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ロレックス サブマリーナが表す人物像

Sebastian Swart 著
2022年6月30日
8 分
7:22

“スマーフ”、“ハルク”、“カーミット”、または単に愛称を持たないモデルなど、ロレックス サブマリーナにはさまざまなモデルが存在する。しかし、とりわけ時計にあまり詳しくない人はそれらのモデルを主にそのカラーリングによって区別する。Rolex GMTマスターの場合と同じく、モデルの選択は予算の問題であると同時に、性格の問題でもある。この記事では、サブマリーナを単にその色によって選んだのか、それとも他のサブマリーナ着用者と一線を画するために選んだのかどうかを、皮肉を交えながら詳しく見ていく。 

サブマリーナ 124060 ノンデイト ケチでこだわりが強い人 

あなたは現行のサブマリーナ ノンデイト Ref.124060を着用しているだろうか?そうだとしたら、ケチな傾向を持つ保守的なサブマリーナファンである。この時計に関して技術的に特筆すべきことはほとんどない。有名なオイスターケースとブラックのダイバーズベゼル、そしてもちろんムーブメント、および針と12のインデックスが配されたブラックの文字盤を備えている。1953年以降、サブマリーナ ノンデイトが伝統的に備えていないもの、それは日付表示だ。ここまではいいが、この記事で紹介する他のモデルと比較すると、中堅銀行で働いているやり手の社員が身に着けている退屈な時計という印象を受けてしまう。 

サブマリーナ ノンデイトをデスクワークで使うにしても、入浴時に使うにしても、サブマリーナ ノンデイトの着用者はデイトモデルの着用者に対して、とりわけ自分が強いこだわりを持ったサブマリーナ通であることを誇示したいと思っている。それに、日付を覚えられないのであれば、日付表示付きの時計を買うのではなく、一度生活を見直した方がいいだろう。また、デイトモデルを拒む理由は、3時位置にある不格好な日付表示がサイクロップレンズと共に文字盤の素晴らしいシンメトリーデザインを台無しにしてしまうからでもある。しかし、これらすべてはそう思い込みたいだけ。無意識的にサブマリーナ ノンデイトを選んだ本当の理由は、それがデイトモデルよりも安く買えるからなのである。 

124060を手に入れるために、あなたは行き当たりばったりにどこかのロレックス正規販売店に向かい、溜息を吐きながらこのモデルを買うための長いウェイティングリストに名を連ねた。いつまで待っても在庫が確保されず、そろそろ疲れて来たので、適当な個体がないかどうか一度中古品市場を見てみることにした。短いリサーチの後、目当ての時計はあるが、残念ながら価格だけが納得できないことに気付いた。日付表示なしの3針時計に約210万円の値が付けられているのだ。それに、100万円弱の定価でさえすでに無茶苦茶な値段と言っていいほどなのである。それでも、いつかこの投資への見返りが得られることを期待して、歯を食いしばりながら購入ボタンをクリックした。 

洗練された退屈なモデル:ロレックス サブマリーナ Ref.124060 ノンデイト

サブマリーナ “ハルク” 抑圧された天才

サブマリーナ 116610LV “ハルク” を購入した人は、124060などのブラックのサブマリーナを愛用している大部分の平凡な平均的着用者とは差をつけたいと望んでいる。上述した通り、これらの時計は一度サブマリーナを身に着けて風呂に入ることを夢見るケチな陸ダイバーを象徴しているのだ。それに、一体誰がノンデイトのサブマリーナを腕に巻くというのだろうか? 

たしかにあなたは大量のガンマ線を浴びた核物理学者ではないが、大きな怒りを抱いており、絶えず心の中のブルース・バナーを呼び覚ましている。文句も言わずにノンデイトの2倍もの価格を支払って、がっしりとしたマキシケースを搭載した “ハルク” を手に入れることになったのも、今思えば腹立たしい。時々、このグリーンの時計の価格がミドルクラスの新車のものと同じであることについて、なぜ購入の際に驚かなかったのかと自分で不思議に思う。この事実はあなたを非常に苛立たせるが、そんなことどうでもよいのだと怒りを飲み込む。“ハルク” は心の中の野獣を飼い慣らし、感情を制御しなければいけないのだ。 

現実では、もちろんハルクに変身することはできない。そのため、あなたのオルター・エゴは116610LVで、他のすべてのロレックス サブマリーナ着用者は単なるエミル・ブロンスキー(凶悪なハルクの敵対者「アボミネーション」としても知られている)にすぎない。ライバルと肉体的に戦うことはできないが、手首に着けられたグリーンの時計によって、標準サブマリーナを身に着けたヴィランを何度も屈服させる。  

何一つとして自分に当てはまっていないとお思いだろうか?それならば、“ハルク” を愛用しているのはグリーンが享楽、調和、誠実さなどの価値を象徴しているからなのかもしれない。つまり、あなたはバランスの取れた思いやりのある人物で、優れた社会的マナーも持ち合わせている。これは感じよく聞こえるが、コミックスのキャラクター「ハルク」と比べて刺激に欠けている。そのため、一度以下の時計をチェックしてみてもいいかもしれない。 

強さの象徴:サブマリーナ 116610LV “ハルク”、これ以上グリーンにはなれない

サブマリーナ “カーミット” スターとなったカエル

2003年、サブマリーナの誕生50周年にロレックスは創造性を発揮した。複雑なデザイン協議を重ね、時計にグリーンのベゼルを採用するという非常に大胆な一歩を踏み出したのだ。それによって、まったく新しい、それまで見たことのないモデルが独自のリファレンス(16610LV)で誕生した。この革新を完璧にするために、創意に富んだロレックスは時計に「マキシダイヤル」と呼ばれる少々サイズアップしたインデックスも採用した。これら多くの輝かしい革新が盛り込まれた時計に愛称が付けられないわけがなかった。 

葉と草以外に緑のもの、それはカエルだ。しかし、「サブマリーナ “カエル”」はあまり魅力的な響きではないので、なにか他の「カエル名」を見つける必要があった。それがジム・ヘンソンによってミシシッピ州リーランドで生み出された『マペット・ショー』のスター「カーミット」であった。この愛くるしく表情豊かなカエルのマペットは、1970年代と1980年代のほとんどすべての子供のアイドルである。 

あなたはほぼ間違いなくこの時代にまだ子供、もしくはティーンエイジャーだった。そのため、サブマリーナ “カーミット” を見る度に当時の記憶が蘇ってくる。あなたは少々憂鬱なノスタルジストとして、時計なんてまだどうでもよかった屈託のない学校時代の思い出に耽る。当時、誰かが350万円もする時計を手首に着けるだろうと予言し、しかもその時計は「カーミット」という名前を持っていると言ったならば、きっと大笑いしただろう。 

それはともかく、カーミットは映画やテレビのスター。まったく縁のない存在だ。おそらく縁を持とうと試みたこともないだろう。いずれにせよ、あなたが持っていないのは対をなす時計。ロレックスがピンクのベゼルを備えたサブマリーナを発表しない限り、“カーミット” の隣に「ミス・ピギー」が並ぶことはないが、先のことはわからない。 

心の中のカエルを呼び覚ます:ロレックス サブマリーナ “カーミット”(Ref.16610LV)

サブマリーナ “スマーフ” 小さな妖精

あなたがロレックス サブマリーナ “スマーフ”(Ref.116619LB)の着用者であるならば、ささいなことで怒りを感じる度に緑色になる気難しいサブマリーナ “ハルク” の着用者とは正反対だ。規律正しい人物で、十分に自分をコントロールすることができる。青い時計をどうしても手に入れたかったのは、愛くるしい小さな妖精が大好きだから。ホワイトゴールド製の輝かしいブルーのサブマリーナを購入したことは、あなたのスマーフ的な性格をよく表している。 

スマーフの生みの親であるベルギーの漫画家ピエール・クリフォール(ペヨという名前でも知られている)によると、妖精は人間の大人の手のひらに収まる。もしそうだとすると、そのタイツのポケットにサブマリーナ “スマーフ” が買えるだけの金額を収めることはできない。そのため、あなたはスマーフよりも大きく、時計を身に着けるために十分な腕のサイズを持っているに違いない。 

スマーフには約100人のさまざまなメンバーがいる。あなたの性格に一番近いのは、もしかしたらブレイニー スマーフかもしれない。物知りだが、理屈っぽくて他人をイライラさせる。そして、正しいサブマリーナに自分の資産を投資するだけの賢さも持っていた。あなたが “スマーフ” を昨日購入したのでなければ、大きな価値の増大を喜ぶことができるだろう。この時計の価値は2020年6月から2022年6月にかけて約80%上昇した。 

これには “ハルク” も “カーミット” も及ばない。この点において退屈な124060などまったく話にならない。そのため、この時計は「ブレイニー スマーフ」と呼んでもいいだろう。 

おそらく世界で最もスマーフ的な時計:ロレックス サブマリーナ “スマーフ”(Ref.116619LB)

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Sebastian Swart

Sebastian Swart

すでに数年前からChrono24のサイトを時計の買取と販売、そして時計について調べるのに使っていました。私は子どもの頃から時計に興味を持っており…

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