ムーンフェイズ。それは非常に魅力的なコンプリケーションのひとつだ。しかし、手首が細いためにムーンフェイズは自分には大きすぎるのではないかと躊躇してしまう時計ファンも多い。Chrono24が選んだ40mm以下のムーンフェイズウォッチ トップ5を見れば、それが杞憂だったことがお分かりいただけるだろう。小さなサイズに収められた素晴らしい時計作りの技術をご紹介しよう。
もしかしたら、ムーンフェイズはあなたにとっても何か特別なものなのかもしれない。何しろ月はその変化する姿とクールな白い光で我々を魅了し続けてきたのだ。月は人の生活に影響を与える。例えば潮の満ち引きがそうだし、かつては神として崇められていたこともある存在だ。
時計職人たちも早くから月の満ち欠けを時計上で表現したいと考えてきた。それは胸躍る挑戦だろう。月の満ち欠けの周期は規則正しいが、29.53日は半端な数字である。時計職人の多くはこの端数を解決するために、ひとつのディスクに月を2つ描いた。つまり、59日間を2つの月で回るのだ。ムーブメントでは59個の歯がついた歯車が1日に1歯進む。そして残りの0.03日は3年に1度手作業で修正する。
ムーンフェイズは小さな複雑機構ではあるが、ムーブメントや文字盤にそれなりのスペースを必要とするため、大型のモデルに搭載されていることが多い。これについてはChrono24マガジン記事「太陽、月、星 – ムーンフェイズ表示を搭載する時計」でご紹介している。
小さめの時計を探している場合はどうだろうか。小柄な方、クラシカルでエレガントなモデルをお望みの方、彼女と一緒に使えるモデルをお探しの方もいるだろう。その場合はムーンフェイズを諦めなくてはならないのだろうか。
幸いなことに、その必要はない。筆者は手首の細い時計愛好家の女性の一人として、これまでに非常に美しい小さめサイズのモデル(直径40mmまで)を数多く発見してきた。今回は筆者が選んだムーンフェイズ搭載時計のトップ5をご紹介しよう。
ジャガー・ルクルト ランデヴー クラシック ムーン ステンレススチール
最初の1本はエレガントなレディースウォッチで、筆者のお気に入りだ。ジャガー・ルクルト ランデヴー クラシック ムーンは高級時計と女性らしい美学に敬意を表したランデヴー・コレクションのひとつだ。そもそも、当初腕時計は女性だけがするものだったのだ。この時計は直径34mmとやや小ぶりながら、手首で存在感を発揮する傑出したデザインが魅力だ。
卓越した技術や豪華なアクセサリーを愛する方ならば、ランデヴー クラシック ムーンに満足することだろう。筆者は本来時計をダイヤで装飾するのはあまり好きではないが、このモデルはそのことすら忘れさせてしまう。文字盤とベゼルにセットされたダイヤモンドはきらめく星を感じさせるからだ。手作業のギョーシェ彫り、つまり小さなラインを彫った文字盤は光が当たるとこの上なく美しい輝きを放つ。
同時に、6時位置で丸い雲から昇るシルバーの月、ステンレス製ケース、青焼き針によってクールなムードが演出されている。まるで本物の月夜のようで、少し不安で怖いような気持ちにさせる。月と女性の美しさへのオマージュを求めるなら、この時計こそがお探しの1本と言えるだろう。
ブランパン ヴィルレ デイト ムーンフェイズ
ブランパンには他の時計ブランドにはない伝統がある。それはいまだにクォーツ時計を製造したことがない数少ないブランドのひとつであることだ。ブランパンの最もクラシックなコレクションは創業の地に因んで「ヴィルレ」と呼ばれている。ムーンフェイズを搭載したヴィルレ デイト ムーンフェイズは直径29.2mmとコレクションの中で最も小さいだけでなく、本稿で取り上げる時計の中でも最小だ。この小さな直径に、ブランパンはムーンフェイズだけでなく、コンプリートカレンダーも搭載している。
2つのコンプリケーションを搭載しながらも、ブランパン ヴィルレ デイト ムーンフェイズの文字盤は非常に落ち着いた、すっきりとした印象だ。通常このモデルにはダイヤモンドなどの目立つ装飾は施されていない。デザインのポイントは6時位置のムーンフェイズであり、ダークブルーの背景に銀色の小さな月が昇り、そして沈む。これほど美しく控えめな表現はないだろう。シンプルかつエレガントという表現が最もふさわしい。小型で、あらゆるシーンを共にするパートナーとなる時計を求める方には、これこそが運命の1本なのかもしれない。
IWC ポートフィノ オートマティック ムーンフェイズ 37
IWCにも、クラシックなコレクション「ポートフィノ」にムーンフェイズが搭載されたモデルがある。このコレクションにはブランドのルーツである懐中時計を彷彿とさせるエレガントで純粋主義的なモデルもある。この時計の文字盤上では実際に月が空を昇る。それも12時の位置、つまり最も高い位置にだ。サンバースト仕上げを施したシルバーメッキの文字盤が生み出す光の効果は素晴らしく、ポートフィノ オートマティック ムーンフェイズを少し揺らすと光の反射が弧を描く。目立たず控えめなインナーサークルや、インデックスにあしらわれたダイヤモンドが文字盤をシンプルに整え、落ち着いた印象を与えている。
ポートフィノ オートマティック ムーンフェイズの普遍的なデザインはジーンズやTシャツはもちろん、エレガントな服装にもよく似合う。さらに価格面でもこの5本の中では最も手頃なモデルだ。大切な人と共有すればさらにお得に感じられるだろう。37mmというサイズは繊細な女性の手首だけでなく、男性にも素晴らしくフィットする。そして時計をシェアし、時計への思いも共有できるなら、これほど素晴らしいことはないだろう
パテックフィリップ アニュアルカレンダー ムーンフェイズ
1839年に創業したスイスの時計メーカー、パテック フィリップはいまや高級時計の代名詞となっている。現在も独立経営している同社は世界的に有名な「ノーチラス」だけでなく、あらゆる複雑機構を巧みに使いこなすことでもよく知られている。パテック フィリップのアニュアルカレンダーは1996年以来、同社の製品の中でも特に成功したモデルのひとつであり、このバージョンではムーンフェイズ表示も搭載している。つまり、本当にすべての時間を表示できる時計なのだ。
ホワイトゴールドのケースとクラシックなデザイン。パテック フィリップ アニュアルカレンダー ムーンフェイズには時代を超えた上品さと透明感がある。同社のジェネレーション・キャンペーンでは「パテック フィリップは一人だけのものではない。一生楽しめる時計だが、次の世代に引き継ぐために手に入れるべきものだ」と謳われている。世界最高峰の時計メーカーが送り出すこのムーンフェイズを手首につけるのは、間違いなくあなた一人だけではなく、世代を超えて何人にも受け継がれていく価値がある一本なのだ。
息子にも娘にも贈ることができるサイズ感と美しさを備えたこの時計を引き継ぐことは、月の美しさや名作時計への憧れをも次世代に伝えるということだ。
ロレックス チェリーニ ムーンフェイズ
本稿のラインナップの最後を飾るムーンフェイズは筆者の一番のお気に入りだ。ロレックスのチェリーニ・シリーズはサブマリーナやデイトナといった他のモデルの影に隠れがちだが、現在も生産され続けている古いコレクションのひとつである。その歴史は1928年にまで遡り、その名にはルネサンス期の万能の天才、ベンべヌト・チェリーニへのオマージュが込められている。2017年以降このコレクションではムーンフェイズを搭載したモデルも提供されている。
ロレックス チェリーニ ムーンフェイズは一度見たら忘れられない超然とした存在感を放ちながらも、シンプルな文字盤が非常に落ち着いた印象を与える。また、直径39mmは男性にも女性にもちょうど良いサイズだ。ホワイトラッカー仕上げの文字盤には6時位置にブルーエナメルのムーンフェイズディスクが配されているが、ウィンドウから一部だけを見るのではなく、全体を見られるようになっている。新月のマークの反対側には満月のマークが描かれ、ムーンフェイズインジケーターが月の満ち欠けの現在の位置を示す。
しかし、ロレックス チェリーニが特別なのはこのムーンフェイズの表示だけではない。技術面も素晴らしいのだ。この時計のために特別に開発されたムーンフェイズモジュールは、月相を122年間正確に表示し、その間は一切の調整が不要だ。また、満月のマークにはメテオライト(隕石)を取り付け、1本1本が一点ものとなっている。自然、テクノロジー、美を等しく愛する人にとって、ロレックス チェリーニ ムーンフェイズは理想的なパートナーである。