時計業界がひっくり返るような大騒ぎが起こってから数週間になる。今回はWatches & Wondersでの新作リリースでもジュネーブでの他のイベントの話でもない。この騒ぎはスウォッチからのチープでプラスチック製(失礼、バイオセラミック)のクオーツ式時計によって引き起こされた。この巧妙な戦略によって、何千もの人々がなんとかその時計を手に入れようと、世界各地のスウォッチの販売店に行列を作った。そう、新しいオメガ X スウォッチのコラボレーション、ムーンスウォッチのことである。Chrono24は幸運にも1本入手する機会を得たので、ここに筆者が思うところを紹介したい。
ムーンスウォッチ 伝説的なオメガ スピードマスターのDNAを受け継ぐスウォッチ時計
ムーンスウォッチの着想アイデアはいたって簡単だ。スウォッチグループにおける最大セールスを誇るブランド(オメガ)の最も人気の高いモデル(スピードマスター)を、コングロマリット内の楽しいクオーツ式モデル(スウォッチ)とかけ合わせる。ある2つのブランドがコラボレーションのもとにユニークなモデルを生み出すことは時計史上初めてのことではないが、間違いなくこれは記憶に残るものである。合計11種類のムーンスウォッチモデルがあり、うち8つは惑星に、1つは準惑星(プルート)、そして太陽、月にちなんでデザインされている。全ての時計が異なる配色で、黄色(太陽)、ピンク(金星)、水色(天王星)などの明るいサマーカラーから、素晴らしいトーンのグレー(月)、赤(火星)までそろっている。そのために全ての人にとって1つ、あるいは2つくらいは好みの時計が見つかるはずだ。また、冥王星や地球はパンダダイヤルバリエーションとなっている。
それぞれのムーンスウォッチが、アイコニックなオメガ スピードマスターのDNAと最もわかりやすいスピマスの特徴を備えている。始めに、プラスチック製(スウォッチはバイオセラミックと呼んではいるが)ではあるものの、ケースはスピードマスターと同じサイズと形である。ツイストラグ、プッシュボタン、リューズなどがムーンウォッチを彷彿とさせる。このような型破りなスピードマスターを見るのは信じられないくらいにクールで、いくらか妙な気がするものだが、私は非常に気に入っている。ケースに続いて、ベゼルもまたオリジナルに非常に忠実である。これには「ドット・オーバー 90(DON)」、アンティークスタイルの「TACHYMÈTRE」という文字も付いているのだ。ムーンウォッチのよく知られているディテールで、風防の真ん中に刻まれたごく小さなオメガのマークがある。肉眼ではあまり見えないほどのもので、ムーンスウォッチにもついているものだが、今回は小さなスウォッチの「S」である。
スウォッチ vs スピードマスター
その他のオメガ スピードマスターの特徴としては、リューズ、針、そしてベルクロストラップがある。新しいスピードマスターには2本のストラップが付いており、うち1本はベルクロで、NASAが宇宙飛行士のために使用したバンドからインスピレーションを得ている。ムーンスウォッチのベルクロストラップはこれとよく似たものだが、異なる2つに分かれた作りになっている。ムーンスウォッチを別のストラップに付け替えたければ、いつでも替えることができる。ケースは通常のムーンウォッチと同じサイズであるため、お気に入りのスピマス用ストラップをムーンスウォッチにも使用できるのだ。
スウォッチ価格のムーンスウォッチに、オメガ品質は期待するなかれ
装着してみると、ムーンスウォッチは軽くて快適だ。これは3万3550円のプラスチック製のクオーツ式時計であり、オメガによるスチール製スピードマスターではないのだ。着け心地は良く、本物の機械式時計に慣れている人にとってはムーンスウォッチはいくらか妙な感じがするかもしれないが、おそらく時間とともに慣れていくだろう。サイズも同じ、見た目も似てはいるが、本当に軽いのだ。個人的にはベルクロストラップは少々固い感じがするのであまり好きではないが、それは私がこの時計を数日間しか使っていないからかもしれない。全体として、筆者は手首での存在感とさまざまなカラーバリエーションによる万能性が非常に気に入っている。では、全種類を購入したいだろうか?それはない。しかし、私のムーンスウォッチコレクションの数はすぐに増えると思う。
これによって私が、自分のオメガ スピードマスター プロフェッショナルに見向きもしなくなるようことは絶対にない。私はあの時計を本当に気に入っている。それでもムーンスウォッチは夏や休暇など、慣れ親しんだスピマスの雰囲気は欲しいけれど、高価な時計に不要な傷をつけたくないというときのための、素晴らしく、楽しくて、安い代替品である。これはまた、若い世代の人たちが腕時計という趣味を始め、時計史やスピードマスターの重要性などについて学ぶための楽しい方法でもある。よく言うように、何事も実際にやってみなければわからない。スウォッチの販売店に行くことがあるのなら、そしてムーンスウォッチの在庫がまた再び入っているなら、まずはチェックしてみることだ。きっとあなたが気に入るものがあるに違いない。