ロレックスは世界的にも有名なブランドで、多くの人にとって、今やその名は高級時計の代名詞となっており、人気も高い。そして、時計ファンの目を輝かせるのは現行モデルだけではない。ヴィンテージモデルの人気はうなぎのぼりであり、熱狂はコレクターの間だけにとどまらない。過去数十年に作られた時計は特別な魅力があり、ストーリーを持ち、パティナ(古色)の風合いが人々を魅了する。そして、多くは年月を経るにつれて希少になってゆくため、ヴィンテージロレックスもさらに格が上がることになる。しかし、購入する際には注意すべきことがある。今回は正しいヴィンテージウォッチの選び方や、購入の際の注意点をご紹介したい。
古い時計はいつから「ヴィンテージ」と呼ばれるようになるのか。
欧米におけるヴィンテージカーなどとは異なり、時計にはヴィンテージに関する正確な定義はない。従来、ヴィンテージは少なくとも製造から25年は経っている時計でなければならないとされていた。今日でいえば、1990年代後半から2000年代前半の時計も含まれてしまうが、それでは多くの時計愛好家が異論を持つだろう。そのため近年では、次のような考えが定着している。100年以上前の時計をアンティーク時計と呼び、1980年代までに製造された時計はヴィンテージと呼ぶ。1990年から2010年の間に製造された時計は、ネオヴィンテージのカテゴリーに入る。
過去の魅力的なロレックスモデル
Chrono24のマーケットプレイスには、もう製造されていないロレックスの時計が数多く出品されている。以下に、特に魅力的なモデルをいくつか紹介したい。
ロレックス オイスター パーペチュアル Ref. 1003
エレガントなオイスター パーペチュアル Ref. 1003は、ロレックスのヴィンテージウォッチとしては比較的手頃な価格で購入できる。1960年代に製造されたこの時計は、34mmのステンレス製ケースを備え、ユニセックスウォッチとして理想的だ。文字盤はシルバーホワイトで、アプライドのバーインデックスが配されている。そして、この時計の一番の見どころは、いわゆる「エンジンターンドベゼル」だ。表面が平坦な12個のマーキングと細かい刻みのフルーティングが交互に施されたベゼルである。
この時計の心臓部は42時間のパワーリザーブを備えたキャリバー1560だ。ロレックスの他のキャリバーと同様、1560も「最高級クロノメーター」として認定されており、精度も高い。Chrono24では、状態の良いロレックス オイスター パーペチュアルが60万円前後で購入できる。
ロレックス デイトジャスト Ref. 16013
1980年代の雰囲気をそのままずばりと体現している時計をお探しならば、ロレックス デイトジャスト 16013のコンビカラーバージョンがまさにぴったりだろう。36mmのステンレス製ケースにイエローゴールド製のフルーテッドベゼルを備えている。リューズとジュビリーブレスレットのセンターリンクもゴールド製だ。シャンパンカラーの文字盤を選べば80年代ルックの完成だ。白または黒の文字盤を選ぶこともできる。時計内部にはロレックスが1977年〜1988年に製造していた自動巻きキャリバー3035が搭載されている。クロノメーター認定を受けており、日付表示付き、パワーリザーブは完全に巻き上げた状態で42時間だ。
文字盤の色や時計の状態にもよるが、デイトジャスト 16013の価格はおよそ90万円〜110万円だ。
ロレックス デイトナ ポール・ニューマン Ref. 6239
デイトナの人気ヴィンテージモデルといえば、まず思い浮かぶのは、いわゆるエキゾチックダイヤルを備えたデイトナ ポール・ニューマン Ref. 6239だろう。文字盤は3色使いで、オリジナルのブラックやシルバーホワイトの文字盤よりもカラフルだ。このポール・ニューマンの文字盤は当時大失敗作とされ、ロレックスはわずか数年で生産を終了してしまった。それはつまり、この時計はかなりレアだということだ。ポール・ニューマンという名前も、このモデルが世界でも人気のあるヴィンテージウォッチである一因だ。2017年にハリウッドスターの個人コレクションからオークションに出品され、約19億8800万円で落札されたことで、人気はさらに沸騰した。それ以来、状態の良いエキゾチックダイヤルのデイトナ6239には、少なくとも3480万円は必要になった。また、シンプルな白文字盤や黒文字盤のモデルを選ぶこともできる。その場合、価格はおよそ1060万円〜1200万円だ。
ロレックス サブマリーナー Ref. 6538 「ビッグクラウン」
もちろん、人気のヴィンテージロレックスのリストにサブマリーナーを入れないわけにはいかない。魅力的なリファレンスは数知れずあるが、今回Chrono24が選んだのはサブマリーナー Ref. 6538「ビッグクラウン」だ。数々のジェームズ・ボンド映画でショーン・コネリーが腕に着けていた時計である。『007は殺しの番号』、『007/ロシアより愛をこめて』、『007/ゴールドフィンガー』といった作品でコネリーの腕に巻かれていたこのモデルは、彼の私物だったとさえ言われている。もちろん、ジェームズ・ボンドにまつわる時計はこれだけではない。その他の有名なボンド・ウォッチについては、こちらの記事をご覧いただきたい。
サブマリーナー Ref. 6538は、1956年にサブマリーナー Ref. 6536とともに発表された。2つの時計の主な違いは、Ref. 6538の方がリューズが大きいことで、より個性的なデザインになっている。また、Ref. 6538には2つのバージョンがあり、この2つを見分けるのは簡単だ。一つ目のバージョンでは、文字盤の下半分にテキストが2行(ツーライナー)あり、二つ目のバージョンには4行ある。ちなみに4行表記の「フォーライナー」は、サブマリーナーとしては初めてクロノメーター認定ムーブメントを搭載したモデルである。ツーライナーとフォーライナーどちらにも、ベゼルにハッシュマーク付きのものとそうでないものがあり、ハッシュマーク付きの場合、ベゼルの0~15の間にミニッツマーカーが見られる。「ビッグクラウン」サブマリーナー Ref. 6538の価格は1130万円前後からで、特に保存状態の良いものでは3400万円を超える場合もある。
ロレックス GMTマスター Ref. 6542
次に紹介する時計もジェームズ・ボンドと関係がある。ロレックス GMTマスター Ref. 6542は、人気の高い赤青カラーのGMTマスターの初代リファレンスだ。『ゴールドフィンガー』では、ボンドガールのオナー・ブラックマンがプッシー・ガロア役で着用。当時、女性がこのサイズの腕時計を身につけるのは珍しいことだった。そして、彼女の演じたゴールドフィンガーのパーソナルパイロットがとてもクールな役柄だったこともプラスになった。ロレックス GMTマスターは、そもそもパイロットが2つのタイムゾーンの時刻を同時に読み取れるように設計されたものなのだ。GMTマスター Ref. 6542はロレックスの究極の定番だ。ロレックスがベークライト製ベゼルに採用した赤青カラーは、現在でもGMT時計のスタンダードとなっている。しかし、ベークライトベゼルは素材として割れやすいため、この時計の弱点のひとつでもある。したがって、保存状態の良い個体を手に入れるのはなかなか難しい。許容範囲内のコンディションで、平均約890万円は必要だろう。
その他の人気ヴィンテージ・ロレックスの一覧
モデル / リファレンスナンバー | 特徴 | 価格(約) |
デイデイト / 18039B | 「トリドール」、36mm、イエローゴールド、ホワイトゴールド、ローズゴールド、プレジデントブレスレット | 270万円 |
エクスプローラー II / 1655 | 「スティーブ・マックイーン」、40mm、ステンレス、オイスターブレスレット、24時間表示の固定ベゼル、第2タイムゾーン | 450万円 |
キングマイダス / 3580 | 文字盤に「ΜΙΔΑΣ」の文字、27mm、イエローゴールド、手巻き、ジェラルド・ジェンタによるデザイン | 470万円 |
デイトジャスト オイスタークォーツ / 5100 | 「テキサノ」、39mm、ホワイトゴールドまたはイエローゴールド、クォーツムーブメント「ベータ21」、角張った70年代デザイン | 520万円 |
サブマリーナー / 16800 | 文字盤に「Comex」のロゴ、40mm、ステンレス、オイスターブレスレット、デイトまたはノーデイト | 1870万円 |
ヴィンテージ腕時計を購入する際の注意点
もしヴィンテージロレックスに興味があるなら、失望するようなことにならないように、購入前に心に留めておいて欲しい注意点をいくつか紹介したい。
- 販売者の評判: 購入前に販売者について調べる。相手が販売事業者であれば、他の人たちの経験を参考にする。関連のフォーラムも良い情報源になる。個人販売者から購入する場合は、事前に専門家による鑑定を受けるようにする。オンラインマーケットプレイスで購入する場合は、Chrono24 Certified(Chrono24が提供している真贋鑑定サービス)などのサービスを利用する。
- 徹底的にリサーチ:探しているモデルについて購入前に詳しく調べる。リファレンスナンバーから製造本数、使用されているムーブメント、時計の特別な機能や特徴まで。夢の時計について詳しければ詳しいほど、おかしな点があれば気づく可能性が高くなり、金銭的に高くつくような失敗を回避できる。
- メンテナンス履歴に関する情報:中古車の定期点検整備記録簿と同様に、時計の記録書類には、過去にどのようなオーバーホールや修理が行われたかが記録されている。定期点検が正規店で行われているようなら良いサインである。また、時計がオリジナルの状態か、あるいは部品が交換されているかも確認できる。こういったことは価格に大いに影響する。
- 証明書: 時計の証明書類を確認する。正しいシリアル番号や製造番号が記載された請求書、印鑑が押された書類原本、または保証書などを確認する。
- 直感を信じる: 信じられないほど良い条件の商品で、どことなく違和感を覚えるような場合は、特に慎重に吟味するべきだ。すべての要素を徹底的に吟味してもなお違和感が拭えない場合は、その時計の購入は控えた方が良い。
ヴィンテージウォッチはどこで購入できるのか
ヴィンテージロレックスを購入するにはさまざまな方法がある。一つは、実店舗での購入だ。実店舗での購入のメリットは、店の担当者と話しができ、購入前に実際に時計を見ることができることだ。デメリットは、通常は価格がかなり高く、品揃えが比較的少ないことだ。その点はChrono24のようなマーケットプレイスでは違う。多くのプロの販売事業者や個人が時計を出品しており、誰もがそれぞれ自分に最適な時計を見つけることができる。また、安全な支払い方法と認証サービスも整備されており、安心して購入できる。
有名なオークションハウスも、憧れのヴィンテージロレックスを手に入れる方法の一つだ。ただし、他の入札者や希望者によって、販売価格が大幅に上昇する可能性があるので注意が必要だ。また、販売価格に加えてオークションハウスへの手数料も発生する。他にも時計見本市や関連フォーラム、SNSでもヴィンテージ時計は頻繁に取引されているが、こういうところでは特に危機意識を持ち、警戒する必要がある。玉石混交さまざまなものが売られているので、見栄えのいい写真に惑わされないで欲しい。
価値の安定性
ロレックスの時計は一般的に非常に価値が安定している。値下がりするのは非常に稀で、ほとんどは値上がりするのが常だ。特に生産中止になったモデルは価値が上がり、コレクターの間だけでなく中古市場でも非常に高値で取引されることが多い。そのため、ロレックスのヴィンテージ腕時計は投資にも非常に適している。
まとめ
最終的には、どのモデルをどこで買うかは皆さま次第だ。この記事では、購入の際に気をつけるべきことを紹介し、ヴィンテージ時計とは何かを説明した。古いロレックスモデルの魅力についても理解していただけただろう。あとは皆さまがヴィンテージ時計探しを楽しみ、良い商品を購入し、その時計を着けて素敵な日々を過ごすことができればなによりだ。