古いオメガ スピードマスターでいつも話題となるのは伝説的なムーンウォッチで、これに関する記事は無数にある。1969年に人類が史上初めて月に降り立った時に着用されていた時計の物語を描いていない時計マガジンやブログはほとんどない。それから50年にわたって、オメガは元々モータースポーツ用に作られたスピードマスター、月、NASAにまつわる伝説を築き上げてきた。
その結果、インフレを差し引いたとしても、“ヴィンテージ・スピディー” の価値はここ数年間で大幅に上昇した。
月面着陸の年以前のモデル、いわゆるプレムーン スピードマスターには現在1万ユーロ (約130万円) ほどの価格が付けられており、ものによってはさらに高価になる。価格は扱われるリファレンスナンバーとムーブメント、そして時計の (オリジナル) コンディションに応じて異なる。そこまで特別ではない70~80年代のモデルであっても、現在の価格は当時の購入価格の数倍となっている。
これは、何十年も前から時計を所有しているか、適切なタイミングで購入した方にとっては喜ばしいことだろう。
しかし、ヴィンテージ スピードマスターの購入を検討していて、予算が3000ユーロ (約37万円) 以内である場合はどうだろうか?他の選択肢はあるのだろうか?もしあるならば、その時計の価値がこれから上昇する見込みはあるのだろうか?
オメガ スピードマスター マークII – 1969年の特徴的なアップデート
その答えは「イエス」だ。そのような他の選択肢の1つは月面着陸と同じ年に発表された。そのため、文字盤のデザインはムーンウォッチに似ていて、同じ手巻きムーブメント (キャリバー861) を搭載している。その時計のモデル名は、スピードマスター プロフェッショナル マークII (Ref.145.014) という。
マークIIは当時スピードマスターの新しい2代目モデルであった。その違いはケースデザインで、50年代に由来し現在まで続くスピードマスターの丸いケースとは大きく異なる。
がっしりとした特徴的なマークIIのケースと、その後続モデル (マークIII、IV、4.5 など) が気に入るかどうかは好みの問題だ。もし気に入るならば、ヴィンテージ スピードマスターの選択肢の幅がぐんと広がる。それはモデルに関してだけではなく、できる限り低い入門価格でスピーディーの世界に入ることができる、ということでもある。なぜなら、マークIIの価格は約2000ユーロ (約25万円) であるからだ。要求によっては、それより安いものもある。これは、オメガ スピードマスター プロフェッショナルの価格と比べて手頃と言える。
さらに、絶えず上昇しているムーンウォッチの (新品) 価格から恩恵を受けることもできる。なぜなら、ムーンウォッチの価格上昇によって、経験上中古モデル、そしてセカンドラインの価格も一緒に引き上げられるからだ。さらに、オメガは2014年にマークIIの新モデルを発表した。その推奨販売価格は5200ユーロ (約65万円) で、これもヴィンテージ マークIIのさらなる価値上昇を促し、時計をより魅力的にしている。
灰色理論や推測に留まらないように、ヴィンテージ マークIIの価値が過去10年間でどのように推移してきたかを見てみよう:
Chrono24での平均販売価格 (黄色いライン) は、1250ユーロ (約15万円) から2200ユーロ (約27万円) へと、10年間で約1000ユーロ (約13万円) 上昇した (2019年3月)。
すでに述べたように、ここでは平均価格だけを扱っている。2009年の最低価格が1000ユーロ (約13万円) 以下で (水色のエリアを参照)、2019年の最高価格が約2600ユーロ (約33万円) であることを例に取れば、マークIIの価値は2倍以上、正確には2.6倍になっている。
また、2014/15年に2000ユーロ (約25万円) を越え、その上昇が現在まで続いている。上で述べたとおり、この期間にマークIIの新モデルが登場した。
オメガ スピードマスター マークII – 価格差&予測
さて、上記のような観察において2つの疑問が起こる。なぜこのような価格差があるのだろうか?そして、この価値上昇は今後も続いていくのだろうか?
オメガ スピードマスター マークIIの価格は、あらゆるヴィンテージウォッチと同じ様に、複数の要素に左右される。オリジナルコンディションを保っているかどうか、(オリジナル) メタルブレスレットが付けられているかどうか、ボックスと書類が付属しているかどうか、前回の点検はいつであったか、等など。これらすべては価格を上げる場合もあり、下げる場合もある。そして、もちろんディーラーから保証付きで購入するか、それとも個人販売者から購入するかでも異なる。最高のコンディションのヴィンテージ マークIIをすべて込みで手に入れたい場合、その価格は平均を上回ることになる。完璧を求めないのであれば、その価格も相応に下がる。
2つの疑問:
価値の上昇は確実なのか?
価値の上昇を保証することはできない。しかし、マークIIはその人気と定番オメガ スピードマスターの上昇する価格から、これまでと同程度に今後数年間も恩恵を受けると予想されている。少なくとも、それが現在示されている傾向である。
そして、すでに述べたように、このスピードマスターの世界への入門価格は (まだ) 比較的低い。この点においても、マークIIは手堅く素晴らしいおすすめヴィンテージ スピードマスターであり、ムーンウォッチの美しい代替モデルと言える。さらに、今年は月面着陸と同じくマークIIの50周年記念にあたる。マークIIにも長い歴史が存在するのだ。
まとめ: 私のようにこの時計に一目惚れし、手頃な価格で手に入れるということは、スピードマスターの物語の一部を手に入れるということでもある。相応な価格で購入したマークIIの価値減少は、今後数年にわたって起こらないと考えていい。マークIIはムーンウォッチのように人気で主流な時計ではないかもしれない。しかし、それこそがこの時計の魅力を生みだしている。それと同じことは、すべてのマーク シリーズやその他のモデルにも当てはまる。これらの時計には、特にスピードマスターの物語に興味があるならば、すべて一見の価値があることは間違いない。
ライターについて:
テオドシオス・テオドリディス (1972年生まれ) は、ドイツの時計ブログ「ZEIGR」の運営者であり、30年以上にわたる情熱的な時計コレクターでもある。テオドシオスは特にヴィンテージウォッチとクロノグラフを好んでコレクションしている。彼のスピードマスターコレクションには、ムーンウォッチ、マークII、マーク4.5、マーク40、ウルトラマン リミテッドエディションが含まれ、2013年以来自身のブログにて様々な時計に関する記事を執筆している。
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