2023年01月23日
 4 分

ムーンスウォッチからロレックスまで。何をもって「高級」と呼ぶのだろうか?

Pascal Gehrlein
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高級時計に関するレビュー、チュートリアル、トーク、インタビューをもっと見たい場合は、Chrono24のYouTubeチャンネルをご覧ください。

「高級」という言葉は様々な定義や解釈が可能だ。「高価なもの、贅沢なもの、日常生活の範囲を大きく超えるもの、もっぱら精神的な喜びや楽しみをもたらすだけのもの」、あるいは簡潔に「必需品ではないもの」などと表現される。いずれにせよラグジュアリー、ひいては高級時計というものは様々な見方ができるものだ。では客観的に何を基準とすれば高級なブランドと呼べるのだろうか。価格だろうか。あるいは生産本数や手に入りにくさだろうか。高級時計のセグメントに入るのはティソノモスあたりからだろうか。あるいは、入手困難なスウォッチ ムーンスウォッチも高級時計と呼べるのだろうか。 

お気づきのように、このような定義付けは時計好き同士の論争にはうってつけのテーマだ。しかし、皆様と言い争ったりはしたくない。そこで今回は主観的・個人的な側面から日常生活における「高級(時計)」と贅沢な瞬間について考えてみたい。 

ブランド名、素材、技術的な洗練度など、時計を高級時計たらしめる要素は数多くある。
ブランド名、素材、技術的な洗練度など、時計を高級時計たらしめる要素は数多くある。

ロレックスでなければならないのだろうか?高級時計の「ラグジュアリー感」 

時間は貴重な財産だ。時計はそれを測り、時間が貴重であることを思い出させてくれるだけでなく、人は時計とともに多くの時間を過ごすこともできる。なぜなら、時計には理解すべき技術に始まり、個々のブランドやモデルの歴史までと非常に複雑な世界が広がっているからだ。  

誰にとってもいろいろなブランドがそれぞれの「高級」を体現しているのではないだろうか。また、ブランドやモデル自体にも、「ラグジュアリー」と定義できる様々な性格があると思う。ロレックス デイデイトの場合、時計の歴史と着用者に「ラグジュアリー」が存在するように思える。この場合、筆者が思う「ラグジュアリー」はむしろプレステージ、名声である。一方、グランドセイコーの「ラグジュアリー」は驚異的な内製率とディテールに拘った細工とシンプルさの中にある。オーデマ ピゲの場合はその希少性だけでなく、先駆者かつパイオニアであり、ジェラルド・ジェンタがこの時計でステンレス製スポーツモデルというセグメントを生み出したという事実自体が「ラグジュアリー」だ。これに対して、ジャガー・ルクルトはレベルソ ハイブリス メカニカのような信じられないほど複雑で美しいムーブメントを製造している。 

 

Grand Seiko Spring Drive Snowflake 
グランドセイコー スプリングドライブ「雪白」 

 

ラグジュアリーとはスローライフを楽しむことであり、意識的にロマンのためにお金を使うことだ。  

例えば、筆者は最近カルティエの時計のことばかり考えていた。一度興味を持つと、その時計について調べたり、見て回ったりするのに膨大な時間を費やすことになる。ブログやChrono24のようなマーケットプレイス、ソーシャルメディアによって、このような贅沢な時間はより身近なものとなり、誰にでも手が届くようになった。ストレスの多いビジネスライフから離れて、自分の好きなことをする「無になれる」時間を過ごすことができるのだ。 

そして、長いリサーチ時間を経て時計を腕にはめた時に、その輪は完結する。時刻を読もうとじっくり眺めると、時は一瞬歩みを止め、刹那の深い思いに誘う。その時計が自分にとってどんな意味を持つのか思い出させてくれるのだ。それは仕事上の成功であったり、単に時計の歴史やストーリーとこれまで関わって来たことや、時計を求めて探していた記憶であったりする。高級時計は純粋に特別なものであり、人はそのために時間を割く。 

Cartier Tank
カルティエ タンク 

  

高級時計のロマンティックな価値 

より速く、より高く、より遠くへ。それが現代の多くの社会で求められていることだ。このプレッシャーから逃れることは難しい。しかし、そもそも我々は何を求めているのだろうか。ロレックス デイトナの全バリエーションのコレクション、ガレージにおいたフェラーリ、コート・ダジュールの別荘。もしも手に入れられるなら、心から味わい、楽しめる物質や体験をどうしても想像してしまう。 

しかし、贅沢な瞬間というのは未来のどこか、頑張った努力の果てにある必要はない。それは時間のようなシンプルなものの中にも見出すことができる。何かに没頭し、自分を忘れる時間。例えば夢の時計を追いかけるのに没頭し、お気に入りの時計の文字盤を眺めて我を忘れる時間だ。  

もちろん、これはいち時計愛好家の目から見た高級時計の見方として、ひとつの主観的な可能性に過ぎない。しかし、筆者にとって時計は「日常」であり、変わらない何かや深く何かを思うことと結びついた様々な意味での贅沢品なのだ。それが筆者個人にとっての「高級」なのだが、皆様にとってはどうだろうか。 


記者紹介

Pascal Gehrlein

こんにちは、パスカルです。初めての「高級時計」を探してChrono24のサイトを何時間も見ていた際に、Chrono24の本社が自分の家のすぐ近くにあることを発見しました。…

記者紹介

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