機械式時計は、何よりもまず、とても楽しいものである。その楽しさは時計を探すこと、購入すること、そして時計を着用することの中に存在する。私たちが機械式時計に対して持つ感情的な繋がりによって、それぞれ個人的な時計にまつわるストーリーが生まれる。しかし、腕時計が潜在的な投資対象として人気を持つようになってきたことも否定できない。しかしうまく投資を行うには、ブランド、モデル、それぞれのモデルの具体的なエディションやバージョンについての深い知識が必要だ。そのうえ、投資に対して即座に利益を得ることなど絶対にあり得ないのだから、辛抱強ければならない。最後に、このリストにある時計から得られるかもしれない利益は、ささやかなものである。これらの時計はもともとそれほど高価ではないので、それに対して人が払おうとする金額は、今後短期間において人生を変えるような額になることはない。もちろん、より多大な利益へとつながるようなブランドやモデルがあることは確かだ。これはほとんどの場合、特別版または限定版である。というわけで、予算額が25万円前後という人のための、現在人気が出ている評価の高い小規模ブランド3つを見ていこう。
1. anOrdain
本格的なコレクターたちの間で高い人気を誇る時計メーカーといえば、スコットランド発のブランド、anOrdainである。グラスゴーに拠点を置くこの時計メーカーは、エナメル文字盤を持つ時計に特化している。エナメル文字盤を作るには多くの職人的技術が必要とされるが、anOrdainのエナメル技師たちの技術は抜きん出ている。彼らのエナメル文字盤は業界内でも非常にカラフルかつ華やかなものである。1年に400〜500本のみ生産されており、これらは市場に出回る中でも有数の、特別で驚異的なタイムピースなのだ。
anOrdainではモデル 1とモデル 2の2つの異なる時計ラインを製造している。モデル 1は上品でクラシックなルックスの時計で、3種類のサイズで提供されている。スモールは35mm、ミディアムは38mm、ラージは41mm。ケースの形状は明快で、文字盤に注意が向きやすくなっている。選べるオプションを見てみれば、これらの時計の美しさに驚くに違いない。モデル 1の価格は、スモールサイズで約26万円以下から。モデル 2はつい最近、アップデートされモデル 2 MKIIとして再発表された。このモデルは同ブランドによるフィールドウォッチであり、ミディアム(36mm)とラージ(39.5mm)の2サイズがそろっている。どちらもケースと文字盤デザインがアップデートされているが、間違いなくその見事な文字盤はそのままである。ブランドはホワイト、グレー、マスタード、そしてレーシンググリーンの4色の文字盤を提供している。モデル 2には26万円を超える価格がついているが、ためらってはいけない。もちろん、エナメル加工を施したシルバーの文字盤の製造は非常に難しいため、anOrdainではモデル 2を年間200本しか生産していない。この素晴らしいタイムピースを手に入れるには、入荷待ちリストに名前を連ねて、辛抱強く待たなくてはならないだろう。
2. ウニマティック
ウニマティックは、イタリアはミラノ発の若いブランドである。このブランドは、2人のイタリア人インダストリアルデザイナー、ジョヴァンニ・モーロとシモーネ・ヌンツィアートによって立ち上げられた。2人は、よけいな装飾を一切加えないミニマリスト的なデザイン哲学を作り、その結果、お馴染みの時計タイプの極めて興味深い解釈を生み出すこととなった。最初の1本はモデッロ ウノ、彼らなりのクラシックなダイバーズウォッチである。モデッロ ドゥエは過去のミリタリーウォッチからアイデアを得たフィールドウォッチ。そしてモデッロ トレはモデッロ ウノのクオーツ式クロノグラフバージョンであり、モデッロ クアトロは同ブランドによるモダンなミリタリーウォッチだ。
つい最近まで、ウニマティックの時計は本数を限定して製造される限定版であり、その本数の生産が終わるとそのまま生産終了となった。ところがブランドが多大な人気を集めたため、4つのベースモデルを常設モデルとして常にカタログに残すことにしたのである。しかし、やはり最も注目を集めるのは、この4つのベースモデルの特別バージョンか、ユニークなコラボモデルなどの特別エディションだ。特に、コラボモデルはしばしば高い需要を誇り、短期間で完売している。最も人気の例をいくつかあげると、Hodinkeeとのコラボ作、スポンジ・ボブの限定版、NASAモデル、そしてマッセナLABとのコラボモデルがある。最高なのは、全ての時計が26万円以下と、大金を必要としないことだ。この投資の見返りに得られるものは、時計ファンたちにも、よりファッションに敏感な人々にもクールだと思われる時計なのだ。
3. バルチック ウォッチ
バルチック ウォッチは、アンティークからインスピレーションを得たタイムピースで大人気を博した、フランスの若いブランドである。しかしバルチックはただ見慣れたスタイルをコピーするのではない。彼らは生み出すタイムピースに、自社なりのひねりを心から加えているのだ。そのデザインからは、創設者のエティエンヌ・マレク、ポール・ビアンストマン、クレメント・ダニエルがクラシックなアナログタイムピースを愛していることがはっきりとわかる。彼らの最も有名なコレクションは、間違いなくアクアスカフラインだ。それはこのブランドによる、非常に素晴らしいルックスのクラシックなダイバーズウォッチである。嬉しいことに、アクアスカフモデルは現在、入手可能だ。もちろん、それはおそらくこの時計の価値は上がらないだろうということをも意味してもいる。最近完売となってしまったアクアスカフ デュアルクラウン 5周年記念モデルならば、実際に価値が上がっているのだが。
もうひとつ、近頃話題になった人気のモデルといえばMR01。このクラシックな外見の時計は、直径36mm、厚さわずか9.9mmの控えめなケースをもって、ソーシャルメディアの話題をさらった。エレガントなデザインと、シースルーの裏蓋から鑑賞できるマイクロローターを備えた見事なムーブメントのおかげで、この時計は即完売となった。おそらくは将来、異なるバリエーションやリイシューなどが出てくるだろうが、それはこのブランドの人気がどれだけ高いのかを示すことになるはずだ。同ブランドのバイコンパックス 002の再販は、それをさらに証明している。そのブルーダイヤルのモデルはあっという間に売り切れてしまったのである。決して13万円を上回らない価格がついたスタイリッシュなタイムピースの魅力のために、このブランドは有名なOnly Watchのチャリティーオークション用に、世界に1本だけのタイムピースを作るように依頼されたのだ。ブランドは、1940年代のヴィーナス 150モノプッシャームーブメントが搭載されたユニークなモノプッシャー パルソメーター クロノグラフを作り上げた。この時計は驚きの5万ユーロ(およそ690万円)で落札され、このブランドの人気のさらなる証明となった。
25万円前後の時計には投資対象としての価値があるのか?
というわけで、破産することなく良い時計が購入できて、かつ良い投資ともなり得る、今ホットな3つのブランドをご紹介した。もしここにあげた3つのブランドからどれか時計を購入するなら、当面の間愛用できる、素晴らしい時計を手に入れることになる。この3ブランドからそれぞれ正しい時計を買うことができれば、もしかしたら長期的にみて、いくらか利益をあげることもできるかもしれない。しかしすでに述べたように、時計に投資をするというのは、すぐに利益が出るというものではない。時計を買うなら、それが好きだから買うべきなのである。もし結果としてその時計の価値が上がったら、売ることを検討すればいいのだ。それでは、素敵な時計に出会えることを願っている。