ロレックス、パテック フィリップ、オメガ。時計市場のビッグネームは誰もが知っている。そんな中で、2000年代に入ってから多くのマイクロブランドが台頭してきた。だが、マイクロブランドの時計とは一体どういうものだろうか?なぜ人気が高まっているのだろうか?今回は、マイクロブランドについて見ていこう。
マイクロブランドの時計とは何か?
マイクロブランドの時計は生産数が少なく、多くの場合比較的安価である。大手メーカーのようにマーケティングにかける資金がないため、注目を集めることはあまりない。ムーブメントは外部調達であったり、あるいは時計の製造全体が外注されている。すべてではないが、マイクロブランドの多くはクラウドファンディングで資金を調達している。2000年代に入ってから盛んになったクラウドファンディングにより、小規模ブランドの資金調達の選択肢が広がった。
マイクロブランドの時計には価値があるのか?
ロレックス社など大手とは異なり、マイクロブランドは良いアイデアや奇抜なアイデアで成功を狙っている。そのため、一風変わったデザインや珍しい素材を使ったものが多い。マイクロブランドのコンセプトの魅力は、スタートアップ企業ならではの柔軟性であり、また、その製品に対する人々の反応をすぐに掴むことができる点だ。そして我々需要する側が直接供給側に影響を与えることができる。さらに、メーカーと購入者の間で直接流通するため、価格面でもメリットがある。
もちろん、価格が抑えられる大きな理由はムーブメントやその他の部品を外部調達しているからでもある。ここが独立系(インディーズ)ブランドとは違うところだ。マイクロブランドは内製率が低いため(すべてのパーツをメーカーでは作らずに時計を組み立てている)、独立系ブランドよりも早く時計を作ることができる。マイクロブランドは入手しやすい手頃な価格で個性的な時計を提供しており、個性はラグジュアリーな要素でもある。マイクロブランドによって時計愛好家は新しいもの、珍しいものを身につけることができると同時に、メカニック好きにとっても魅力がある。自社製ではないと言っても、大抵はETAやセリタといった主要ムーブメントメーカーの定番を搭載しているのだ。
マイクロブランドおすすめトップ5
このように、マイクロブランドの世界を探ってみる価値は十分あり、多くの時計ファンは既に興味を持ち始めている。ここではチェックしておきたいブランドを5つご紹介しよう。
1. バルチック
クラウドファンディング・プロジェクトで何ができるかを示す最高の例がバルチックである。時計愛好家ではあったものの、業界に詳しいわけではなかったというエティエンヌ・マレクが2017年に設立し、それ以来目覚ましい業績を上げている。アイコニックなデザインと中国製ムーブメントという組み合わせから生まれた時計は手頃な価格なため、瞬く間に多くのファンを魅了した。それもそのはず、アンティーク風デザインのダイバーズウォッチからクラシックなクロノグラフ、ドレスウォッチまで、あらゆるテイストの時計がラインナップされている。その多くは有名なモデルのデザインを強く意識したものだ。特にパテック フィリップを彷彿とさせるデザインのMR01は非常に人気が高い。そしてどの時計もコピーではなく、時計作りの技を極めた偉大な先人へのオマージュだと受け止められている。
2. イエマ
他のマイクロブランドとは異なり、イエマは新しいブランドではなく70年以上の歴史がある。その歴史の中で何度も所有者が変わったが、2009年にモントル・アンブル社(Montres Ambre SA)がイエマを買収してから、マイクロブランドとしてのサクセスストーリーが始まった。成功した理由はアンティーク感あふれるデザインのみならず、搭載されたムーブメントの役割も大きい。ムーブメントは調達した部品で作られているが、他のムーブメントの完全なコピーではないため、準占有的なものとなっている。ダイバーズウォッチや一体型のメタルブレスレットを備えた人気の時計に加え、クロノグラフも数多くラインナップしている。フォルムが特徴的なインダイヤルは1970年代や1980年代のレーサー時代を想起させ、他のモデルと比較してもノスタルジックな記憶をより絶妙な形で呼び起こさせる。また、アンティーク風のサイズのおかげで細い手首にもよく似合う。イエマならデザイン好きも、キャリバーにこだわるファンも、同じように満足がいくはずだ。
3. クロノトウキョウ
クロノトウキョウを支えるのは著名な日本の時計師・浅岡肇である。浅岡は素晴らしい傑作を作る時計師であるだけでなく、マイクロブランド「クロノトウキョウ」の創設者でもある。このブランドでのプロジェクトの目的は非常にシンプルかつ独創的だ。つまり、良い時計をリーズナブルな価格かつ毎日身に着けられるデザインで、長く待たせることなく人々に提供することだ。このブランドの時計はすべて、品質と精度で高い人気を誇るミヨタの90S5ムーブメントを搭載している。しかし、ムーブメントを除けば、時計のどのデザインにも天才時計師・浅岡のDNAと情熱が息づいている。浅岡肇は時計作りの技の極みを見せてくれるだけでなく、高級時計をより多くの人に親しんでもらうにはどうすべきか、という方向性も示しているのである。
4. ウニマティック
2015年の創業以来、ウニマティックは時計愛好家だけでなくファッション愛好家をも虜にしてきた。ブランドの創設者である2人の工業デザイナー、ジョヴァンニ・モーロとシモーネ・ヌンツィアートのコンセプトが成功をもたらした。絶対的ミニマリズムを掲げ、最初のモデルとして飾り気のないダイバーズウォッチのモデロ ウノを製作した。モデル名はデザイン同様分かりやすい。モデロ ウノに続いて、ミリタリーウォッチのモデロ ドゥエ、クオーツクロノグラフのモデロ トレが発表された。そしてモデロ クアトロで最高傑作が完成したのである。ダイバーズウォッチなのか、ミリタリーウォッチなのか、それとも単に最新のトレンドアイテムなのか。極めてモダンで、ミニマルで、他とは違っている。ミラノ発のこの時計ブランドは、時計作りの技とファッションの世界を理想的に融合させている。
5. anOrdain
エナメル文字盤は高価格帯の時計だけのものだろうか?そうではないことをanOrdainが証明している。この新進気鋭のブランドはスコットランドの工業都市グラスゴーで、エナメルの工芸技術に新しい風を吹き込んでいる。豊富な経験と知識を持つ自社のエナメル職人が、アンティークの魅力を巧みに現代にアレンジした文字盤を製作しているのだ。直径35mmから41mmと、やや小ぶりなサイズもアンティークテイストにマッチしている。様々なカラーとサイズがあるが、ラインナップはまだ2モデルに限られている。だがこれはウィークポイントではない。エレガントでシンプルな時計には、ラインナップもコンパクトな方が似合っているからだ。