2015年01月02日
 9 分

伝説的時計ブランド: オーデマ・ピゲ

Chrono24
Audemars Piguet Royal Oak ‘Jumbo’ wristshot

Audemars Piguet Royal Oak ‘Jumbo’, 写真: Bexsonn

オーデマ・ピゲは世界で最も名高い時計マニュファクチュールの1つである。1875年以来、このブランドのもとで最高の時計が製造されてきた。オーデマ・ピゲの特別な点は、創業以来創業家一族によって経営されていることだ。このブランドの品質と伝統が現在でも高く評価されていることも驚くべきことではない。また、信じられないことに、現在においてもオーデマ・ピゲの時計はすべて手作業で製造されている。それと同時に、この同族会社は時計製造技術に革新をもたらし、伝統と現代性が相反するものでないことも何度も証明してきた。オーデマ・ピゲの最も有名なモデルはロイヤルオークで、このスポーティーなラグジュアリーウォッチは1972年に市場へと送り出された。

オーデマとピゲ: ル・ブラッシュの2つの時計師一家

Audemars Piguet Perpetual Calendar Pocket Watch, Image: Auctionata
Audemars Piguet Perpetual Calendar Pocket Watch, 写真: Auctionata

時計マニュファクチュールであるオーデマ・ピゲの歴史は、1875年に始まる。ジュー渓谷のル・ブラッシュで生まれた二人の若い時計師であるジュール=ルイ・オーデマとエドワール=オーギュスト・ピゲは、この小さな町に時計工房を設立した。当時、この会社はまだ「Audemars, Piguet et Cie」という名で、「オーデマ・ピゲ」というブランドの登録は、それから7年後の1881年になってからであった。この時計工房は19世紀後半に初めて設立されたが、オーデマとピゲの一家は18世紀前半からすでに時計製造に携わっていた。

ル・ブラッシュの農夫は短いがすばらしい夏と、長く厳しい冬を過ごしていた。寒い冬の季節を有効に活用するため、村人の何人かは時計製造の技術を身につけることに決めた。そして、このような冬に行われていた時計製造から、大切な一家の伝統として職人技術が受け継がれていった。オーデマとピゲの一家も、長い冬を時計製造に捧げるために利用していた。そのような何十年にもわたる経験から時計工房「オーデマ・ピゲ」が誕生するのは、時間の問題であった。

時計マニュファクチュールの絶え間なき成功

Audemars Piguet Watch Movement
Audemars Piguet Movement, 写真: Auctionata

時計マニュファクチュールであるオーデマ・ピゲは、すぐにスイス南西の最も重要な雇用主へと成長した。1889年、この若い会社はジュネーヴに支社を設立した。1894年から1899年にかけて、オーデマ・ピゲは1000本以上のハンドメイドウォッチを製造し、その中には非常に複雑な計測機器も含まれていた。それから数年間、この会社は成長し続ける成功を謳歌した。ジュール=ルイ・オーデマは1918年に亡くなり、彼のパートナーであるピゲも翌年に他界した。しかし、彼らが残した会社は次の世代によって受け継がれていた。

間もなく、オーデマ・ピゲはティファニー、カルティエ、ブルガリなどの有名な顧客を獲得する。大手宝石商はスイス時計マニュファクチュールのマスターピースに市場可能性があることを見抜き、オーデマ・ピゲの時計を自社ブランドの名前で販売した。これは、オーデマ・ピゲにとって実入りのいい収入源であった。これらの時計は現在シリアルナンバーによってのみオリジナルのオーデマ・ピゲとして同定可能だ。1925年、同ブランドから世界最薄の懐中時計が発表され、1928年には初のスケルトン時計が市場に送り出された。1920年代後半、世界的経済危機によってオーデマ・ピゲの成功は減速したが、第二次世界大戦中に極薄のクロノグラフモデルを開発したことで市場に復帰した。40年代と50年代にかけて、同会社は増加し続ける販売数によって持ち直し、1972年に現在オーデマ・ピゲの最も有名な時計であるロイヤルオークを市場に送り出した。

スポーティーなラグジュアリーウォッチロイヤルオークとロイヤル オークオフショア

Audemars Piguet Royal Oak Offshore Chronograph
Audemars Piguet Royal Oak Offshore Chronograph, 写真: FratelloWatches

イギリス海軍の有名な戦艦の名を由来とするロイヤルオークは、ジェラルド・ジェンタによってデザインされた。ロイヤルオークは高級腕時計における初のスポーツウォッチであり、すぐにオーデマ・ピゲの最人気モデルへと成長した。そして、その後間もなくして、このシリーズのさらにスポーティーで大きなモデルであるロイヤル オークオフショアが発表され、非常に大きな成功を収めた。この成功の要因には、とりわけオーデマ・ピゲが初めからロイヤルオークモデルの限定特別エディションを製造してきたことが挙げられる。映画『エンド・オブ・デイズ』や『ターミネーター3』の中で、アーノルド・シュワルツェネッガーはロイヤル オークオフショアの特別に設計されたモデルを着用していた。

異なるモデルのバリエーションはデザインによってだけではなく、その追加機能によっても区別される。このシリーズの最も驚くべきバリエーションの1つはロイヤル オーク グランド コンプリカシオンだ。この時計はダブルクロノグラフ、ミニッツリピーター、ならびにムーンフェイズ表示を備えた永久カレンダーを搭載している。ロイヤル オーク グランド コンプリカシオンのムーブメントの製造は非常に手間がかかり、600個以上の部品によって構成されている。

ジュール オーデマ、トラディション、クラシックオーデマ・ピゲのクラシックコレクション

Audemars Piguet Jules Audemars Chronograph Automatik, Image: Auctionata
Audemars Piguet Jules Audemars Chronograph Automatik, 写真: Auctionata

オーデマ・ピゲにおいてスポーティーさとエレガンスは互いに相反するものではなく、むしろ互いが1つに融合するように試みられる。そのようにして、スポーティーなモデルの他に、ジュール オーデマコレクションなどのクラシック時計も誕生した。丸いケースと控えめな文字盤によって、現在この時計はクラシック エレガンスの代名詞となっている。オーデマ・ピゲが2008年に発表したトラディション コレクションは、1923年の懐中時計にインスピレーションを受けている。この名が示すとおり、タイムレスでエレガントな時計のファンにとって、この美しいモデルは夢のような一本だ。このコレクションには、トラディション エクストラシンやトラディション ミニッツリピーター トゥールビヨン クロノグラフなどの時計が含まれている。トラディションのモデルは、すべて角の丸いケースを持っている。クラシック コレクションは、その名の通り、オーデマ・ピゲがクラシックなラグジュアリーウォッチの製造を知り尽くしているという、もう1つの証明である。

情熱的なビジョンとしての伝統と技

オーデマ・ピゲは完全に伝統的な意味での同族会社だ。このマニュファクチュールは創業以来ずっと創業家一族によって経営されている。この種の会社として、オーデマ・ピゲは世界で最も古い時計マニュファクチュールの1つである。独立同族会社としてのステータスは、オーデマ・ピゲの成功と深い関係にある。自身のビジョンを情熱的に追い続け、革新的なラグジュアリーウォッチを最高水準で作り出す。同ブランドの時計はすべて、オーデマとピゲの一家に世代を超えて受け継がれてきた知識、独創性、好奇心、そして発明精神が1つになったものだ。すべての時計は精巧な手作業によって作り出される芸術作品である。それは現在においても変わっていない。オーデマ・ピゲに投資するということは、永遠という時間に投資することと同義なのだ。

Audemars Piguet Grand Complication movement
Audemars Piguet Grand Complication movement, 写真: FratelloWatches

進化し続ける伝統

オーデマ・ピゲが伝統を踏襲しながらも過去の成果にとらわれず、創造力によって進化し続けていることを、このマニュファクチュールは何度も証明してきた。40年以上前の1972年、ロイヤルオークは時計界に衝撃を与えた。貴金属をまったく使用せず、自信を持った価格設定であるにも関わらず、この時計は現在までラグジュアリー スポーツウォッチのカテゴリーを定義している。そして、1993年に男性的でパワフルな印象のロイヤル オークオフショアを発表することで、時計界に再度衝撃が走った。当時ではまだ考えられなかった42mmというケース径によって、従来のサイズの概念と、ロイヤルオークの生みの親であるジェラルド・ジェンタを含む、多くの批評家の審美眼を挑発したのだ。しかし、オークオフショアも成功を収め、現在はオーデマ・ピゲの主要なコレクションの一部を形成している。

挑発という伝統

Audemars Piguet CODE 11.59
Audemars Piguet CODE 11.59

オーデマ・ピゲは時計業界の観客を驚かすために、再度SIHH 2019に現れた。CODE 11.59 コレクションによって1つの時計ではなく、新しいモデルのシリーズ全体が発表されたのだ。このシリーズでは、ロイヤルオークの八角形のリューズを連想させるミドルケースを組み合わせた複雑なケースと、新型の自社キャリバー(長らく熱望されていた自社クロノグラフキャリバーを含む) が提供されている。しかし、「新しいコレクションは特に文字盤が退屈で内容が乏しい」や「期待が大きすぎて結局残念な製品が発表された」などの声もあり、これらの主な批判は、業界紙やソーシャルメディアでSIHHに暗い影を投げかけた。

この点に関して、私たちは性急な判断を控えたいと思う。なぜなら、1972年と1993年の批評も、各モデルの現在まで続く成功を予見できていなかったことを証明しているからだ。むしろ、常識的な道から外れ、新しい一歩を踏み出す勇気を認めるべきだろう。CODE 11.59が象徴的な時計となる素質を持っているのか、それともロイヤルオークなどのような名声を得ることができないかどうかはわからない。しかし、オーデマ・ピゲがまた私たちを驚かせ、革新をもたらし、時計界を挑発し続けることは間違いないだろう。


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