2023年11月07日
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伝説的俳優スティーブ・マックイーンとその時計たち

Donato Emilio Andrioli
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スティーブ・マックイーンは1960年代から70年代にかけて熱狂的な人気を博した米国の俳優であり、数え切れないほどの西部劇、冒険映画、アクション映画に出演している。「キング・オブ・クール」と呼ばれた彼は、生前すでに絶対的な存在と見なされていた。このカリスマ俳優はスクリーンの中だけでなく、実生活でも常にスリルに身を任せた命知らずだった。バイクレースやカーレースを愛する情熱的なモータースポーツ・ファンだった彼は、1970年にセブリング12時間レースでポルシェ908を駆り、2位という信じられない成功を収めた。興味深いのは、彼が正真正銘の時計マニアだったという事実である。そこで今回は、スティーブ・マックイーンの時計について、振り返ってみたいと思う。

レーシングスポーツの2つの象徴:スティーブ・マックイーンとホイヤー モナコ

時計ファンがスティーブ・マックイーンについて語るとき、必ず思い浮かべるのがホイヤー モナコだ。この時計は、映画『栄光のル・マン』(1971年)で彼が着用したことで、絶対的なレジェンドとなった。この角ばった時計はタグ・ホイヤー カレラほど時代を超越したデザインとはならなかったが、今日でもアイコンウォッチであることは間違いなく、タグ・ホイヤーのカタログに掲載されている。

Wurden gemeinsam zu Kult-Legenden: Steve McQueen und die Heuer Monaco aus dem Film Le Mans.
レジェンドとなったスティーブ・マックイーンとホイヤー モナコ。映画『栄光のル・マン』より。

このクロノグラフが 「キング・オブ・クール」の手に渡ったのは、幸運な出来事が重なったことによるものだった。モナコの開発に資金を使い果たしてしまい、マーケティング予算がほとんど残っていなかったジャック・ホイヤーは、なんとか低予算でこの時計を宣伝する方法を模索していた。そして、まさにその時スポンサーを探していたF1ドライバーのジョー・シフェールに出逢い、そのチャンスを見い出したのだ。慧眼と言えよう。以来シフェールは、レースでの時計着用だけでなく、レーシングカーやオーバーオールにホイヤーのロゴを着けるようになった。スティーブ・マックイーンの手にモナコが渡ったのは1970年、『栄光のル・マン』の撮影中だ。マックイーンは主役のモデルであり友人でもあったシフェールになりきるため、衣装は細部まで再現された。2012年のフィリップス・オークションでは、この時着用した時計になんと65万ドル(約5100万円)の値がついた。

タグ・ホイヤーの歴史について:タグ・ホイヤーの歴史とモータースポーツとの関わり

ロレックス サブマリーナ。スティーブ・マックイーンの一番の愛用品?

「キング・オブ・クール」と呼ばれたスティーブ・マックイーンは熱狂的なレーシングドライバーだったが、好んで着用する時計はダイバーズウォッチだったようだ。セブリング12時間レースに参加したときも、『栄光のル・マン』の撮影中も、ロレックス サブマリーナ Ref.5512を着けている姿が写真に残っている。遺作となった『ハンター』(1980年)でも彼はダイバーズウォッチを着けていた。

Dürfte die erste Wahl des Schauspielers gewesen sein: Die Rolex Submariner mit der Referenz 5512.
おそらくマックイーンのファーストチョイスであっただろう、ロレックス サブマリーナRef.5512。

彼は生前ロレックス サブマリーナRef.5512とRef.5513を所有し、着用していた。Ref.5513の方は1970年代にスタントマンのローレン・ジェーンズに贈り、Ref.5512も1980年には親しい友人のジミー・ブラカーの所有となっている。

ちなみに、1980年に亡くなったマックイーンが、ロレックス エクスプローラー II Ref. 1655を着用していたとされる話は、おそらく単なる都市伝説だろう。彼がこの時計を着用している姿は目撃されておらず、噂によると、イタリアの卸売業者が宣伝目的で口にしたことらしい。

スティーブ・マックイーンとシュヴァルツヴァルト地方発のドイツ時計:ハンハルト 417 ES

スティーブ・マックイーンはロレックスだけでなく、ドイツ南部のシュヴァルツヴァルト地方に本拠地を持つ時計ブランドもコレクションしていた。ドイツ連邦軍初のパイロットクロノグラフであるハンハルト417 ESを所有していたのだ。500本のみの製造で当時としては希少だったこのドイツ時計が、どういう経緯でマックイーンの目に止まったのかは、今でも明らかになっていない。

Die Originalversion der Hanhart 417 ES gehörte zu den liebsten Uhren des amerikanischen Schauspielers Steve McQueen.
ハンハルト417ESのオリジナルバージョン、スティーブ・マックイーンが愛用した時計のひとつだ。

この時計もスティーブ・マックイーンのお気に入りのひとつだったに違いない。戦争映画『戦う翼』(1962年)で着用していただけでなく、プライベートな場面、インタビュー、フォトセッション、バイクレースやカーレースなどでも着けている姿が目撃されている。

1960年代以降忘れ去られてしまっていたが、ハンハルトは2021年にこのモデルを復刻することにした。もしその気になれば、マックイーンが愛用した時計のひとつを、自分のものにすることができる。価格はおよそ48万円で、マックイーンファンのみならず、これから時計趣味を始めようという方にも理想的なモデルだ。


記者紹介

Donato Emilio Andrioli

チューダー ブラックベイ41という機械式時計を始めて買って以来、機械式時計の虜になってしましました。特に、古くて感動的な歴史を持つアイコン時計が大好きです。

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