スポーティーでスタイリッシュ、腕時計の中で特に人気のカテゴリーの一つであるダイバーズウォッチ。なにもロレックスやオメガ、ブライトリングである必要はないのだ。知る人ぞ知る隠れた実力派で、時計ファンなら誰もが魅せられるだろう手頃な価格のダイバーズウォッチを5つご紹介したい。
優れたダイバーズウォッチとは?
本題に入る前に、まずは簡単に確認しておきたい。優れたダイバーズウォッチとは何だろうか?個人的には、ダイバーズウォッチであっても美しいデザインは欠かせない要素だと思っている。正直なところ、いまどきダイバーズウォッチを本当にダイビングのためだけに必要としている人などいないのだ。とはいえ、最低でも200mの防水性能はあって然るべきだろう。必要だからというより、可能だからである。手頃な価格帯のダイバーズウォッチには、ロレックスやオメガのような最新のクラスプクイック調整機構は諦めるとしても、基本的な調整機能は備えていてほしいものだ。
[Bild: Rolex Submariner schwarz]
[Caption:] この記事ではロレックスやオメガといったブランドにも引けを取らない、手頃な価格のダイバーズウォッチを5本ご紹介しよう。
1. スクワーレ 1521

ダイバーズウォッチの名作といえば、時計愛好家ならすぐにロレックス サブマリーナーやオメガ シーマスター 300Mなどのレジェンドモデルを思い浮かべるだろう。スクワーレ 1521はそこまでの地位は得ていないかもしれないが、ダイバーズウォッチファンにはすでに高く評価されているまぎれもない名作だ。独立系メーカーであるスクワーレ社の歴史は実に興味深い。公式には1959年創業だが、創業者のシャルル・フォン・ビューレンは1940年代末には自身の名前で時計を製作していた。1960年代〜1970年代にはスクワーレはドクサ、ジン、タグ・ホイヤー、さらにはブランパンといった有名ブランドにケースを供給していた。スクワーレ 1521は同ブランドの中でも最も人気のあるモデルといえるだろう。文字盤カラーのバリエーションも豊富で、ステンレス製とPVDコーティングモデルの両方がラインアップされている。ケース径は42mmで、ラグが短いためコンパクトで着け心地も快適だ。4時位置のリューズを備えた伝説的な「フォン・ビューレンケース」を採用し、ムーブメントにはセリタ製の自動巻きを搭載。防水性能は最大500mだ。このスイス南部(イタリア語圏)生まれのダイバーズウォッチが20万円未満で購入できるのは本当に魅力的だ。
2. イエマ スーパーマン・スリム

次に、あまり知られていないダイバーズウォッチをご紹介するにあたり、少しだけフランスへ目を向けてみたい。フランスには長い伝統と歴史を持ちながらも、スクワーレ同様にあまり知られていない独立系ブランドがある。それがイエマだ。創業は1948年。1967年にイエマが発表したスーパーマンは、まさにダイバーズウォッチのレジェンドと呼べるモデルで、独自のデザインと技術が今も人々を惹きつけている。現在ではイエマも自社製ムーブメントを搭載したモデルを展開しており、これからご紹介するイエマ スーパーマン・スリムもその一つである。このモデルに搭載されている自社製自動巻きムーブメントには、これまでに見たことのないようなマイクロローターが装備されている。ケースとブレスレットのデザインも非常に個性的で、あらゆる点で見事な仕上がりとなっている。比較的新しい現行モデルのスーパーマン・スリムは現在およそ35万円から購入可能だが、出品数はかなり限られている。一方、標準仕様のスーパーマンであれば、さまざまなバリエーションが豊富に出回っており、20万円未満で手に入るモデルもある。自社製ムーブメントは搭載されていないが、それでも一見の価値はある。
3. セリカ 5303

次にご紹介するダイバーズウォッチもフランス発でパリに拠点を置く独立系ブランドのものだ。筆者はこの時計に数ヶ月前に出会い、じかに手にしてその魅力を確かめた。セリカ 5303だ。デザインは他ではまず見られないもので、ブランドロゴを排し、独自のレイアウトを採用したミニマルな文字盤はひと目で強い印象を与える。また、それ以上に印象的なのは、この39mm径ダイバーズウォッチの優れた仕上げとクオリティだ。セラミック製ダイビングベゼルの感触は、ロレックスやチューダーなどの名だたるブランドにも匹敵する。技術面でも有名ブランドに決して引けを取らない。搭載されているソプロード社製ムーブメントはCOSC認定を受けており、耐磁性があり、高い精度を誇る。現在はブラックとホワイトの2種類のカラーが用意されているが、見た目が最も魅力的なのは、いわゆるクリスタルブルーのバージョンだ。時計の世界でこのような色合いは見たことがない。黒文字盤は太陽光の下では非常に濃いネイビーブルーになり、クリスタルブルーのベゼルと絶妙にマッチする。このベゼルはくすんだマッドグリーンのように見えることが多い。唯一無二のデザイン、高い品質、優れた技術。すべてが揃ったパッケージは、この価格帯では他にない優れものだ。価格が公式価格でも市場価格でも25万円以下だとは、にわかには信じがたい。今回紹介した中でもセリカ 5303は個人的に一番気に入っているモデルであり、現時点ではまだ「知る人ぞ知る」存在ではあるが、将来的には大きな成功を収める潜在力を秘めている。近々セリカについての詳細なブランド紹介記事も発表予定なので、ぜひ楽しみにしていてほしい。
4. チューダー ペラゴス

もちろん、チューダー ペラゴスが本当の意味で「知る人ぞ知る」時計ではないことは承知している。この記事で紹介する中では最も有名なダイバーズウォッチであり、時計ファンなら誰もが知っているだろう。しかしながら、ブラックベイの人気の影に隠れてしまっているため、今回のリストに載せるには十分ふさわしい。チタン製42mm径ケースを持ち、地味な存在ながらも機能性を追求した、非常に優れたダイバーズウォッチである。ブラックベイとは異なり、逆回転防止ベゼルはセラミック製だが、チューダーならではのヴィンテージ感のある外観や優れた操作感・使い勝手は健在だ。さらに、ベゼル全体には夜光塗料が塗られている。防水性能は500m。搭載されているのは自社製自動巻ムーブメントである。特筆すべきは特許を取得したクラスプだ。2通りの方法で長さを調整できるだけでなく、気温の変化に応じて自動で手首にフィットする機能も備えている。さらにうれしいのは、ラバーストラップがフルセットに含まれている点である。こうした付属品は残念ながら今ではなかなかお目にかからない。ブラック、ブルー、さらには左利き用バージョンなどがある。チューダー ペラゴスは50万円台から購入できる。手頃でもっと注目されるべきダイバーズ ウォッチである。
5. ジン U1

つい最近、ドイツ・フランクフルトの時計メーカーであるジンは、限定モデルのU15、U16、U18を発表し、一線級のパイロットウォッチだけでなく、完成度の高いダイバーズウォッチも製造できることを証明した。しかし今回は別のモデルをご紹介したい。 ジン U1だ。この重厚なダイバーズウォッチは極めて強度の高いドイツ製Uボート・スチールで作られている。オプションのテギメントケースを選べば耐傷性はさらに高くなる。機能性に徹底的にこだわって設計されており、直径44mmと見た目はかなり迫力がある。文字盤、インデックス、時針、分針、秒針は水中でも極めて視認性が高い。ダイビングベゼルは手袋を着けたままでも操作しやすく、4時位置のリューズは手の甲に当たりにくい。そして防水性能は驚異的な1000mだ。この妥協のないダイバーズウォッチにもジン 556と同様に、セリタ製SW200-1ムーブメントが搭載されている。U1が大きすぎると感じる方には、U50の方が良いかもしれない。41mm径のダイバーズウォッチなので日常使いにはこちらの方が適している。現在、未使用のジン U1は30万円前後から購入可能である。