クォーツ時計はとりわけ要求の高い時計コレクターや専門家たちに相当に悪いイメージを持たれている。その理由もある程度までであれば理解できる。もちろん、時計を開ければ興ざめで、外からはクラシック時計の様に見えても、その内部では白いプラスチック製部品 (ムーブメント固定リング)、バッテリー付きの小さいムーブメント、コイルやその他のあまり見栄えがしない部品が使用されている。少なくとも私が初めてアナログ式クォーツ時計を開いたときはそうであった。時計内部に時計職人の技術を見ることはできず、それはただの小さな電気機器とプラスチックであった。
美しいクォーツムーブメントは存在するのか?
最初の落胆が大きかっただけに、70年代製のヴィンテージ オメガ シーマスター クォーツを初めて開いたときの喜びは格別であった。この時計は私に全く異なるイメージを与えてくれた。もちろんストリップライン、チップ、バッテリーは使用されていたが、赤いメッキが施されたムーブメントコンポーネント (!) もあり、何よりもそれはメカニックに見えたのだった。
クォーツムーブメントがすべて同じでないことをはっきりさせるために、私は2本の時計をもう一度探し出し、開き、隣に並べた:
クォーツ時計に断固反対の方であっても、そこに違いがあることは認めざるを得ないだろう。しかし、これがクォーツムーブメントを美しいと言うために十分であるかどうかは、別の問題である。個人的に、私はさまざまな高級時計メーカーがクォーツショックの間に開発し、自社の時計に搭載した古い「高級クォーツムーブメント」が好きだ。単純にわくわくするのである。
そして、これらの古い高級クォーツ時計が些細とは言えない時計史の一章を表していることも忘れてはいけない。歴史に興味があるのであれば、クォーツ時計を抜きにして語ることはできない。
クォーツショックに感謝!
機械式時計を製造していた当時のメーカーにとってクォーツショックは青天の霹靂であった。60年代終わり / 70年代初めに、日本製のはるかに正確で安価で扱いやすいクォーツ時計が市場に登場し、機械式時計は無用の長物となった。なぜなら、時計の主な仕事はできる限り正確かつ確実に時間を示すことであり、この点に関してはクォーツ時計の方が明らかに優れていたからだ。おそらく一般の時計購入者もこのことを認識しており、彼らは現代的な時計を手にした。古き良き機械式時計の役目は終わったのだ。そして、これは同時にスイスやドイツの多くの機械式時計メーカーにとって倒産を意味していた。
しかし、いくつかの有名なスイスメーカーは (望んだかどうかは別にして) 時代に適応し、クォーツ時計の自社生産を開始した。クォーツショックの衝撃は当時それほど大きかったわけだが、そのおかげでオメガ、ジャガー・ルクルト、IWC、カルティエ、ホイヤー、ブライトリング、ジラール・ペルゴ、さらにはパテック フィリップやロレックスなど、有名な高級ブランドの非常に興味深いクォーツモデルを現在見ることができる。
これらすべての伝統ブランドは当時クォーツ時計を製造し今日まで生き残った。また、その中のいくつかのブランドは今でもクォーツモデルをコレクションに有しているが、あまり大っぴらに宣伝はしていない。これは間違いなくイメージの問題だろう。機械式時計の方が高貴で高級であると見なされているのだ。
スペースエイジ&70年代デザインの時計 ― 個性的なモデル
私からのアドバイスは、まず先入観を捨てて、大手時計ブランドの美しいヴィンテージ クォーツモデルを少し探してみること。そうすれば、感動するよりも驚きの方が大きい70年代デザインの時計に出会うことは間違いない。なんと言っても、これらの時計の一部は実験精神に富んだ「スペースエイジ」から生まれたのだから:
しかし、多少の根気強さがあれば端正なデザインを持つクォーツ時計も見つけられる。私はどうしてもコレクションにヴィンテージ ホイヤーを加えたかったので、数年前にこのヴィンテージ ダイバーズウォッチを購入した。これはまだタグ・グループに統合される前の80年代製ホイヤー プロフェッショナル 1000m (Ref.980.023) である:
ヴィンテージ クォーツ時計: メリットとデメリット
正確でほとんど手間のかからないムーブメント以外のクォーツ時計の大きなメリット、それは価格である。というのも、ヴィンテージ クォーツ時計は人気商品ではないからだ。先述した通り、クォーツ時計は悪いイメージを持たれており、気取った時計ファンに軽視されている。そして、彼らがこの時計に手を出すことはほとんどない。
反対に先入観を持たないコレクターはこのチャンスを利用し、比較的安価な価格で (稀に非常に希少な) 時計を購入する。大抵の場合、ヴィンテージ クォーツ時計は外観がほぼ同じ機械式バージョンよりも若干安い。
クォーツ時計のデメリットは時計の修理とオーバーホール ― 少なくとも一般的にはそう言われている。しかし、クォーツ時計は修理やオーバーホールをしなくても、20年、30年、およびそれ以上の年月の間動き続けることができる。ただバッテリー交換だけは時々必要だ。この点に関して、機械式時計の方が若干故障しやすく、メンテナンスを必要とする。ところで、これは現在軍隊において使用されている時計に、高価で故障しやすくメンテナンスが必要な機械式時計ではなく、クォーツ時計の方が好まれている理由でもある。
しかし、もし故障した場合は?もちろんクォーツ時計も修理可能だ。時計師は今でもクォーツ時計の修理を学んでおり、私はグラスヒュッテ時計師学校を訪問した際に、これを実際に確認している。時計師が喜んでクォーツ時計を修理するか、そして修理が手間とコストに見合うかどうかは、もちろん別の話である。一般的に言って、クォーツ時計に修理する価値があるかどうかは、その時計の価格と希少性による。
クォーツ時計の交換部品に関しては、実際に手に入れるのが難しい場合がある。しかし、これはいくつかのヴィンテージ時計においても同様だ。一番いいのは、購入前に時計のムーブメントと、交換部品および交換ムーブメントについて調べておくこと。中には、ヴィンテージ クォーツ時計を手に入れる際に、交換部品または交換ムーブメント用として同じムーブメントを搭載するスペア時計を購入するコレクターもいる。この場合、スペア時計の外観は問題ではなく、ムーブメントだけが重要になる。
もちろん、ヴィンテージ クォーツ時計を直接メーカーに送ることもできる。しかし、その場合コストは (さらに) 上がるため、非常に希少で高価な時計の場合にしかおすすめできない。
もしヴィンテージ クォーツ時計に興味が湧いたならば、以下の3本をおすすめしたい:
- オメガ シーマスター、ジュネーブ、コンステレーションなど
- ジャガー・ルクルト マスタークォーツ
- ホイヤー プロフェッショナル、ケンタッキーなど
クォーツ時計の女王
1970年代後半、多くのブランドがクォーツ時計を市場に送り出したが、ロレックスもその例外ではなかった。しかし、ロレックスがロレックス オイスタークォーツによって時代の流れを追いかけたのはクォーツムーブメントにおいてだけではなかった。そして、その結果、非常に独特な角張ったデザインを持つ、一体化ブレス付きのロレックスが生み出された。
現在、このモデルは比較的安価なヴィンテージ ロレックス時計の入門機となっており、その価格は約36万円から始まっている。
以上がヴィンテージ クォーツ時計についてである。クォーツ時計に一見の価値があるかどうかは、各自が自分自身で決めるべきだろう。しかし、この記事によってヴィンテージ クォーツ時計に対する一般的な先入観と疑念を少しでも払拭することができたとしたら幸いである。