ロンジンは長い間、経験豊富なコレクターにも、この世界に足を踏み入れたばかりのコレクターにも、時計づくりの伝統や、その豊富な商品全体に通じるスタイリッシュさ、突出した品質というものをバランス良く提供し続けてきたブランドであり、200年近くにわたり、世界で最も尊敬される時計ブランドの一つとして、その歴史や伝統は現代まで受け継がれてきた。この記事では、ロンジンの歴史や人気のコレクション、そして価格などを見ていきたい。
ロンジンの歴史
1832年、オーギュスト・アガシがサンティミエで創業したロンジンは、オーダーメイドの時計メーカーとしてその歴史をスタートさせた。最終的に、1860年代に故郷の工場を買収した後で、大量生産へと舵を切った。そして商業化に続き、ロンジンは時計界の著名人を雇い入れ、技術革新に着手。アメリカの時計産業が花開く中、オーギュストと入社したばかりの甥のアーネスト・フランシロンは、エンジニアのジャック・ダヴィッドをアメリカに派遣し、アメリカの時計産業の発展について学ばせた。108ページにも及ぶ詳細な報告書を携えてスイスに戻ったジャックは、オーギュストに対し、品質管理、製造技術、経営スタイルなどをアメリカの基準に合わせ、競争に打ち勝つよう働きかけたのだ。その結果、ロンジンの企業としての体制やスタイルは変化し、1878年に初のクロノグラフ ムーブメントが開発されることとなった。モノプッシャームーブメント Cal. 20Hは、ストップ、スタート、リセットの3つの機能を1つのプッシュボタンで操作するという、現在でも珍しい技術的に印象的なデザインだった。このムーブメントにより、ロンジンは精度の高さで評判となり、数々のイベントで公式タイムキーパーを担当するようになった。その頃、一般市場でのロンジンのクロノグラフの人気上昇に伴い、偽造品業者がその時計のコピー品を作り始めるようになった。その結果、1860年代半ばから指揮を執るようになったアーネストは、ロンジンブランドを保護するため、1889年に商標登録を行った。市場をリードする品質と精度の評判が、障害飛越競技や競馬などの馬術競技とのつながりに拍車をかけ、やがてロンジンは他の分野のスポーツ競技の公式タイムキーパーも担当するようになり、芸術や体操競技、オリンピック、F1レース、陸上競技などのタイムキーパーを務めてきた。その歴史を通じて生み出された数々の革新的な時計製造技術により、ロンジンは現在も世界で最も尊敬され、最も売れている時計ブランドの一つと言えるだろう。
ロンジンの主要ムーブメント
ロンジンは、早期から量産化に特化したことにより、ムーブメント製造の分野、特にクロノグラフ部門における技術革新で長い歴史を誇る。1878年に生まれた初のクロノグラフ、Cal. 20Hに続き、ロンジンは徹底した研究体制、継続的な開発や投資を行うことにより、市場を席巻すべく、他のクロノグラフムーブメントの開発に着手した。それが功を奏し、生産性が高まり驚異的なペースで新しいクロノグラフムーブメントが開発されたのである。
1890年のCal. 19.73や909年の薄型のCal. 19.73N、そして感動的なスプリットセコンド クロノグラフである1922年のCal. 19.73Nなど、ロンジンはクロノグラフという複雑機構に大いなる歴史を残してきた。なかでも注目すべきは、1936年に発表されたクロノグラフ Cal. 13.ZN ムーブメントで、歴史的に最も重要、かつ技術的に最も優れたクロノグラフムーブメントの一つとして広く知られている。1947年に発表された後継機であるCal. 30CHも同様に高く評価されている。Cal. 30CHは1970年代に製造中止となり、それはロンジンのムーブメント製造の歴史の中で、最も輝かしく革新的な時代の終わりを意味することとなった。
ロンジンの主要なモデル
その象徴的なムーブメントに加え、それを搭載した時計もまた、非常に注目される存在となっている。機能性だけでなく美しさも重視した、1940年代のねじ込み式ケースバックを持つ控えめなドレスウォッチ、セイタッシェから、チャールズ・リンドバーグが1920年代にデザインした、パイロットが飛行中に自身の位置を計算できるパイロットウォッチ、リンドバーグ アワーアングルウォッチまで、ロンジンの歴史的なモデルのカタログは確かに素晴らしいものだ。しかし、ハイドロコンクエストやスピリットなどのモダンなモデルから、レジェンド ダイバーやウルトラクロンのような過去にインスパイアされたモデルまで、純粋な現代の時計作りを探求したい人であろうと、歴史豊かなブランドのヴィンテージスタイルの時計作りを求める人であろうと、あらゆるタイプのコレクターに最適なものを提供している。
ロンジンと著名人
時計製造と、オリンピックや馬術競技、F1などのイベントのつながりにより、ロンジンは長い間、エレガンス、洗練、そして時計製造の最高峰として捉えられてきた。その結果、多くの著名人から愛されてきた。例えば、オスカー女優のケイト・ウィンスレットは、2010年からロンジンのブランドアンバサダーを務めている。また、インドの女優で元ミス・ワールドのアイシュワリヤー・ラーイ・バッチャンは、1999年からロンジンの専属ブランドアンバサダーを務めており、ロンジンのグローバルな魅力と時代を超越したエレガンスを象徴している。ロンジンは、これらの有名な顔ぶれだけでなく、多くのアスリートや、モデル、俳優、ミュージシャンなどの「アンバサダー・オブ・エクセレンス」とも提携している。
価値と耐久性
現代の時計製造業界では、ロンジンの時計は、スイスの同業他社のものよりも入手しやすいが、その耐久性、クラフツマンシップ、そして品質の高さは、今でも高く評価されている。現代のロンジンの世界を超えて、ロンジンのヴィンテージモデル、特に歴史的に重要な意味を持つモデルやユニークな複雑機構を搭載したモデルは、コレクターの間で高い人気を誇っており、齢を重ねるにつれて価値が上がることも多い。このことは、ヴィンテージ ロンジンの魅力を長い期間にわたって楽しむことを目的とする、目の肥えたコレクターにとって、時計としての寿命の長さと並外れた価値があることを示している。
ロンジン VS タグ・ホイヤー
どちらもスイスの名門時計ブランドであるロンジンとタグ・ホイヤーは、両ブランドの歴史におけるクロノグラフの重要性から、比較されることがよくある。しかし、両ブランドのターゲットはそれぞれ異なる。ロンジンはより伝統的でクラシカルなデザインを、タグ・ホイヤーはよりアバンギャルドで “スポーティー” なアプローチを行っており、その結果、各ブランドは特定のスタイルの時計を求める、はっきりとした特徴の顧客層を持つ。この2つのブランドは一見似ているかもしれないが、もちろん例外もあるものの、ほとんどの時計において、それぞれのスタイルを提供している。