ゲストライター、コンスタンチン・スターツェフ著
時計を購入するのは簡単だ。長年の時計ファンで、市場状況に通じており、今時のトレンドを理解し、評判の高い販売者を知っているならば。しかし、今回初めて高級時計を購入するという場合はどうだろう?
全く腕時計をしないという人もいるし、スマートウォッチの機能が好きだという人もいる。しかし筆者は、多くの人が人生のどこかの時点で、機械式時計を購入してみようかと漠然と考えるものだと確信している。買いたいと思うきっかけには、以下のような動機が考えられる。
- 「私の人生は上々だ」と宣言するステータスシンボルとして
- 連帯感の表れとして(ほとんどの場合、銀行家、弁護士、医師などの間で見られる)
- 貯蓄あるいは投資のため(腕時計投資については多くの記事が書かれている)
- 時計作りの技術に対する深い敬意として(理想の時計を追い求める人もいる)
- 友人やパートナーと繋がるツールとして(後者の方がより多い)
高級時計の世界に初めて足を踏み入れるという人は、大抵はこのような動機に駆り立てられている。そういった人は、できる限りたくさんの条件に合う時計を求め、購入後に後悔はしたくないと思っている。そこでこの記事では、多くの人が実際に初めての時計購入時に役立ったという5つのポイントをご紹介したい。
1. 自分の気に入った時計であること
まず一番最初にしたいのは、さまざまな時計売買プラットフォームやウェブサイトなどであれこれ見てみること。自分の理想の時計の全体的なデザイン、つまりケースのサイズや形、ケース素材、ローマ数字かアラビア数字か、時刻表示、機能、ストラップかブレスレットか、などを決める必要がある。一般的に言えば、筆者なら初めての高級時計には、ラウンド型で2針もしくは3針のステンレススチール製時計にメタルブレスレット付きのものをお勧めする。なぜか?それはラウンド型は最も人気のフォルムだし、ステンレススチール製のケースとメタルブレスレットは実用的かつ長持ちする。そして初めての時計には、本当に基本的な機能だけ、つまり時間、分、秒、もしかしたら日付表示があればいいものなのだ。
次に、実店舗に行き、好きなモデルを試着してみること。時計を使いやすさやデザインの観点から見極めること、そして実際に手にしてみた感覚は非常に重要だと思うが、第一印象には、Chrono24のバーチャルショールームのようなデジタルツールが十分に使える。自分の “理想の時計” が手首にしっくりこないこともあるだろう。もしそうなら、別の時計を試してみるべきだ。ぴったりの時計は必ず存在する。見つけ出せるかどうかの問題なのだ。ルックスと着け心地は非常に重要なファクターである。毎日着ける時計は、手首を見るたびに気分を上げてくれるものであってほしい。では、理想の時計を見つけたとしたら、次はどんなポイントに気を付けるといいのだろう。
2. 価格は重要問題
ここでは敢えて、お金の問題を2番目に持ってきた。高級時計の購入を検討している人なら、十分なお金を準備していると思うが、それでも予算は重要だ。初めての時計には分別ある金額を費やすべきだ。予算をはるかに超える時計を買うために、人からお金を借りたりなどするべきではない。もしそんな時計を買った翌日に、うっかり床に落としでもしたら、到底支払えないような高額の修理代が発生するだろう。大金を払って時計を購入したのに着用できないのなら、ばかみたいな気分になるはずだ。そんなことにならないためにも、初めての高級時計は、 “ボーナスなどの臨時収入” で買うことをお勧めしたい。
そして、周りの人と比べたり、広告に影響されすぎたりするのは避けるようにすること。初めての時計購入は、自分自身を表現する機会であり、自分の好みや価値観を示すものである。
3. 自分と価値観の合うブランドを選ぶこと
高級時計のブランドのほぼすべてが、スポーツの大会やさまざまなイベント、環境保護活動でスポンサーになっている。ブランドはこうして、多くの人の目に触れることで将来の顧客へアプローチをしている。自分の興味や関心のあるイベントや場所で見かけるブランドは自分の価値観に合うブランドということになる。ヨットレースに興味があるなら、パネライかユリス・ナルダンか、というチョイスは当然のものだろう。空高く飛ぶのが夢なら、ロンジンやブライトリングを見てみるといい。レース狂には、ウブロ、タグ・ホイヤー、ロレックスが合うかもしれない。宇宙に魅了されている、またはジェームズ・ボンドのファンならオメガがあなたにぴったりの時計ブランドだ。腕時計はそこらじゅうにある。しっかりと探せば、きっと自分の好きなものや価値観に合うものを持つブランドが見つかるはずだ。
多くのブランドはまた、環境保護活動を支援している。例えばオリスは、再生プラスチックを使用した時計を製造したり、ロシアのバイカル湖を水質汚染から守る活動を支援したり、持続可能な活動に尽力している。ブライトリングは最近、再生プラスチックでできた環境に優しい時計のボックスを使用し始めた。パネライは98.6%が再生素材でてきたサブマーシブル eLAB-ID™を発表した。
4. どこで購入するか
もし自分の初めての時計購入を祝いたいなら、雰囲気を味わえるブランドのブティックなどの正規販売店で購入するのが良いかもしれない。それに、今後もまた時計を買う予定なら、最初から販売店と良好な関係を築いておくのは良い考えだろう。もしそれができれば、おそらく将来、イベントへの招待やプレゼント、特別オファーなどを受けられるだろう。
しかし販売店との友好関係を築こうという考えがないなら、中古品ショップからオンラインプラットフォームまで、どこででも時計を購入できる。結局、自宅のリビングルームでくつろぎながら、高価な時計を購入するというのは、同じように贅沢なものでもある。これらのオプションのどれもが大体同じようなサービスや保証を提供してくれるが、筆者の意見では、規模が大きく、信頼できるところを選ぶ方が良い。初めての時計が中古品になってしまうこともあるかもしれないが、それはごく普通のことである。それは初めての車として中古車を買うようなものである。実際に運転してみたり、駐車の練習をしたり、何度か違反料を払ったりというような経験を積んでから、将来、理想の車を購入するのだ。
5. 修理やメンテナンスをどこで受けるか
自動車と同じように、腕時計は定期的なメンテナンスが必要である。時計をどれくらいの頻度で使用するかによって、3〜4年ごとにメンテナンスを受ける必要があるだろう。ブランドのブティックで時計を購入したのであれば、おそらくそこでメンテナンスが受けられるはずだ。もうひとつのオプションはブランドの認定を受けた工房で、費用をやや抑えることができる。3つめのオプションは腕のいい時計師を見つけること。後者は、時計をこの先も売るつもりがない場合にお勧めだ。その場合、メンテナンスの証明書などは必要とならないし、時計の正確さと外見だけに注意していればいいのである。しかも、いくらかお金も節約できるはずだ。加えてそこで、熟練の時計師や業界についてより深く知るチャンスを得られる。というのも、筆者が知っている時計師は誰もがみな、たくさんの興味深い話を教えてくれるからだ。
最後は、アドバイスというよりも気を付けてほしいことになる。時計はつい夢中になってしまいやすい、ということを覚えておいてほしい。初めて日常使いの時計を購入すると、おそらく次にスポーツウォッチやドレスウォッチも探し始めるだろう。すると、お気に入りのブランドやモデルが見つかり始め、自分のコレクションにどんどん加えていきたくなる。最終的に、自分のコレクションに絶対不可欠のように思え、どうしても手に入れたい理想の時計がどこからともなく現れる。ここまで来ると、自分が正真正銘の時計コレクターになったことに気づくだろう。その際は、新たにコレクターの世界へ足を踏み入れた時計ファンに、筆者から「おめでとう!」と祝福の言葉を贈りたい。