時計を収集している者なら誰でも知っていることだが、一本の時計を魅力的なものにする要素はたくさんある。デザイン、その時計の歴史、著名な愛用者、そしてもちろん技術的な要素もある。この記事ではまさにこの技術的な要素に光を当て、さらに高性能なムーブメントを紹介していこう。ここで取り上げるのは、何十年にもわたってその信頼性を証明してきたムーブメントである。つまり、リシャール・ミルのような最先端のハイテクキャリバーではなく、日常のあらゆる場面で確かな働きを見せる「働き者」のムーブメントだ。
ロレックス キャリバー3135:ブランドを支えた名機
ロレックスほど堅牢性と高精度を体現しているブランドはない。ロレックスのキャリバー3135はこの評価に大きく貢献してきたムーブメントである。1988年に初登場し、ロレックスの中でも間違いなく主要なキャリバーの一つに数えられる。搭載モデルはサブマリーナー デイト、デイトジャスト 36、シードゥエラーなどだ。ロレックスがこのムーブメントから後継キャリバー3235への段階的な移行を始めたのは、2015年になってからのことである。3135の何が特別かと言えば、それは堅牢性、精度の高さ、低メンテナンスな点にある。たとえば、ロレックスは赤く陽極酸化処理された部品を使用し、巻き上げローターに一般的なボールベアリングを使わずに、ローター軸受に合成ルビーを採用しているが、これは摩耗を最小限に抑えるためだ。2005年頃からは、毎時2万8800振動のテンプに青色のパラクロムヒゲゼンマイが採用されるようになった。この合金は温度変化や磁場の影響を受けにくく、従来の素材と比べて衝撃への耐性も飛躍的に向上している。パワーリザーブは48時間と突出した数値ではないが、十分すぎる性能だ。一方、日差±2秒という精度は日常使いの機械式時計としてはトップクラスの数値である。

ETA バルジュー7750:クロノグラフキャリバーのスタンダード
ETA バルジュー7750の歴史は1973年に始まる。クロノグラフの需要が高まる中、設計者のエドモン・キャプトがバルジュー社のためにストップウォッチ機能と自動巻き機能を備えたキャリバーを開発した。250個の部品で構成され、カム式のクロノグラフ制御方式を採用し、曜日と日付を表示する。この構造により、文字盤には3時位置に曜日・日付表示、12時および6時位置にはそれぞれミニッツカウンターおよびアワーカウンター、9時位置にはスモールセコンドを配置するレイアウトとなっている。最大の魅力はその機能性にあり、多くの時計メーカーが自社のクロノグラフにこのムーブメントを採用している。IWCやブライトリングといった業界大手のブランドを含む多くのメーカーが、7750をベースキャリバーとして用い、それぞれ独自の要件に合わせてモジュール追加やその他の改良を施している。ETA バルジュー7750はおそらく最も広く使用されているクロノグラフキャリバーであり、このリストに名を連ねるにふさわしい。

レマニア5100:頑丈な働き者
レマニア5100はバルジュー7750と同様に1970年代に登場した。両者はいずれも、はるかに高価な自社製キャリバーに代わる手頃ながら高性能な選択肢として開発され、さまざまなメーカーの無数の時計に搭載されてきた。一見すると、文字盤のレイアウトも同じように見える。しかし、よく見るとレマニア5100にはクロノグラフ秒針とクロノグラフ分針の両方がセンターに取り付けられていることが分かる。また、12時位置のインダイヤルを24時間表示として使用している。5100ムーブメントは長い間時計専門家たちの間であまり評価されてこなかった。外観が比較的シンプルであることや、ナイロンやプラスチック製部品が用いられていることから、否定的な意見も少なくなかったのだ。しかし、これらの素材は摩耗をできるだけ少なくするために意図的に採用されたものである。美観という点を除けば、レマニア5100は実に高性能で優れた設計のムーブメントであり、オメガ、ジン、フォルティス、ポルシェデザインなどの数多くのモデルに搭載されてきた。生産が終了して以降、レマニア5100はコレクターの間で人気のアイテムとなっている。

エル・プリメロとその歴史的偉業
エル・プリメロ キャリバー 3019PHCはその名の通り、世界初の自動巻きクロノグラフキャリバーだ(エル・プリメロはエスペラント語で「第一の」の意)。スイスの伝統的ブランドであるゼニスがモバードと共同開発したもので、1969年1月10日の発表時には世界中を驚かせた。ブライトリング、ホイヤー・レオニダス、ハミルトン/ビューレン、デュボア・デプラによるコンソーシアムが開発したキャリバー11や、日本の時計大手セイコーが開発したキャリバー6139よりも、数ヶ月早い発表だった。エル・プリメロは今では立派な一大ファミリーに成長している。このシリーズのすべてのムーブメントに共通するのは、毎時3万6000回振動するハイビートのテンプだ。この周波数により、エル・プリメロを搭載した時計は1/10秒単位で時間を計測できる。エル・プリメロの品質は他のメーカーにとっても魅力的だったため、かつてはロレックスもコスモグラフ デイトナにこのムーブメントを搭載していたことがある。

数字は嘘をつかない:各キャリバーの基本データ
全体像を把握しやすくするため、今回紹介したキャリバーの主な仕様と代表的な搭載モデルを一覧表にまとめた。
ムーブメント | テンプ振動数(A/h) | パワーリザーブ | 石数 | 製造期間 | 搭載モデル |
ロレックス 3135 | 2万8800回 | 48時間 | 31 | 1988年〜2015年頃 | ロレックス デイトジャスト、ロレックス サブマリーナー デイト、ロレックス ヨットマスター |
バルジュー7750 | 2万8800回 | 48時間 | 25 | 1973年〜 | タグ・ホイヤー フォーミュラ 1、ブライトリング クロノマット エボリューション |
レマニア5100 | 2万8800回 | 48時間 | 17 | 1978年〜2002年頃 | ジン スペースクロノグラフ 140/142 |
エル・プリメロ Cal. 3019PHC | 3万6000回 | 50時間 | 17 | 1969年〜1987年頃 | ゼニス エル・プリメロ A384、ロレックス コスモグラフ デイトナ |