あなたは自分自身をどんな時計愛好家と見なしているだろうか?一般的に最も多い回答のひとつは「ヴィンテージ派」。私自身は自分を「ヴィンテージ派」だとは思わないが、ヴィンテージ時計だけに夢中な時計愛好家に親しみを感じる。私もいくつかのヴィンテージ時計を所有しており、それぞれの時計に素晴らしいストーリーがある。だが、ヴィンテージ時計を収集することは多大な時間を必要とする趣味ともなる。結局のところ、ヴィンテージ時計を購入してそれがオリジナルの状態または完璧な状態であることは期待できない。ヴィンテージ時計を購入するには時計の世界へ深く没頭する必要があるが、私は喜んで没頭する。
だが、もし時計の世界へ没頭する時間がなかったり、あるいは単純にヴィンテージ時計に興味がない場合はどうか?幸運なことに、レトロな外観をした時計を堪能する方法は他にもある。過去10年ほどの間、多くの時計ブランドが自社の人気ヴィンテージ時計にインスピレーションを受けたモデルを発売している。ヴィンテージ風の外観と素晴らしい背景となる物語が現代のテクノロジーと組み合わされた時計には、どこかとても魅力的に感じられるものがある。
クリスマスが間近に迫る中、クリスマスのボーナスを真の定番時計に投資することを考えると、ブライトリング ナビタイマーやオメガ スピードマスターなど、人気のクラシックモデルのアンティークバージョンを自分にプレゼントするか、それともモダンなリニューアル時計を選ぶか、という問題に直面する。しかし、これらのリバイバルモデルはどのように評価されているのだろうか。また、有名な時計のアイコンである初代モデルを追い越すことができるのだろうか。

復刻版: その魅力は?
リメイクされた時計は、過去のオリジナル作品を新たに見直すものであり、多くの場合、技術と製造基準においてアップデートされている。多くの復刻版の驚くべき点は、ヴィンテージ時計愛好家だけではなく、新しい時計に興味のある人をも、さまざまな方法で満足させられるということだ。
まず、リメイクはそのブランドの最もアイコニックな時計の現代版であることがよくあり、ブランドの核心に迫っている。アイコニックな時計ほど、たくさんの時計購入者にとって魅力的なものはない。何にせよ、その時計が象徴となったのはそれなりの理由がある。良い復刻版を作ることができれば、ブランドにとってはしばしばヒットは保証されているも同然となる。なぜならオリジナルモデルがすでに人気を博しているため、時計のデザインが受け入れられるかどうか心配する必要がないからだ。
これは復刻版の人気を示す2つ目の理由へと繋がる。ヴィンテージ時計はその投資価値の可能性により、ここ20年の間で多くの人を魅了してきた。その結果、ビッグブランドのアイコニックな時計の価格が大幅に上昇した。一部の定番時計は、今では非常に入手困難、または全く入手できない。そしてここで復刻版が重要な役割を果たすようになる。時計ファンがアイコニックな時計のレガシーを購入できるということは、ブランドにとって驚くほどの効果をもたらすのだ。
これによってヴィンテージ時計のコレクターもリメイクに興味を持つ理由がわかる。まず、コレクターは自分のお気に入りのアイコニックな時計が、歴史的に正確な方法できちんと尊重、反映されていて欲しいと思っている。次に、もしオリジナルのヴィンテージモデルが希少になってしまった場合、または高額になりすぎてしまった場合、復刻版は同等な名声を持つ次善の選択肢となる。一部のブランドは、オリジナルに忠実な時計を製造するためにコレクターに助けを求めたりもしている。では、ここから近年発売された優れた復刻版とそのオリジナルモデルの違いを見ていこう。
1. ブライトリング ナビタイマー806 1959 リ・エディション

リメイクされた時計の中でオリジナルに忠実な時計だと多くの賞賛を浴びている1本は、2019年に発売されたブライトリング ナビタイマー Ref.806 1959 リ・エディション。この時計はブライトリング史上最もアイコニックで極めて重要視されているモデルの1つ、ナビタイマー 806の生誕60周年を記念して発表された。ブライトリングはケースサイズ、プレキシガラスクリスタル、文字盤のディテール、そしてベゼルに施したビーズ装飾の点においてまで、1959年のオリジナルを忠実に再現している。
オリジナルと現代版の違いはムーブメントにある。オリジナルの806にはヴィーナス178またはバルジョー72が搭載されており、現代版にはブライトリングの自社製キャリバー B09が搭載されている。これにより、着用者が歴史的な時計のルックスを最新のテクノロジーで楽しめることを可能にしている。ナビタイマー 806 1959 リ・エディションは、オリジナルを最も忠実にリメイクされた時計の1つで、生産本数は1959本と限定されている。数に限りがあるが、Chrono24では妥当な価格で入手することができる。
2. オメガ スピードマスター アポロ11号 50周年記念 ムーンシャイン ゴールド
2019年、オメガはスピードマスター アポロ11号 50周年記念 ムーンシャイン ゴールドを発表した。1969年、オメガは月面着陸に成功したアポロ計画と宇宙飛行士に敬意を表し、ゴールドのスピードマスターをシリアルナンバー付き、1014本限定で製造した。2019年に登場した時計は、オリジナルのイエローゴールドのアポロ11号のリメイクである。

オメガ スピードマスター アポロ11号 50周年記念 ムーンシャイン ゴールド リミテッドエディションは、時計の外観に関してはオリジナルモデルに非常に忠実である。これはバーガンディのベゼルとブラックのオニキスアワーマーカーを備えた、素晴らしいイエローゴールドの時計。だが、いくつか重要な違いもある。最大の変更点は、1969年のオリジナルに使用されたイエローゴールドよりも淡い色合いを持つムーンシャイン ゴールドが採用されている点だ。

また、オリジナルのアルミニウムベゼルの代わりにバーガンディのセラミックベゼルが採用されている。多くの復刻版時計と同様、オメガもムーブメントに最新の自社製キャリバー 3861を搭載している。オメガ スピードマスター アポロ11号 50周年記念 ムーンシャイン ゴールドは1014本限定で発売され、瞬く間に売切れた。この時計は、1969年のオリジナル同様、アイコニックな時計という地位を確立している。
3. セイコー ダイバーズウォッチ 55周年記念 限定モデル
今年はセイコーによる初のダイビングウォッチの生誕から55年である。それを記念し、セイコーは同社で最もアイコニックなダイバーズウォッチの3本をリメイクした。セイコー SBEX009は、1965年に発売されたセイコー初のダイバーズウォッチ62MAS-010の復刻版。セイコーは全体的な外観に関してオリジナル版を忠実に再現しているが、今日の基準に合わせるためにいくつかの重要な点を変更した。

まず、セイコーはケースを37mmから39.9mmへとサイズアップ。そして復刻版のブルートーンの文字盤とラバーストラップは、オリジナルのブラックのものから変えられている。さらにムーブメントに関しても、有名なハイビートムーブメントであるハイエンドな自社製キャリバー8L55へとアップグレードされている。セイコー SBEX009は生産量1100本限定で、2020年7月より発送が開始された。運が良ければ、まだ入手できるかもしれない。

4. セルティナ DS PH200M
数量に限定がなく、もっと手頃な価格で入手できるのがセルティナ DS PH200Mだ。これは1967年に発売されたセルティナ PH200Mの復刻版である。両方ともほぼ同じ外観に見えるだけではなく、オリジナルも復刻版もセルティナのトレードマークであるダブル・セキュリティー (DS) システムを採用している。DSシステムはケース内のムーブメントを囲むラバーシールで、耐水性と衝撃吸収性を高める役割を果たす。

セルティナはケースサイズを40mmから42.9mmへと変更した。40mmでも現代の標準サイズではあるが、現在よく見られる多くの時計と合わせてより大きいサイズへ変更され、現代のETAパワーマティック80.111ムーブメントを搭載できる十分なスペースができた。このキャリバーは驚異的な80時間ものパワーリザーブを誇る。復刻版にはいくつか変更点があるが、DS PH200Mを見ると喜びを感じられるほどセルティナはオリジナルデザインを忠実に守ってデザインされている。さらに、前述のように数量限定ではないため、苦労せずに見つけることができ、無敵の価格 (695ユーロ、日本円にして約8万6000円) で販売されている。