私たちは先日、時計産業がスイスだけのものではないことを思い出すために、スイス製でない時計についての記事を発表した。大抵の見出しを飾るのはスイス時計であるが、世界中には数多くの世界に通用する時計がある。今回、私たちは有名なヨーロッパブランドではなく、もう一つの素晴らしい時計製造国である日本に焦点を当てる。それでは、前置きはこれくらいにして、日本製の高級時計の世界に飛び込んでみよう。
グランドセイコー エレガンス SBGE227G
過去に何度も述べてきたことだが、セイコー時計の品質は幅広い人気に関わらず過小評価され過ぎている。私の言うことが信じられないのならば、自分の目でセイコー時計を確かめてみてほしい。グランドセイコーは1960年から作られてきたが、独立したブランドとなったのは2017年からである。グランドセイコーの時計は精度、美しさ、耐久性を兼ね備え、現在のカタログには幅広い高級クォーツ式、機械式、スプリングドライブ式の時計が含まれている。

この特別なグランドセイコー エレガンスには、スプリングドライブ キャリバーが搭載されている。これは機械式機構の美しさとクォーツ機構の精度を組み合わせたムーブメントで、おそらくグランドセイコーのカタログで最も幅広く使用されているキャリバータイプである。機械式キャリバーのようにぜんまいを動力源としながら、電子制御システムが伝統的なテンプと脱進機に置き換えられ、エネルギー伝達の速度を調整するために使用されている。これは、スプリングドライブ キャリバーの秒針が1秒間に複数のステップを刻みながら進むのではなく、滑らかに動くことを意味している。
この時計のムーブメントは3日間のパワーリザーブを備え、7時位置にあるパワーリザーブ表示によって残りのエネルギーを確認することができる。また、旅行に非常に便利なGMT機能も搭載されている。これは、追加のセンター針と文字盤の外側にレイアウトされた24時間目盛りによって第2タイムゾーンの時間を表示してくれる。3時位置にある日付表示がこの時計の機能を完璧に仕立て、時計を裏返せばサファイアクリスタルの裏蓋を通して自動巻き9R66スプリングドライブ キャリバーを眺めることもできる。
ステンレスケースの直径は40mmを少し上回り、折りたたみ式クラスプ付きのクロコダイルレザーストラップが取り付けられている。レザーストラップと折りたたみ式クラスプの組み合わせは比較的珍しいが、簡単に装着できるので私は気に入っている。ダークブラウンの文字盤には美しいサンバースト仕上げが施されており、アプライド アワーマーカーは完璧にポリッシュ仕上げされている。
グランドセイコー エレガンス SBGE227のメーカー希望小売価格は62万円で、いくつかのメタルブレスモデルを含む他の似た時計も提供されている。
ミナセ ディヴァイド
自社を日本で最も小さい時計ブランドであると主張するミナセは、1963年に創立された切削工具メーカーである協和精工株式会社から派生した。東京から500kmほど北に位置するこの会社はドリル製造と金属切削を専門としており、これが精密なドリルを必要とする時計メーカーの関心を引きつけることになった。2005年、協和精工株式会社が自分たちの時計を作るために必要なものをすべて持っていると気づいた時、ミナセというブランドが立ち上げられた。

この時計は少々圧倒的に見えるかもしれない。見るべきところが色々あり、個々のディテールが目立ってくるまで少々時間を要するだろう。しかし、見れば見るほどにその魅力に気づくことになる。表側はまずケースインケース構造が目を引く。アワーマーカーは文字盤のアンカーとしての役割も果たしており、それによって光が文字盤の縁の周りを照らす。各時計のケース、ブレスレット、文字盤、インデックス、針の至る所で、サテン仕上げとポリッシュ仕上げが組み合わせられている。
側面を見てみると、ケース上下とラグが接触するところに細い切り込みを見ることができる。このユニークな構造はディヴァイドの名前の由来でもあり、それはエスペラント語で「分割」を意味している。リュウズもその多面体デザインによって存在感を放っている。最後に、ミナセはブレスレットの製作において日本の伝統工芸である組木細工にヒントを得ている。このブレスレットにはピン穴がなく、個々のパーツはブレスレットのコマの裏側からねじで固定されている。
同社はそれぞれのケース表面に「ザラツ」と呼ばれる研磨を施す。現在、この素晴らしい仕上げを施す技術はほとんど日本製の高級時計でしか見られない。この仕上げの名がザラツ研磨の加工機材を製造していたスイスメーカーの名前に由来していることも興味深い。研磨は高度な技術を持った職人の手で行われ、わずか0.7mm幅の表面に施すことも可能だ。ディヴァイドにおいては、14箇所の異なるケース表面にザラツ研磨が施されている。
この時計には改造されたスイスムーブメントが搭載されているのだが (つまりすべてが日本製ではない)、とりわけその価格帯を考慮すれば十分に注目に値すると言えるだろう。ディヴァイドの価格はラバーストラップモデルで34万円、メタルブレスモデルで46万円となっている。
セイコー プレザージュ SPB075

しかし、日本製のすべての高級時計の価格が数十万円するわけではない。セイコー プレザージュ SPB075を例にしてみよう。この限定エディションは美しい七宝ダイアルと、50時間のパワーリザーブを持つ自動巻きキャリバー6R15を搭載している。このムーブメントはグランドセイコーのムーブメントほど洗練されてはいないが、それでもいくつかの素晴らしい仕上げを備えている。
この時計の真の見どころは、ローマ数字があしらわれた七宝ダイアルである。このタイムピースは、日本メーカーが卓越した技術によって名声を得たことの、優れた一例だろう。七宝は17世紀の日本を発祥とする。磁器を使ったエナメルと異なり、七宝は800℃前後の高温で複数回焼成され、その後に研磨される釉薬を使用する。わずか1mmしかないこの文字盤は非常に繊細だ。セイコーがプレザージュの七宝ダイアルの製作を依頼したのは、名古屋で100年以上の歴史を誇る「安藤七宝店」である。
この時計の価格は15万円で、コストパフォーマンスは抜群だ。時間を確認しようとこの時計に目を向ける時、私はその美しさに魅せられてしまい、本来の目的である時間の確認をついつい忘れてしまうことがある。これは時計に対する最大の賛辞と言えるだろう。
まとめ
より多くの時計や時計ブランドを見るほど、より多くの興味深い1本に出会うことになる。そして、素晴らしい時計の購入が必ずしも高くつくとは限らないことに気づくだろう。私の個人的なコレクションは時とともに成長し続けており、時計に関する知識が増えていくことでますますその魅力に魅せられている。多くの人々と同じ様に、私も自分の予算の中で時計を購入している。以前は時計を売却することもあったが、現在のコレクションは比較的一定した数で安定している。私のコレクションが今後どのように変化していくかはわからないが、そこには常に日本製の時計が含まれていることだろう。