2022年03月25日
 8 分

日本製のグランドセイコーが本格的なコレクターからさらに注目を浴びている理由とは?

Jorg Weppelink
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時計の世界では、最も正確な時計から、最も高度な技術を駆使した時計や最も美しい時計まで、時計愛好家を虜にするような時計を作るために、常に完璧を追求する努力が続けられている。スイスの時計産業は、何世紀にもわたってその完璧さを追求してきたことで知られているが、その完璧さを他の追随を許さない水準にまで高めたのは、日本の時計職人だ。この「世界一の腕時計を作りたい」という思いの代表例となるのがグランドセイコーである。グランドセイコーは1960年にセイコーが設立したブランドで、創業以来、市場で最高のタイムピースを作ることを目標としてきた。60年以上の時を経て、グランドセイコーは最高の精度、象徴的なデザイン、そして最高レベルの仕上げを兼ね備えた、まさに市場で最高のタイムピースを実現したとして評価されている。この記事では、グランドセイコーをより深く理解し、なぜコレクターの間で人気が高まっているのかを探っていきたい。そのガイドとして、よくある質問にお答えしていこう。 

グランドセイコーはセイコーと同じなのか?

セイコーとグランドセイコーはともにセイコーウオッチ株式会社の傘下でありながら、同じブランドではない。実はグランドセイコーは、長年セイコーの一部だったが、2017年に完全に独立した時計ブランドとなった。その理由は簡単で、グランドセイコーが独立することで、市場においてセイコーよりかなり上に位置する高級時計ブランドとして、次のステップに進むことができたからである。セイコーが幅広いユーザー向けの手頃な価格の時計を中心に展開しているのに対し、グランドセイコーはロレックス、オメガ、ブライトリングなどと競合する市場セグメントに位置する。これにより、世界中の時計ファンから高い評価を得ることができたのだ。 

セイコーより高級路線のブランド、グランドセイコー
セイコーより高級路線のブランド、グランドセイコー

なぜグランドセイコーは特別なブランドなのか?

グランドセイコーが特別なブランドである理由は、技術、デザイン、仕上げなど、時計製造の最高峰の技術を結集し、60年にわたってこれを続けてきたからである。すべては、このブランドの驚くべき歴史から始まっている。2020年に執筆した記事で、この歴史をもう少し深く掘り下げているので、ぜひチェックしてみてほしい。簡単に説明すると、グランドセイコーは1960年にブランド初の時計を発売しており、それが卓越性を追求する最初の例となった。 

グランドセイコーは、世界最高の腕時計を作るために、史上最高品質とも言われる新しいムーブメントを常に開発してきた。中でも、他社よりも高い周波数で動作する、より精度の高い「ハイビート」と呼ばれるムーブメントで一躍有名になった。これらの時計の文字盤上で秒針が滑るように動くのを見るのは楽しいものだ。クォーツ革命が時計業界を支配したとき、グランドセイコーも世界最高精度のクォーツ時計を製造していたが、1975年に一度ブランドは生産を終了している。  

グランドセイコーはいわゆる「ハイビート」と呼ばれるムーブメントで名声を得た
グランドセイコーはいわゆる「ハイビート」と呼ばれるムーブメントで名声を得た

さらに、グランドセイコーは、田中太郎独自のデザイン文法、「セイコースタイル」を導入した。これは、グランドセイコーの時計を際立たせるために田中が定めたデザインのルールである。それまでは、セイコーの時計はつまらないという認識があったのだ。しかし田中の新しい方針によって、グランドセイコーは60年代から70年代にかけて最も華々しい時計を製造しており、中には現在でも4つのグランドセイコーコレクションのうち3つの土台となっているデザインも含まれている。   

そして最後に、セイコーの時計職人の技と、田中のデザイン文法の素晴らしさの証明となる仕上げのレベルの高さがある。4つのルールのうち2つは、デザインと仕上げを組み合わせたものだ。その思いを実現するために、グランドセイコーは常に、別名ザラツ研磨とも呼ばれる驚異的な鏡面仕上げを施した時計を発表してきた。これは、手作業で行われるグランドセイコー独自の技術で、非常に高度な技術を必要とするものだ。 

この技術、デザイン、そして仕上げの3本柱は、現在でもグランドセイコーらしさを支える基盤となっている。グランドセイコーは1988年にセイコーのサブブランドとして再登場した後、ハイエンドのセイコーのクォーツ時計をリリースするようになった。しかし、1998年にグランドセイコー初の新型機械式ムーブメントを発表したときこそが、間違いなくその名声を取り戻し始めたときであった。2002年にはスプリングドライブ技術を導入し、より高精度なムーブメントを実現している。 

非常に高精度なムーブメントを生み出すグランドセイコーのスプリングドライブ
非常に高精度なムーブメントを生み出すグランドセイコーのスプリングドライブ

キングセイコーとグランドセイコーの違いとは?

1959年、セイコーは技術革新と競争の促進を期待して、工場を諏訪精工舎と第二精工舎に分割した。その目標は、世界一の腕時計を作るというものであった。諏訪精工舎はグランドセイコー、第二精工舎はキングセイコーの生産を開始した。両ブランドは、1960年代に最も興味深く、高精度な時計を作り出した。セイコーは世界最高の時計づくりを目指すために、世界初のクォーツ時計、あのアイコニックなアストロンを発表したのである。 

セイコー アストロンは、グランドセイコー、キングセイコーと同じように精度を追求した結果として誕生したものだ。この新しい技術は、やがて機械的な卓越性を追求することを時代遅れにしてしまった。クォーツ機構は機械式キャリバーよりも精度が高く、キングセイコーが消滅し、グランドセイコーが1975年に生産を終了した大きな理由となっている。グランドセイコーとキングセイコーのアンティーク時計は、コレクターに高く評価されている。特にキングセイコーは、非常に手頃な価格で入手できる。 

キングセイコーとグランドセイコーは別物である
キングセイコーとグランドセイコーは別物である

グランドセイコーには価格に見合った価値があるのか?

この質問に対する答えは、心から「YES!」である。コストパフォーマンスに優れたブランドがあるとすれば、それはグランドセイコーである。その歴史、ムーブメント、デザイン、仕上げ、どれをとっても、この金額ではとても真似できないものばかりだ。最近では、最新世代のスプリングドライブやハイビートムーブメントを搭載したEvolution 9コレクションの価格高騰が目立つ。ステンレス製時計の中には、多くの人が時計を購入する際に一線を画す100万円以上の大台に迫るものも出てきている。しかし、恐れる必要はない。グランドセイコーは約35万円前後の価格から素晴らしい時計を提供しており、機械式やスプリングドライブの時計の多くは約55万円から90万円の価格帯となっている。この価格帯でより良いものを見つけるのは (不可能ではないにしても) 難しいことだ。 

グランドセイコーはロレックスより優れているのか?

もうひとつよく出る質問は、「グランドセイコーはロレックスより優れているのか」というものだ。ロレックスの時計が正規販売店で手に入らなくなり、中古市場でも価格が上がり続けている今、この質問はより妥当なものとなっている。その結果、ジュネーブのブランド時計はますます手に入らなくなり、時計ファンたちは代替モデルを探すようになった。グランドセイコーはロレックスより優れているか、という問いに答えるなら、その質問を2つに分けたいと思う。  

まずは、時計が優れているかどうか、という問題がある。どちらのブランドも間違いなく素晴らしい時計を提供しているが、多くの時計ジャーナリストやコレクターは、グランドセイコーの時計がより優れていると考えている。デザインに関しては、ロレックスのカタログの方がより多くのアイコニックなタイムピースをそろえていることは否定できない。しかし、グランドセイコーの歴史について詳しく読んでみると、その多くが象徴的な存在となっている、素晴らしいデザインであることがすぐにわかるだろう。さらに、グランドセイコーのムーブメントは、より精巧に、より美しく仕上げられている。このように、両ブランドは、全体的な品質に関して言えば、一生使える最高の腕時計を製造している。 ロレックスはここ数年かなりレベルアップしており、品質の点では両ブランドとも甲乙つけがたい。最後に、グランドセイコーの時計の仕上げは、一般的に業界最高レベルであると考えられており、対応するロレックスよりも優れている。  

グランドセイコー: 新しいロレックス?
グランドセイコー: 新しいロレックス?

ここで、両ブランドの魅力に迫りたい。ロレックスは世界一の高級時計ブランドであり、着実にそのイメージ作りに取り組んできた。ロレックスを買うということは、真の贅沢を買うということなのだ。グランドセイコーは、その一方でどちらかというと精緻なタイムピースを作るブランドだ。ラグジュアリーな世界ではなく、世界最高の時計を作ることにすべてをかけているのである。この違いがあるからこそ、グランドセイコーは成功の証を求めている人ではなく、真の時計ファンのためのブランドなのだ。また、2017年にグランドセイコーが独立したことで、定評あるラグジュアリーブランドになるための大きな一歩も踏み出している。とはいっても、グランドセイコーを身につけることは、身につける人の成功ではなく、世界最高の時計を見事に作り上げた時計職人技が重要だということなのだ。もしそれを求めているのなら、グランドセイコーはあなたの腕にふさわしい時計になることだろう。 


記者紹介

Jorg Weppelink

こんにちは、ヨルグです。2016年からChrono24で記者として執筆しています。しかし、Chrono24との関係はそれ以前からあって、時計好きになったのは2003年頃からです。私の友人 …

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