏み入れるきっかけとなるような、一般的によく知られたアイコンウォッチと呼ばれるモデルは、誰もが憧れるものだし、王道と言えるが、難点は価格が少々高いということだ。そこで、それらに代わる手頃な価格の高級時計をおすすめしたいのだが、ブラックフライデーセールの季節は、出品される時計の数も増えるため、30万円以下の時計を見つける絶好の機会と言える。また、この価格帯にはビギナーにおすすめな時計があるだけでなく、経験豊富な時計愛好家にとっても魅力的な時計があるのも確かだ。30万円以下で購入可能な、アイコン時計に代わるおすすめモデル5本を紹介したい。
オーデマ ピゲ ロイヤル オーク VS ティソ PRX パワーマティック 80
1本目は、あらゆる時計コミュニティで絶賛され、人気を博している時計である。ティソのPRXは、価格という点を含め、大ヒットとなったコレクションだ。ティソはたちまち話題のブランドとなり、多くのファンを獲得した。しかし、それは偶然ではない。PRX パワーマティック 80 は、一体型ブレスレット、角ばったデザイン、豊富な文字盤のカラーバリエーションなど、多くのトレンド要素を兼ね備えているからだ。(手頃な価格の)ステンレス製ラグジュアリースポーツウォッチとしてのデザインとマーケティングは、1970年代に斬新なスタイルとして発表され、ラグスポウォッチという新たなスタンダートを築いたオーデマ ピゲのロイヤル オークを彷彿とさせる。ティソはそのスタイルに、彼らの確かな技術を融合させ、カラーやサイズ、素材のバリエーションを豊富にそろえ、PRXコレクションを展開している。あまりにも70年代のものと似過ぎていると感じるなら、現代的な素材のカーボン製モデルがおすすめだ。Ref. T137.907.97.201.00は、オールブラックの軽量なカーボン製ケースに一体型のラバーストラップを組み合わせた、これ以上にないほどスポーティーなモデルだ。
ブランパン フィフティ ファゾムス VS ブローバ ミルシップ 98A266
ブローバ ミルシップがブランパン フィフティ ファゾムスにインスパイアされた可能性が高いということに気が付いたという方は、かなりの時計ファンだ。フィフティ ファゾムスは長い歴史を持つ人気モデルだが、ロイヤル オークや サブマリーナーなどとは違い、大衆からの人気や注目度はそれほど高くない。ブランパン フィフティ ファゾムスは、1953年に発表されたアイコニックなダイバーズウォッチだ。フランス海軍と共同で開発されたフィフティ ファゾムスは、防水性、堅牢性、水中での視認性において、スタンダートを築いたモデルだ。視認性に優れた文字盤、潜水時間を計測する回転ベゼル、高い水圧に耐え得る頑丈なケースを備えている。ヴィンテージの「MIL-SPEC」モデルは、文字盤のモイスチャーインジケーターや、パティーナが見られるインデックスが特徴であり、現在では人気のコレクターズアイテムとなっている。ブローバのミルシップもこういった特徴を備えており、インデックスはヴィンテージ風に色褪せたように仕上げられ、さらにファブリックストラップがヴィンテージらしい雰囲気を醸し出している。搭載されているのは頑丈なセリタ社製のムーブメントで、防水性は200mとフィフティ ファゾムスの300mに迫る勢いだ。ケースサイズは41mmで、多くのヴィンテージ フィフティ ファゾムスと同じサイズだ。文字盤に配されているモイスチャーインジケーターは、フィフティ ファゾムスのように丸型ではなく、長方形になっている。アメリカ発のブローバ ミルシップは、ダイバーズウォッチのアイコンであるフィフティ ファゾムスに代わるモデルと言え、価格も30万円以下とかなりお手頃である。
ロレックス エクスプローラー II VS クリストファー・ワード C63 シーランダー GMT
スポーティーなデイリーウォッチ、ヴィンテージ風のダイバーズウォッチに続いて紹介するのは、GTMウォッチだ。クリストファー・ワード C63 シーランダー GMTは、魅力的な特徴を備えたモダンな時計だ。ステンレススティール製ケースは39mmと小さめサイズで、ほとんどの手首に合わせられる。ポーラーホワイトの文字盤はトレンドであり(白のスピードマスターを想像してみて欲しい)、時計は実際のサイズよりも大きい印象を受ける。実用的な日付表示に加え、見やすいオレンジのGMT針も特徴だ。第2タイムゾーンは、1970年代の他のGMTモデルのように非回転式のベゼルで読み取る。搭載されているのは、こちらもセリタ社製SW-330-2で、50時間のパワーリザーブを備えている。気づいた人もいるかもしれないが、このモデルは明らかにロレックス エクスプローラー IIをモデルにしている。エクスプローラー IIは、冒険家や登山家のために開発されたもので、特に過酷な条件下での耐性と信頼性で知られている。1953年5月29日、エドモンド・ヒラリー卿とテンジン・ノルゲイは世界初のエベレスト登頂に成功した際、ロレックスの腕時計を着用していた。クリストファー・ワード C63 シーランダー GMTは、ロレックスの代替モデルとして、日常生活のあらゆるシーンで活躍してくれることだろう。
パテック フィリップ グランドコンプリケーション VS バルティック MR クラシック
4本目に紹介するのは、今回まだ紹介していないドレスウォッチのカテゴリーからだが、カリスマ性あるアイコンモデルの雰囲気を持ちながらも、かつ手頃な価格で購入できるものをセレクトした。気品あり、洗練されたエレガントな時計といえば、パテック フィリップを思い浮かべるのではないだろうか。パテック フィリップは他のどんなブランドよりも別格であり、精緻なムーブメントやコンプリケーションにかなうものはないが、バルティック MR クラシックは、デザインという点では似ているモデルと言える。36mmサイズにレザーストラップ付きという組み合わせで、高級時計の中でも特にお買い得なモデルだ。また、文字盤のカラーバリエーションも魅力で、特にサーモンダイヤルは、パテック フィリップやヴァシュロン・コンスタンタンといった高級時計界を代表するブランドのドレスウォッチに非常に近いものだ。搭載されているマイクロローターや42時間のパワーリザーブは、20万円以下で手に入る時計に搭載される機能とは思えないほど、ハイスペックだ。ドーム型の風防がヴィンテージの風合いを醸し出している。エレガントなデザインのドレスウォッチを探しているなら、ぜひバルティック MR クラシックをおすすめしたい。
ロレックス デイトジャスト VS セイコー キングセイコー SDKS019
アイコニックなモデルについて語るとき、欠かすことのできないのが、ロレックス デイトジャストであり、高級時計と聞いて誰もが思い浮かべるほど象徴的なモデルだろう。1945年の発表以来、デイトジャストはエレガンスと精度を象徴するモデルと言える。午前0時ちょうどに日付が変わる自動巻きデイト機構を備えた初の腕時計であり、時計史に残る偉大な功績を残した革新的なモデルだ。繊細なリンクブレスレット、日付表示、そして36mmのコンパクトなケースは、シック、かつスポーティーなデイリーウォッチの代表であり、多くのブランドで、似たようなモデルが作られてきた。キングセイコー SDKS019もその一つと言えるが、人気のキングセイコーは、ロレックスよりも豊富な文字盤カラーで展開している。深みのあるグリーンからボルドーまでさまざまあり、2024年の新型モデルでは多くの人を魅了するカラーラインアップとなっている。セイコーは、60年代に日本で発展を遂げたアイビールックをインスピレーションにしたとしているが、それでもロレックス デイトジャストを彷彿とさせ、特に60年代や70年代のヴィンテージモデルを思わせる。キングセイコーには、自社製の自動巻きキャリバー6R51が採用され、世界に誇るセイコー品質が約束されたものだ。また、72時間のパワーリザーブ、ストップセコンド機能を搭載している。価格は約25万円で、ロレックスのアイコン時計の代替品としておすすめのモデルだ。