今でもデイトナは良い投資になるのだろうか?ロレックスの価格は過去6カ月の間で下がりつつあり、どうやら価格高騰という狂乱はおさまったように思える。しかし、だからといって投資対象としての可能性が完全になくなったというわけではない。ロレックス投資を考えているなら、どのリファレンスがまだ高い人気を誇っているのか知っておくこと、また投資のリターンがいつ頃になるのかおおよそ検討を着けておく必要がある。長い時間を経て、いよいよ価値が上がるというのはよくあることだ。それまでの間は純粋に時計を楽しめばいい。なぜなら、自分のコレクションである時計を身に着けることは、他の何よりも楽しみであると思うからだ。
ことデイトナに関していえば、投資の可能性は主にヴィンテージのリファレンスにある。その人気は長い間少しも下がっていないし、価値は十中八九これからも上昇するだろう。ヴィンテージのデイトナは豊かな歴史を体現しているだけでなく、これから増えることも決してなく、価値はかなり安定している。今回のリスト用に、筆者はロレックスの有名なクロノグラフの手巻き時代から3つのヴィンテージのロレックス デイトナを選んでみた。それでは見ていこう!
ロレックス プレ・デイトナ Ref.6238
もしかしたら、筆者がデイトナを3つ選んだというのは、必ずしも正しくはないかもしれない。というのは、最初に取り上げる時計はコレクターの間でロレックス “プレ・デイトナ” Ref. 6238と呼ばれるものだからである。これは同ブランドが1963年にデイトナ Ref. 6239を発表する前の、最後のクロノグラフリファレンスだった。しかしそれだけがこのモデルの自慢ではない。初期のデイトナに近い文字盤と針など、ロレックスのクロノグラフのデザインに大幅な変化をもたらしたものでもあるのだ。
Ref. 6238の内部には、手巻きデイトナにも使われる有名なバルジュー72ムーブメントが搭載されている。このムーブメントはクロノグラフコレクターの間で伝説となっており、ホイヤー、ブライトリング、ユニバーサル・ジュネーブ、ゾディアックなどを始めとする多くのクロノグラフに採用されてきた。しかしバルジュー72が業界内で人気となったのは、ロレックス デイトナによってであった。そして、それだけではない。
このプレ・デイトナは、実はボンドウォッチなのだ。ジョージ・レーゼンビーが『女王陛下の007』で一度きりの007役を演じた際に、この時計の特別バージョンを着用している。赤のクロノグラフ秒針が備わる非常に際立ったものだ。オリジナルのボンドウォッチは2016年と2019年にオークションに出品されたが、買い手はつかなかった。有名な時計オークションハウスであるアンティコルムは、この時計には4400万円〜7300万円ほどの価値があると見積もっている。これが通常の “プレ・デイトナ” Ref. 6238の価格ではないが、価格はステンレススチールもしくはゴールド、どちらのバージョンにするかによって変わってくる。ブラックダイヤルのステンレスバージョンはその希少さから、さらに高い価格がつく。スタンダードなステンレススチールバージョンの価格は620万円〜960万円ほどの間。その金額を払えば、世の中に存在する最も美しいヴィンテージクロノグラフの1本であり、手巻きデイトナの時代をスタートさせたとされる時計が手に入るのだ。
ロレックス デイトナ Ref.6239
筆者の2番目のチョイスは、有名なロレックス デイトナ Ref. 6239である。最初の公式なデイトナリファレンスであり、前述の時計の後継機である。デイトナモデルに関していうと、ほとんどの愛好家がデイトナを区別するためのポイントを押さえている。まず、ロレックスはステンレススチールベゼル付きの手巻きデイトナと、ブラックのベークライトベゼル付きの兄弟リファレンスのデイトナを一緒に製造したという点だ。この場合、Ref. 6239がステンレススチールベゼル付きのもの、Ref. 6241がブラックのベークライトベゼル付きのものである。
次に、コレクターが非ねじ込み式デイトナと呼ぶプッシュボタンを持つデイトナモデルがあるということ。最後のポイントは、ねじ込み式プッシュボタンを持つデイトナモデルがあるということだ。一般的に、ファンは非ねじ込み式のデイトナが好きである。これは通常のプッシュボタンを持つRef. 6239であり、最もアイコニックなデイトナ、 “ポール・ニューマン” デイトナによるところもある。なぜ筆者が2番目に挙げたかというと、エキゾチックダイヤルを持つRef. 6239 “ポール・ニューマン” デイトナには、2750万円かそれ以上の金額がつき、ごくわずかな限られた人だけの選択肢となってしまうからである。
しかし非エキゾチックダイヤルバージョンにフォーカスすれば、この有名なデイトナ初のリファレンスを、およそ690万円〜1300万円の間で手に入れられるかもしれない。もちろん、それでも莫大な金額であるが、もしこの価格帯の低い方で見つけることができたなら、この先価値が上昇する一方の、絶対的な定番の1本を手に入れられることになる。ホワイトのインダイヤルにブラックの文字盤、またはブラックのインダイヤルにシルバーの文字盤を持ち、価値を下げることのない美しいアイコニックな定番モデルだ。初期のモデルではクリームの文字盤のものもあり、1963年から1965年には、文字盤に「Daytona」の名前がなく、「Rolex Cosmograph」とだけあるものが生産された。このような初期モデルは本当に収集価値の高いものになってしまったことから、価格はより高くなる。とはいえ、この定番モデルは1000万円という大台に達しない価格で見つけることもできる。
ロレックス デイトナ Ref.6263
筆者の最後のチョイスは、ブラックベゼル付きの手巻きロレックス デイトナの最後のリファレンスである。ロレックス デイトナ Ref. 6263は1971年頃から1988年にかけて生産された。特徴的なブラックベゼルを持つだけでなく、この時計はねじ込み式のプッシュボタンによって防水性も上がっている。言うまでもなく、このタイプのプッシュボタンは実際に何かタイムを計る際にはあまり便利ではないが、時計の実用性のレベルを上げ、視覚的にも大きくなった。
全体的に、Ref. 6263のデザインはそれまでのリファレンスに比べて若干大きめな印象だ。これは手巻きデイトナの完璧な現代版で、基本的にはバルジュー72をベースにしつつも、より高い振動数で、より正確な進化系ムーブメントのバルジュー727が搭載されている。この時計にはさまざまな文字盤カラーがあり、ステンレススチール製とイエローゴールド製のものがある。ステンレススチールバージョンの主な文字盤カラーはシルバーとブラックだ。ロレックスはブラックのエキゾチックダイヤルを3バージョン、ホワイトのエキゾチックダイヤルを2バージョン作ったが、筆者としては通常版よりもわずかばかり魅力的だというだけにすぎない。それならば、筆者はスタンダードバージョンの1090万円〜1500万円のものを選びたい。1500万円以下で見つかるスタンダードバージョンは、この先も価値が下がることがなさそうな、“手頃な” 手巻きデイトナなのである。
というわけで、手巻き時代からの最も手頃なヴィンテージのデイトナリファレンスの3つが出そろった。それぞれの時計がおそらくその価値を保つと思われ、この先価値が上がる可能性もあるだろう。いつものように、保証は一切なく、あくまで予測である。しかしそれまでの間は、お持ちのデイトナを着けて楽しむことをお勧めしたい。実際に着けて楽しむことが、このモデルの特別感や大ヒットの理由を理解する一番の方法なのだ。