2019年11月20日
 6 分

ミニッツリピーターとその仕組みについて

Mathias Kunz
Patek-Philippe-Grande-Complication-Perpetual-Calendar-Minute-Repeater-Tourbillon-byChristopherBeccan

ミニッツリピーターとその仕組みについて, 写真: Bexsonn

ミニッツリピーターは時計製造における最も手間のかかるコンプリケーションの1つに数えられている。数百の部品から構成され、数週間にわたる手作業から生まれるこの複雑機構の製造をマスターしているのは、最高の技術を持つ熟練の時計師だけである。

ミニッツリピーターとは?

ミニッツリピーターは時刻を音で知らせる機械式時計のコンプリケーションである。この機能のために、時計は2つの小さなハンマーによって時 (アワー)、15分 (クォーター)、分 (ミニッツ) に対して異なる高さの音を鳴らす独立したソヌリ機構を備えている。パテック フィリップなどの時計マニュファクチュールは通常、低音をアワー、低音と高音の組み合わせをクォーター、高音をミニッツに使用する。例えば、6時55分は低音が6回、低音と高音の組み合わせが3回、高音が10回鳴ることで表される。

教会の時計や柱時計のソヌリ機構と違い、ミニッツリピーターは時刻を望んだ時にだけ鳴らす。ミニッツリピーターの他に、時間を15分単位または5分単位でのみ知らせるリピーター機構もある。このよりシンプルなソヌリ機構はミニッツリピーターが現れる前から存在している。

ミニッツリピーターはトゥールビヨンの発明者でもあるアブラアム=ルイ・ブレゲによって18世紀中頃に開発された。この天才時計師はまず2枚のリング状の板バネを使用し、それをムーブメントの外周に配置した。それまでソヌリ機構が搭載された時計では、音を鳴らすのに鐘が使用されていたのだ。19世紀末以降、ミニッツリピーターは完成したと見なされており、それ以来ほとんど変わらない構造で作られている。

ミニッツリピーターの仕組み

リピーターのソヌリ機構はムーブメントのようにぜんまい、多くの歯車、ソヌリ機構を持つ独立した歯車装置である。ソヌリ機構を始動させるために、ミニッツリピーターを持つ大抵の時計はぜんまい (エネルギー蓄積装置) を巻き上げるプッシュボタンまたはレバーを備えている。

時計が間違った時刻の音を鳴らさないように、時計はいわゆる「オール・オア・ナッシング」と呼ばれる装置を備えている。この機構によって、ソヌリ機構はレバーおよびプッシュボタンが完全に押された時にだけ作動するようになる。ラック (円形歯車) と呼ばれる部品が操作した後に、小さなハンマーが板バネを叩き、柔らかい音を奏でる。

Audemars Piguet Jules Audemars Minute Repeater Black Enamel Dial
オーデマ・ピゲ ジュールオーデマ ミニッツリピーター ブラック エナメルダイヤル

ミニッツリピーターを備えた時計は非常に複雑であると見なされており、時計製造技術の最高峰の1つに数えられている。ソヌリ機構だけでもしばしば200以上の部品から構成されており、時計師はそれを手作業で組み立て、互いに調整する。最新の製造プロセスのおかげで、現在組み立てにかかる時間は約6週間。昔は1人の時計師がこの複雑な機構を組み立て調整するために、約半年の時間を要した。なぜなら、各個別部品がそれぞれの位置に付けられていても、板バネの音が最適に鳴らない場合があるからだ。この場合、時計師は板バネを再び取り外し、材料を少々削ることでもう一度調律しなくてはいけない。板バネの調律には数日または数週間を要する場合がある。

パテック フィリップ Ref.5078

ミニッツリピーターをお探しの方は、ジュネーヴの伝統的マニュファクチュール、パテック フィリップを無視することはできないだろう。この1839年に創業した時計メーカーは複雑で高級な腕時計で世界的に知られている。また、パテック フィリップのコレクションには永久カレンダーや天文時計も含まれている。

Patek Philippe Reference 5078
パテック フィリップ Ref.5078

Ref.5078はミニッツリピーターを備えた典型的な腕時計。直系38mmのケースはプラチナ製、ホワイトゴールド製、ローズゴールド製で提供されている。リピーターのソヌリ機構を作動させるためのレバーはケース左側に配置されており、サファイアクリスタル製の裏蓋を通して完璧に仕上げられたマニュファクチュールキャリバーを見ることができる。

パテック フィリップは文字盤の素材にエナメルを使用している。文字盤の周縁にはレイルウェイ ミニッツトラックが付けられており、それによって特別にクラシックな印象を与える。また、6時位置のスモールセコンドの周縁にも同様のミニッツトラックが付けられている。ホワイトゴールドモデルでは、ゴールド製のアプライド ブレゲ インデックスがアワーマーカーとして使用されている。ブレゲ針も同様にゴールド製で、Ref.5078Gの伝統的な外観を強調している。プラチナとローズゴールドのモデルにはリーフ針とローマ数字が使用されている。このパテック フィリップには3500万円以上の価格が付けられている。

ランゲ&ゾーネ ツァイトヴェルク・ミニッツリピーター

A. Lange & Söhne Zeitwerk Répétition Minutes
ランゲ&ゾーネ ツァイトヴェルク・ミニッツリピーター

ドイツ時計マニュファクチュールのA.ランゲ&ゾーネも、同様にミニッツリピーターを搭載した時計を自社のコレクションに有している。その中の1つがツァイトヴェルク コレクション。このモデルはデジタル時刻表示とデジタルミニッツリピーターを備えた初の機械式腕時計である。他の多くのミニッツリピーター時計と異なり、ツァイトヴェルク・ミニッツリピーターは15分単位ではなく10分単位でゴングを打つ。音響機構は10時位置のプッシュボタンによって有効化される。また、ハンマーがバネ板を打つところを時計ガラスを通して見られるところも、この時計の特別な点である。

時刻はデジタルクォーツ時計のように3時と9字位置にある窓で快適に読み取ることができ、スモールセコンドとパワーリザーブ表示には細いロザンジュ針が使用されている。ツァイトヴェルク・ミニッツリピーターの価格も3500万円を超える。

IWC ポルトギーゼ・ミニッツ・リピーター

IWC Portugieser Répétition Minutes
IWC ポルトギーゼ・ミニッツ・リピーター

IWC ポルトギーゼ・ミニッツ・リピーターはパテック フィリップやA.ランゲ&ゾーネの時計に比べるとお手頃と言える。44mmのレッドゴールドモデル (Ref.IW544907)の価格は約750万円。もちろんそれでもまだ非常に高価な時計である。しかし、IWC時計のデザインは少しも劣っていない。文字盤の周縁に付けられたレイルウェイ ミニッツトラック、ポルトギーゼに典型的なアラビア文字、6時位置のスモールセコンド、そして細いリーフ針によって、この時計はパテック フィリップと同じ様にクラシックな外観を纏っている。

時計内部ではマニュファクチュールキャリバー98950が時を刻み、サファイアクリスタルの裏蓋を通してその動きを見ることができる。また、IWCはこのムーブメントに非常に細やかなコート・ド・ジュネーブ装飾とペルラージュ装飾を施している。特に目立つのは大きく長い緩急針で、それによって時計師はムーブメントの動きを調整することができる。IWCムーブメントは400以上の部品から構成されており、その内の約250の部品がリピーター機構のためだけに使用されている。

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記者紹介

Mathias Kunz

2015年からChrono24の編集者として働いており、毎日時計と関わっています。特に興味を持っているのは、伝統と工芸・工学技術を体現する精巧なメカニズムです。…

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