2023年08月31日
 5 分

ブルガリの新作オクト フィニッシモが表現する「類まれな二面性」

Thomas Hendricks
ブルガリの新作オクト フィニッシモが表現する「類まれな二面性」。Copyright: Bulgari

ブルガリの新作オクト フィニッシモが表現する「類まれな二面性」。Copyright: Bulgari

ブルガリが2つの新しいオクト フィニッシモを発表した。発売以来、ブランドのアイコンへと成長するまでにそれほど時間を要しなかったこのモデルだが、今回新たな素材を使ったモデルが登場し、ブルガリはその飽くなき探求心を表現した。

同ブランドはジュネーブ・ウォッチ・デイズ 2023で6種の新作を発表。2つの新しいセルペンティ、アンティークコインをあしらった2つの新しいモナーテ カテーネ ジュエリーウォッチ、そして、今回私たちがフォーカスする2つの新しいオクト フィニッシモだ。

ジュネーブで発表された新作

今回の新作のテーマは「類まれな二面性」であり、新しいオクト フィニッシモには相反するような興味深いポイントがいくつもある。 軽量素材でありながら、手首では確かな存在感を放っている。そして、永久カレンダーを搭載したモデルは、クリーンでシンプルな時刻表示だけの文字盤が組み合わされていたり、カーボンという未来的な新素材には温かみあるラグジュアリーなピンクゴールドが組み合わされていたりする。

ブルガリはオクト フィニッシモラインをさまざまな複雑機構を使って展開し、これまでに8つの世界記録を打ち立ててきた。これらの記録のほとんどは薄型のムーブメントに関するものであり、その多くは今日でも破られていない。クロノグラフGMT、永久カレンダー、(厳密に言えば複雑機構ではない)トゥールビヨンなど、最薄の複雑機構を作り上げてきた今、同ブランドはその情熱を新素材のマスターへと注ぐことにしたのだ。

Due to its weight it feels britle – but it is just the opposite.
その軽さゆえにもろく感じるが、実際はまったく逆である

ブルガリがカーボンゴールドと呼ぶカーボンとゴールドを融合させた素材は、同ブランドが1993年に初めて発表したものだ。アンスラサイトカラーのカーボンは、ケース、文字盤、ブレスレットにまで及び、手首をほんの少し動かしただけでも、そのゆらめくようなテクスチャーが、一体感がありながらも、複雑な視覚的特徴を生み出している。

「類まれな二面性」

ブルガリが掲げたテーマのとおり、これらの素材には多くの二面性が存在する。軽さと重さ、マットと光沢、明と暗、革新と伝統、機能とデザイン。素材が持つ2つの相反する点から生まれる緊張感が新しいオクトの鍵となるのだが、これはすべての人に好まれるものではないかもしれない。

View this post on Instagram

A post shared by Chrono24 (@chrono24)

もしこのカーボン製ケースがヒットすれば、プラチナやホワイトゴールドのアクセントを使ったトーン・オン・トーンのアプローチは今後どんどん見られるようになるだろう。ピンクゴールドは市場でより意見の分かれる金属のひとつとされているため、白色の貴金属との単色使いは、カーボンゴールドのコントラストを好まなかった人々を引き付ける可能性がある。

これまでに、オクト フィニッシモはチタン、プラチナ、タンタル、ステンレススチール、ピンクゴールド、イエローゴールド、セラミックで作られてきた。これほど素材にバリエーションを持つ時計は市場ではあまりない。また、ブルガリは2023年6月に、特別な緑の大理石製のオクト フィニッシモをOnlyWatchチャリティーオークションのために発表し、大きな話題となった。イタリアとスイスの間に位置するアオスタ渓谷で産出された、ヴェルデ アルピという鮮やかな種類の大理石がこの唯一無二の時計に使われている。この時計はメディチ家の広場にふさわしいほどのもので、さらには6時位置にトゥールビヨンも備えている。ブレスレットだけでも作るのに190時間という作業時間を要しており、オークションに出品される62本の時計の中でも瞬く間に最も話題の1本となった。

Even lighter than the previous watches and a super thin caliber.
これまでのモデルよりもさらに軽く、搭載されているキャリバーは超薄型

オクト フィニッシモのケースを作り出すのに必要な並外れた技術を考えると、ブルガリの多彩な素材使いは感動的と言える。110もの面が集まってジッグラトのような形を作り、ケースの厚みは、三針モデルはわずか6.9mm、永久カレンダーモデルは7.6mmだ。プラチナやチタンのような素材は工作機械では扱いにくいことで有名であり、その事実を踏まえると、必要なスキルの高さは明らかだ。ロレックスが最近発表した新しいプラチナ製デイデイトでは、その大きな改良点がプラチナ製のフルーテッドベゼルなのだが、この新星オクトと比較するとそれほどではない。オクト フィニッシモのケースを「設計されすぎ」と言う人もいるが、この時計を間近でよく見た後では、そういった批評は珍しく、中身がないもののように感じられる。

外見の美しさがすべてではない

もちろん、外見の美しさはこの時計の唯一の魅力ではない。2つの新作では、サファイアクリスタルの裏蓋越しに、ブルガリの記録的なキャリバーを眺めることができる。3針モデルに搭載されたキャリバー BVL 138は厚みわずか2.23mmで、60時間のパワーリザーブを誇る。しかし、永久カレンダーモデルこそが真の技術革新であり、時、分、レトログラード日付、月、うるう年のレトログラード表示、そして60時間のパワーリザーブがわずか2.75mmの中に詰め込まれている。

そして最後にもうひとつ、この2つの新しいオクトは防水性100mだということも加えておこう。


記者紹介

Thomas Hendricks

私はもともと時計を見て育ったわけではありません。しかし、大学を卒業してから数年後、私はオンラインポータル「Watchonista」でライター兼マーケターとして就職。同僚は私に向かって冗談半分で「誰も後戻りできない時計の世界へようこそ!」と言いました。現在はChrono24でプライベートクライアントアドバイザーとして、人生の大事な節目に完璧な時計を探す人々のお手伝いをしています。

記者紹介